似た意味を持つ「感じる」(読み方:かんじる)と「感ずる」(読み方:かんずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「感じる」と「感ずる」という言葉は、どちらも感覚器官の刺激を通して情報を得ることという共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
感じると感ずるの違い
感じると感ずるの意味の違い
感じると感ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「感じる」と「感ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「感じる」の方を一般的な読み方として使用しています。
感じると感ずるの使い方の違い
一つ目の感じるを使った分かりやすい例としては、「この制度に違和感を感じる」「夏が終わり秋を感じ始めた」「京都で感じる古の文化」「手のシワに年齢を感じる」「このパソコンの速度は遅いと感じている」などがあります。
二つ目の感ずるを使った分かりやすい例としては、「懐かしさを感ずるお店の雰囲気」「我が子に無限の可能性を感ずる」「色々と感ずるものがある」「人々の苦しみを見て痛みを感ずる」「魂で感ずるのだ」などがあります。
感じると感ずるの2つが存在する理由
なぜ、感「じる」と感「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「感じる」「感ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
感じる、感ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「感じる」「感ずる」という言葉の場合、「感」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「感令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、感じるの未然形の表現は「感じない」となります。変化しない先頭の「感」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「感じる」「感ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
感じると感ずるの使い分け方
「感」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「感じる」と「感ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「感」の場合、辞書に記載されているのは「感じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「感ずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
感じるの意味
感じるとは
感じるとは、感覚器官の刺激を通して情報を得ることを意味しています。
表現方法は「五感で感じる」「感じるものがある」「熱いと感じる」
「五感で感じる」「感じるものがある」「熱いと感じる」などが、感じるを使った一般的な言い回しです。
感じるの使い方
感じるを使った分かりやすい例としては、「お風呂の温度が熱いと感じる」「年をとると時間を感じるのが早い」「生きがいを感じる瞬間」「恥ずかしいと感じる場面」「紅茶の香りを感じて楽しむ」などがあります。
感じるの類語
感じるの類語・類義語としては、直感的に気づくことを意味する「勘付く」、事情を推察することを意味する「察する」、匂いを嗅ぎ分けることを意味する「嗅ぎ取る」、目に留まることを意味する「見受ける」などがあります。
感じるの感の字を使った別の言葉としては、もの悲しさを意味する「哀感」、不快な感じを意味する「悪感」、しっくりこない感じを意味する「違和感」、心地よい感じを意味する「快感」などがあります。
感ずるの意味
感ずるとは
感ずるとは、感じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。感ずるというのは「感ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
表現方法は「春を感ずる」「温もりの感ずる」「感ずるところがある」
「春を感ずる」「温もりの感ずる」「感ずるところがある」などが、感ずるを使った一般的な言い回しです。
感ずるの使い方
感ずるを使った分かりやすい例としては、「見るのではなく感ずること」「わびさびを感ずる風景が広がっている」「温もりの感ずる我が家が完成した」「努力している姿に魅力を感ずる」「今日は春を感ずる空模様である」などがあります。
感ずるは辞書に載っていない
意味としては、感じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「感じる」は載っていても、「感ずる」という言葉は載っていないことが多く、感ずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「感じる」「感ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「感ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「感ず」という言葉の感令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「感じろ」となりますが、古風な言い回しになると「感じよ」または「感ぜよ」となります。
この「感じよ」「感ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「感ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
感じるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、感覚器官の刺激を通して情報を得ることを表現で表したい時などが挙げられます。
感覚器官に代表される五感とは目・耳・舌・鼻・皮膚の5つの場所を通して生じる感覚を指しており、例文1の「友人が幸せに見える」は目、例文2の「気温が寒い」は皮膚を通じて得た情報を感じるという表現で表しています。
感ずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、感じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
上記の例文を見れば分かる通り、「感ずる」を「感じる」に置き換えても文章としての問題は全くありません。