似た意味を持つ「演じる」(読み方:えんじる)と「演ずる」(読み方:えんずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「演じる」と「演ずる」という言葉は、どちらもある印象を見る人に与えるよう行動することを意味するという共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
演じると演ずるの違い
演じると演ずるの意味の違い
演じると演ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「演じる」と「演ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「演じる」の方を一般的な読み方として使用しています。
演じると演ずるの使い方の違い
一つ目の演じるを使った分かりやすい例としては、「次回は主役を演じることになった」「良い子を演じて親の機嫌を伺う」「舞台で演じるように日々を生きる」などがあります。
二つ目の演ずるを使った分かりやすい例としては、「頑張って楽天家を演ずる」「個性的な役を演ずる機会が多い」「女性を演ずることとなった」などがあります。
演じると演ずるの2つが存在する理由
なぜ、演「じる」と演「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和演のないように変えることを意味します。
まさしく「演じる」「演ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
演じる、演ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「演じる」「演ずる」という言葉の場合、「演」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「命令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、演じるの未然形の表現は「演じない」となります。変化しない先頭の「演」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「演じる」「演ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
演じると演ずるの使い分け方
「演」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「演じる」と「演ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「演」の場合、辞書に記載されているのは「演じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「演ずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
演じるの意味
演じるとは
演じるとは、ある印象を見る人に与えるよう行動することを意味しています。
表現方法は「主役を演じる」「良い子を演じる」「役を演じる」
「主役を演じる」「良い子を演じる」「役を演じる」などが、演じるを使った一般的な言い回しです。
演じるの使い方
演じるを使った分かりやすい例としては、「好きな女優が演じる舞台に行く」「会社で与えられた役割を演じる」「役を演じる才能がない」などがあります。
演じるの類語
演じるの類語・類義語としては、ふざけることを意味する「戯れる」があります。
演じるの演の字を使った別の言葉としては、演じる技術を意味する「演技」、観客の前で演じることを意味する「演劇」、演じる人のことを意味する「演者」、演じる演出のことを意味する「演出」、大勢の前で意見を述べることを意味する「演説」などがあります。
演ずるの意味
演ずるとは
演ずるとは、演じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。演ずるというのは「演ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
表現方法は「役柄を演ずる」「役を演ずる」「コンクールで演ずる」
「役柄を演ずる」「役を演ずる」「コンクールで演ずる」などが、演ずるを使った一般的な言い回しです。
演ずるの使い方
演ずるを使った分かりやすい例としては、「様々な役柄を演ずる」「喜怒哀楽を演ずるのは難しい」「人以外の役を演ずる」などがあります。
演ずるは辞書に載っていない
意味としては、演じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「演じる」は載っていても、「演ずる」という言葉は載っていないことが多く、演ずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「演じる」「演ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「演ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「演ず」という言葉の命令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「演じろ」となりますが、古風な言い回しになると「演じよ」または「演ぜよ」となります。
この「演じよ」「演ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「演ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
演じるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある印象を見る人に与えるよう行動することを表現で表したい時などが挙げられます。
普段の自分とは違う自分を見せるという場面でこの「演じる」という言葉は使われるため、主には上記の例文のように舞台関係でよく使われる言葉になります。
日常生活やビジネスシーンで使うとすれば、例えば親に嫌われないように良い子を演じるであったり、取引先の方から自分のことをビジネスマンとしてしっかりとしている印象を与えるために演じるなどがあります。
演ずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、演じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
上記の例文を見れば分かる通り、「演ずる」を「演じる」に置き換えても文章としての問題は全くありません。