似た意味を持つ「モラトリアム」と「マージナルマン」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「モラトリアム」と「マージナルマン」という言葉は、「大人と子どもの境界に属する人」という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
モラトリアムとマージナルマンの違い
モラトリアムとマージナルマンの意味の違い
モラトリアムとマージナルマンの違いを分かりやすく言うと、モラトリアムは一時停止を表す時に使い、マージナルマンは二つの集団の境界を表す時に使うという違いです。
モラトリアムとマージナルマンの使い方の違い
一つ目のモラトリアムを使った分かりやすい例としては、「モラトリアム期間を抜け出せないと彼は悩んでいた」「モラトリアムに陥ったことは何度もある」「自分はモラトリアム人間だった自覚があるため今でも社会人なのが不思議なくらいだ」などがあります。
二つ目のマージナルマンを使った分かりやすい例としては、「マージナルマンの特徴に共通点はあるのだろうか」「彼女はきっとマージナルマンとして成長中なのだろう」「大学在学中のマージナルマンとして社会に思いをはせる」などがあります。
モラトリアムとマージナルマンの使い分け方
モラトリアムとマージナルマンはどちらも、大人と子どもの世界の境界に立つような人や、どちらにも属しきれない人たちを指す言葉ですが、本来の意味は少し異なります。
モラトリアムは、心理学や社会学的には青年が大人になるまでの期間を指しますが、金融に関して使われる場合は支払いのための猶予期間を指し、法令に関して使われる場合は一時停止や一時的禁止を表す言葉です。
一方のマージナルマンは、大人と子どもという二つの世界だけではなく、二つ以上の異なる社会や集団に同時に属しながらも、どちらにも完全には属していない人間を表します。
つまり、モラトリアムは大人になる前の一時的な停止を表すためネガティブなイメージが付与されることが多く、マージナルマンは子どもと大人の境界に属しつつも成長する時期としてポジティブなイメージが付与されることが多いという違いがあります。
また、どちらも人間の状態に対して以外にも使われますが、その場合にはネガティブなイメージやポジティブなイメージが付与されることはありません。
モラトリアムとマージナルマンの英語表記の違い
モラトリアムを英語にすると「moratorium」となり、例えば上記の「モラトリアム期間」を英語にすると「the moratorium period」となります。
一方、マージナルマンを英語にすると「marginal man」となり、例えば上記の「マージナルマンの特徴」を英語にすると「characteristic of the marginal man」となります。
モラトリアムの意味
モラトリアムとは
モラトリアムとは、青年が社会人になる前の準備期間を意味しています。
その他にも、借金などの支払い猶予や、製造や使用していたものの一時停止も意味します。
表現方法は「モラトリアム人間」「モラトリアム症候群」「モラトリアム期」
「モラトリアム人間」「モラトリアム症候群」「モラトリアム期」などが、モラトリアムを使った一般的な言い回しです。
モラトリアムの使い方
「モラトリアム症候群に悩まされることが多い」「モラトリアムを抜け出すことを急ぐ必要はないのかもしれない」「モラトリアム人間として自信が持てない」などの文中で使われているモラトリアムは、「青年にとっての準備期間」の意味で使われています。
一方、「モラトリアム破棄に関して言及された」「モラトリアム法という呼び方は正式名称ではない」「フーヴァーモラトリアムは世界恐慌で起きた危機のための措置である」などの文中で使われているモラトリアムは、「一時的な停止」の意味で使われています。
モラトリアムは英語で「moratorium」と表記され、停止や禁止、支払い猶予期間を意味する言葉で、日本語でも同じように使われています。
「フーヴァーモラトリアム」の意味
上記例文の「フーヴァーモラトリアム」とは、1931年にアメリカのフーヴァー大統領によるドイツのための債務支払い猶予措置を指す言葉です。世界恐慌で陥った財政危機をきっかけに支払いが1年猶予されました。
ただし、一般的に言われるモラトリアムは、青年が大人になるまでの準備期間を指すことが多い言葉です。そのため、ネガティブなイメージが付与されることが多くありますが、心理学的には必要な期間とされています。
モラトリアムの類語
モラトリアムの類語・類義語としては、親に依存している独身の人を意味する「パラサイト」、大人になることを拒み少年のままで居ようとする傾向を指す「ピーターパン・シンドローム」などがあります。
マージナルマンの意味
マージナルマンとは
マージナルマンとは、二つ以上の異なる集団に属すも完全には帰属していない人を意味しています。
マージナルマンの使い方
マージナルマンを使った分かりやすい例としては、「マージナルマンと自覚した時不安に押しつぶされそうになった」「マージナルマンである間にやりたいことが見つけられたらいいと思う」などがあります。
その他にも、「マージナルマンである彼は何を考えているのかわからない」「彼女の才能はマージナルマンゆえのものだろうか」「都会から田舎へと移住したマージナルマンだが生活を楽しんでいる」などがあります。
マージナルマンは英語で「marginal man」と表記される言葉で、境界人や限界人などと訳されています。ドイツの心理学者レヴィンが呼び始めた概念で、青年期である13歳ころから20歳ころの人を指しています。
上記のように、発達に関する用語としては、子どもと大人の世界の境界に立ってどちらにも属せずにいる人たちの中でも、それに対して動揺するような人たちに対して使われています。
また、社会学においては、異なる複数の文化や社会に属しているもののどちらにも完全に所属したとは言えない人々を指す言葉として使われています。移民や農村から上京してきた者などがこれに該当します。
集団などから浮いた存在と扱われる一方で、独自の創造性や価値観を持つ可能性がある人物であるともされ、芸術家や思想家などが多いとも言われています。
マージナルマンの類語
マージナルマンの類語・類義語としては、成功を収めるための基礎固めの時期を意味する「助走期間」、これから伸びる様子や今勢いがある様子を「発展途上」などがあります。
モラトリアムの例文
この言葉がよく使われる場面としては、青年が社会人になる前の準備期間を意味する時などが挙げられます。
その他にも、例文4や例文5のように実験や製造などの一時停止や、法令が施行されるまでの猶予期間を指す言葉としても使われます。
マージナルマンの例文
この言葉がよく使われる場面としては、二つ以上の異なる集団に属すも完全には帰属していない人を意味する時などが挙げられます。
例文1から例文3ように青年期の若者を指すのはもちろん、例文4と5のように、別の文化圏に身を置いていて移住してきた人たちを表す言葉としても使われています。
モラトリアムとマージナルマンは、どちらも「大人と子どもの境界に属する人」を表します。どちらを使うか迷った場合は、一時停止を表す場合は「モラトリアム」を、二つの集団の境界を表す場合は「マージナルマン」を使うと覚えておけば間違いありません。