似た意味を持つ「共鳴」(読み方:きょうめい)と「共感」(読み方:きょうかん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「共鳴」と「共感」という言葉は、どちらも「他人の考えや気持ちを共有すること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
共鳴と共感の違い
共鳴と共感の意味の違い
共鳴と共感の違いを分かりやすく言うと、共鳴とは他人の考えをよいものとして共有すること、共感とは良し悪しに関わらず他人の考えを共有することという違いです。
共鳴と共感の使い方の違い
一つ目の共鳴を使った分かりやすい例としては、「ヘルムホルツ共鳴器の原理をご存知ですか」「すべての原子は固有の共鳴周波数を持ちます」「ティーンエイジャーと共鳴する音楽を作りたい」「デモ隊に共鳴する人々が集まった」「創設の趣旨に共鳴し入会しました」などがあります。
二つ目の共感を使った分かりやすい例としては、「聞き手の共感を得るためにユーモアを交える」「彼の話に共感するところがあった」「戦争のニュースは共感疲労の原因になります」「共感力は対人関係をよくします」などがあります。
共鳴と共感の使い分け方
共鳴と共感という言葉は、どちらも他人の考えや気持ちを感覚的に共有することを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
共鳴とは、振動体が外部振動の刺激を受けると、振幅が増大する現象という物理学的な意味を持っています。また、「デモ隊に共鳴する」のように比喩的に使用され、他人の考えや感情をよいものと感じて、同じ考えを持つようになることを意味します。
共感とは、他人の考えや感情をあたかも自分自身のこととして考え感じ、それと同調したり共有したりすることを意味します。上記の例文にある「共感する」とは、他人の意見や感情などにそのとおりだと感じることであり、「共感力」とは、他人の考えや喜怒哀楽の感情に寄り添うスキルを表します。
つまり、共鳴はよいものや素晴らしいものに対して持つ共有の感覚であり、共感は良し悪しや喜怒哀楽に関わらず他人の感情を共有する感覚です。二つの言葉を比べると、共鳴よりも共感の方が、幅広い意味で用いられる言葉だと言えるでしょう。
共鳴と共感の英語表記の違い
共鳴を英語にすると「resonance」「identification」となり、例えば上記の「共鳴器」を英語にすると「resonator」となります。一方、共感を英語にすると「sympathy」「response」となり、例えば上記の「共感を得る」を英語にすると「get sympathy」となります。
共鳴の意味
共鳴とは
共鳴とは、振動体が、その固有振動数に等しい外部振動の刺激を受けると、振幅が増大する現象を意味しています。
その他にも、「他人の考えや行動などに心から同感すること」の意味も持っています。
共鳴の読み方
共鳴の読み方は、音読みで「きょうめい」です。「ともなり」と訓読みすることもできますが、その場合は「共鳴り」と送り仮名を伴います。
表現方法は「共鳴する」「共鳴し合う」「共鳴させる」
「共鳴する」「共鳴し合う」「共鳴させる」などが、共鳴を使った一般的な言い回しです。
共鳴の使い方
「共鳴腔は声を共鳴させて響かせるスピーカーです」「英語の母音は共鳴する位置で区別する」「共鳴構造の書き方を教えてください」などの文中で使われている共鳴は、「振動体が外部振動の刺激を受けると振幅が増大する現象」の意味で使われています。
一方、「彼は共産主義に深く共鳴していった」「両者の思想がある種の共鳴を見せている」「自己と他者が共鳴し引き出される力があります」「歌詞に共鳴しなければきちんと歌えないだろう」などの文中で使われている共鳴は、「他人の考えや行動などに心から同感すること」の意味で使われています。
共鳴とは、上記の例文にあるように複数の意味を持つ言葉ですが、一般的には「他人の考えや行動などに心から同感すること」の意味で使用されています。もともと物理学的な意味の言葉でしたが、比喩的に、ある事実や考えなどに同感すること、すばらしいと思うことの意味で使われるようになりました。
「共鳴構造」の意味
上記の例文にある「共鳴構造」とは、有機化学反応で用いる記述方法です。一つの構造式として書き表せない状態を、複数の構造を使って表すものであり、代表例として硝酸イオンやベンゼン環があります。
共鳴の対義語
共鳴の対義語・反対語としては、外部から加わる力に対してはむかうことを意味する「抵抗」、権威や権力などに従わないことを意味する「反抗」などがあります。
共鳴の類語
共鳴の類語・類義語としては、電気振動の共鳴を意味する「共振」、他人の意見や主張などに賛同することを意味する「同調」、物事を行う調子や気分がぴったり合うことを意味する「息が合う」、無言のうちに心が通じ合うことを意味する「以心伝心」などがあります。
共感の意味
共感とは
共感とは、他人の意見や感情などにそのとおりだと感じることを意味しています。
表現方法は「共感を覚える」「共感を得る」「共感する」
「共感を覚える」「共感を得る」「共感する」などが、共感を使った一般的な言い回しです。
共感の使い方
共感を使った分かりやすい例としては、「彼女の生き方に共感する」「経営理念とビジネス戦略に共感します」「どんな人にも共感できるわけではありません」「共感を生む情報発信を目指しています」「患者への共感的理解度を高める」などがあります。
その他にも、「私は共感性羞恥心が強い方です」「生まれつき共感覚が強いようです」「高度な共感性はストレスを招きます」「介護士は共感疲労を蓄積しやすい」「人の気持ちに敏感であることは共感力が高い人の特徴です」などがあります。
共感とは、他人と同じ感情を持つことを意味します。他人が喜ぶのをみるとともに喜び、他人が悲しむのをみるとともに悲しむといった心の働きのことです。他人と自分とが同じ感覚を共有することであり、他人が悲しんでいると理解できても自分は悲しくなれないという場合は、共感とは言えません。
「共感性羞恥心」の意味
上記の例文にある「共感性羞恥心」(読み方:きょうかんせいしゅうちしん)とは、他人が恥をかいたり笑われたりしていると、まるで自分の事かのように羞恥心を覚えることです。繊細な人や、人目を気にする人ほど、共感性羞恥心を抱きやすい傾向にあります。
「共感覚」の意味
共感を用いた日本語には「共感覚」があります。共感覚とは、ある感覚刺激によって,ほかの感覚を得る現象を意味します。例えば、文字を見ると色を感じたり、音を聞くと色が見えるなどです。「シナスタジア」とも呼ばれています。
共感の対義語
共感の対義語・反対語としては、相手の存在や言動に対して反抗する気持ちを意味する「反感」、敵対しようとする心を意味する「敵意」などがあります。
共感の類語
共感の類語・類義語としては、同じように感じることやその意見や考えに賛成であることを意味する「同感」、互いの意思が一致することを意味する「合意」、互いの気持ちがぴったりと合うことを意味する「意気投合」、同情や共感を意味する「シンパシー」などがあります。
共鳴の例文
この言葉がよく使われる場面としては、振動体がその固有振動数に近い周期性をもった外力を受けたとき振動を始める現象、ある事実や考えなどに同感することを表現したい時などが挙げられます。
例文2の「共鳴腔」とは、「きょうめいくう」と読み、体の中で声が反響する空洞部分のことです。声帯が振動を起こすことで声は作られ、共鳴腔で共鳴することで音が大きくなります。
共感の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人の考えや感情について自分もその通りだと感じることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある共感と同情の違いは、共感は相手の考えや主張などが同じだと感じることですが、同情は相手に対して哀れみの感情を持つことです。
共鳴と共感という言葉は、どちらも「他人の考えや気持ちを共有すること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、他人の考えや感情をよいものとして共有することを表現したい時は「共鳴」を、良し悪しに関わらず他人の考えを共有することを表現したい時は「共感」を使うようにしましょう。