似た意味を持つ「事例」(読み方:じれい)と「事案」(読み方:じあん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「事例」と「事案」という言葉は、どちらも「実際にあった事柄」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
事例と事案の違い
事例と事案の意味の違い
事例と事案の違いを分かりやすく言うと、事例とは前例となる事柄を表し、事案とは問題となっている事柄を表すという違いです。
事例と事案の使い方の違い
一つ目の事例を使った分かりやすい例としては、「ワークシート形式で事例研究のステップを示す」「事例検討会の進め方を工夫する」「疑わしい取引の参考事例をご紹介します」「インターネットのトラブル事例集を掲載しています」などがあります。
二つ目の事案を使った分かりやすい例としては、「公園でつきまとい事案が発生しています」「不審者による声かけ事案が数多く報告されている」「個人情報漏えいの事案が発生しました」「不正事案が判明したことは極めて遺憾です」などがあります。
事例と事案の使い分け方
事例と事案という言葉は、どちらもビジネスシーンで用いられ、実際にあった出来事や事柄を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
事例とは、実際にあった事柄や、前例となる事実を意味します。具体例として引き合いに出す過去にあった例であり、「参考事例」とは何かの手がかりとなるうる実際にあった出来事のことです。
事案とは、問題となっている事柄や、話題となっている事件を意味します。政治や法律に関する事柄でよく使用されている言葉です。基本的には現在問題となっている事柄ですが、過去や未来の事柄に対しても使うことができます。
つまり、事例は前例となる事柄を表しますが、事案は問題となっている事柄を意味します。また、事例は過去の事柄のみを指しますが、事案は過去だけでなく現在や未来の事柄も表現します。これらが、二つの言葉の明確な違いになります。
事例と事案の英語表記の違い
事例も事案も英語にすると「case」となり、例えば上記の「事例研究」を英語にすると「case study」となります。
事例の意味
事例とは
事例とは、前例となる事実を意味しています。
その他にも、「具体的な実例」の意味も持っています。
表現方法は「事例を挙げる」「事例をもとに」「事例を交えて」
「事例を挙げる」「事例をもとに」「事例を交えて」などが、事例を使った一般的な言い回しです。
事例の使い方
「事例をあげて説明する」「確認したところ事例は認められません」「事例や前例を集めて考える」「上手な事例検討の進め方を教えてください」「事例に照らしてみる」などの文中で使われている事例は、「前例となる事実」の意味で使われています。
一方、「サービスの導入事例を紹介します」「事例研究は方法論として発展しています」「効率的な時間の使い方を失敗事例を交えて説明します」「最新事例を英語で紹介します」などの文中で使われている事例は、「具体的な実例」の意味で使われています。
事例とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているので文脈により意味を捉える必要があります。事例の「事」は物事の様子や身のまわりに起こる事柄を表し、「例」は過去または現在の事実で典拠とするに足る事柄を表します。
「事例研究」の意味
事例を用いた日本語には「事例研究」があります。事例研究とは、「ケーススタディ」とも言い、具体的な例を研究することです。ある具体的な事例を詳しく分析したり、検討することによって、その背後にある原理や法則性などを究明し、対処の方法などを見出そうとするものです。
事例の対義語
事例の対義語・反対語としては、事実ではないことを事実らしくつくり上げることを意味する「虚構」、作りごとや虚構を意味する「フィクション」、事実に基づかず想像によってつくりあげることを意味する「架空」などがあります。
事例の類語
事例の類語・類義語としては、個々の事例や場合を意味する「ケース」、似かよった例や同じ種類の例を意味する「類例」、実際にあった事例を意味する「実例」、社会や身のまわりに起こる事柄を意味する「出来事」などがあります。
事案の意味
事案とは
事案とは、問題になっている事柄を意味しています。
表現方法は「事案が発生する」「事案が起こる」「事案を異にする」
「事案が発生する」「事案が起こる」「事案を異にする」などが、事案を使った一般的な言い回しです。
事案の使い方
事案を使った分かりやすい例としては、「投資詐欺のような事案が発生しています」「いじめ事案発生時の対応を検討する」「突発的な事案や事象に対応できるよう訓練する」「声かけ事案の発生状況をお知らせします」などがあります。
その他にも、「不審者事案が発生しました」「警察署管内で発生した事案の概要を掲載しています」「ハラスメント事案は解決すべき案件だ」「不審者扱いの突拍子もない事案が急増中」「陰キャなのに告られるなんて事案やな」などがあります。
事案の「案」は、考えることや調べることを表します。物事そのものを表す「事」と結び付き、事案とは、問題になっている事柄や、問題として着目する出来事を意味します。日常会話よりもビジネスシーンで用いられている言葉ですが、近年ではネットスラングとしても使用されています。
ネットスラングとしての事案
ネットスラングとしての「事案」は、不審者と勘違いされそうな言動に対して使用されており、不審者扱いされたことを自虐的に言う場合に、「事案」と表現することがあります。また、インターネット上には、驚いた出来事や注目すべき出来事などを「事案」として紹介する例もあります。
事案の対義語
事案の対義語・反対語としては、物事を解決に導く案や施策を意味する「解決策」、ある事件や事案がすっかり決着することを意味する「一件落着」などがあります。
事案の類語
事案の類語・類義語としては、問題となっている事柄や審議しなければならない事柄を意味する「案件」、解決しなければならない問題や果たすべき仕事を意味する「課題」、問題となる出来事を意味する「事件」などがあります。
事例の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前例となる事実、具体的な実例を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「活用事例」とは、あるサービスや技術などを効果的に利用している具体的な実例を意味します。例文5の「事例集」とは、具体的な実例を集めてひとまとまりにしたものです。
事案の例文
この言葉がよく使われる場面としては、当面の問題になっている事柄、問題となるべき事柄を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある案件と事案の違いは、案件は問題になっていて解決が求められる事柄を指し、事案は問題になっている事柄を表す点にあります。
事例と事案という言葉は、どちらも「実際にあった事柄」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、前例となる事柄を表現したい時は「事例」を、問題になっている事柄を表現したい時は「事案」を使うようにしましょう。