似た意味を持つ「浸漬」(読み方:しんし)と「浸水」(読み方:しんすい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「浸漬」と「浸水」という言葉は、どちらも「液体に浸すこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
浸漬と浸水の違い
浸漬と浸水の意味の違い
浸漬と浸水の違いを分かりやすく言うと、浸漬とは水だけでない液体全般に浸すことを表し、浸水とは水に浸すことのみを表すという違いです。
浸漬と浸水の使い方の違い
一つ目の浸漬を使った分かりやすい例としては、「中釜バーナー浸漬管交換工事を行う」「米は水に浸漬してから炊きます」「ゴムの浸漬試験を実施します」「酵素配合の浸漬用洗浄剤です」「新しい生活様式が国民に浸漬する」などがあります。
二つ目の浸水を使った分かりやすい例としては、「浸水家屋の感染症対策についてご説明します」「台風で車が浸水や冠水することがあります」「浸水想定区域図作成マニュアルを参考にしてください」などがあります。
浸漬と浸水の使い分け方
浸漬と浸水という言葉は、「お米を浸漬させる」「お米を浸水させる」などと表現し、どちらも物を液体に浸すことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
浸漬とは、液体に浸すことを意味します。「浸漬液」とは、浸すための液体であり、梅酒を作る時の浸漬液にはホワイトリカーやブランデーなどがあります。また、浸漬には「思想や噂などが次第に広まること」の意味もあり、「新しい宗教が人々に浸漬する」のように使います。
浸水とは、水に浸すことや、水が入り込むことを意味します。主として、洪水や集中豪雨などで、建物などが水に浸かること表す言葉です。洪水などのために水に浸かった家屋は、「浸水家屋」と表現します。
つまり、浸漬と浸水の違いは、何に浸かっているかです。浸漬は水だけではなく液体全般に浸かることを表しますが、浸水は水に浸ることのみを表現します。
浸漬と浸水の英語表記の違い
浸漬を英語にすると「dipping」「soaking」となり、例えば上記の「浸漬管」を英語にすると「dipping tube」となります。
一方、浸水を英語にすると「inundation」「flood」となり、例えば上記の「浸水家屋」を英語にすると「flooded house」となります。
浸漬の意味
浸漬とは
浸漬とは、液体に浸すことを意味しています。
その他にも、「思想や流言などが次第に浸透していくこと」の意味も持っています。
浸漬の読み方
浸漬の読み方は「しんし」ですが、慣用読みとして「しんせき」とも読まれています。同様に、浸漬液の読み方は「しんしえき」「しんせきえき」、浸漬式は「しんししき」「しんせきしき」とそれぞれ二通りあります。
表現方法は「浸漬する」「浸漬させる」「浸漬される」
「浸漬する」「浸漬させる」「浸漬される」などが、浸漬を使った一般的な言い回しです。
浸漬の使い方
「コーヒーは透過式と浸漬式のどちらが好みですか」「評判の良い浸漬式ドリッパーを買いました」「浸漬酒のなかでは梅酒が好きです」「浸漬酒の読み方に迷ってしまう」「この器具は浸漬法で保管してください」などの文中で使われている浸漬は、「液体に浸すこと」の意味で使われています。
一方、「まだ男女平等が浸漬していない時代でした」「民主主義の精神は日本に浸漬しました」「サステナビリティの社内浸漬を進める」などの文中で使われている浸漬は、「思想などが次第に浸透していくこと」の意味で使われています。
浸漬とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、おもに「液体に浸すこと」の意味で使用されています。浸漬の「浸」は水に漬けることや水がしみ込むように広がること、「漬」は液体に浸すことを表す漢字です。
「浸漬式ドリッパー」の意味
上記例文の「浸漬式ドリッパー」とは、コーヒー粉とお湯を溜めておいて時間が経ったらフィルターを通して抽出することができるドリッパーのことです。対する「透過式」は、コーヒー粉の層にお湯を透過させながら成分を取り出す方法です。
浸漬の対義語
浸漬の対義語・反対語としては、濡れたものや湿ったものの水分を取り去ることを意味する「乾かす」などがあります。
浸漬の類語
浸漬の類語・類義語としては、濡れた状態にするすることを意味する「濡らす」、水がしみとおることや風潮などがしだいに行き渡ることを意味する「浸透」、すみずみまで行き届くことを意味する「徹底」などがあります。
浸水の意味
浸水とは
浸水とは、水に浸かること、水が入り込むことを意味しています。
表現方法は「浸水する」「浸水を防ぐ」「浸水による被害」
「浸水する」「浸水を防ぐ」「浸水による被害」などが、浸水を使った一般的な言い回しです。
浸水の使い方
浸水を使った分かりやすい例としては、「大雨で自宅が浸水被害を受けてしまった」「洪水浸水想定区域図を掲載しています」「あなたのお家の浸水対策は万全ですか」「浸水ナビは国土交通省が公開しているシステムです」などがあります。
その他にも、「家が浸水する夢を見ました」「英語教室が床上浸水してしまった」「床下浸水では火災保険から保険金は出ない」「私の住む町が浸水被害防止区域に指定された」「住民のみなさまに浸水ハザードマップを配布しています」などがあります。
浸水とは、何かが水に浸かることを表し、物が水に浸ることや、水が物に入り込むことを意味します。また、洪水などのために建物が水に浸かっていることも「浸水」と表現します。
「床上浸水」の意味
「床上浸水」とは、洪水や津波などにより、建物の床上にまで水が入り込むことです。一般的な家屋では、浸水深が50センチメートル以上になると床上浸水の恐れがあります。なお、建物の床下に水が入り込むことは、「床下浸水」と言います。
浸水の対義語
浸水の対義語・反対語としては、水分や湿気を取り除くために日光などにあてることを意味する「干す」などがあります。
浸水の類語
浸水の類語・類義語としては、すっかり水に浸かることを意味する「水浸し」、洪水などで田畑や作物が水をかぶることを意味する「冠水」、地上にあった物が水中に没してしまうことを意味する「水没」などがあります。
浸漬の例文
この言葉がよく使われる場面としては、液体につけ浸すこと、教義や思想などが次第に浸透していくことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある浸漬は、液体につけ浸すことの意味で用いられています。例文5の浸漬は、教義や思想などが次第に浸透していくことを表しています。
浸水の例文
この言葉がよく使われる場面としては、水が入り込むこと、ものが水に浸かることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「浸水実績図」とは、過去の水害における浸水の実績を示した図です。浸水シミュレーションによって作成される洪水ハザードマップとは性質が異なるものです。
浸漬と浸水という言葉は、どちらも「物が液体に浸ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、液体に浸ることや思想などが浸透することを表現したい時は「浸漬」を、水に浸ることを表現したい時は「浸水」を使うようにしましょう。