似た意味を持つ「虚像」(読み方:きょぞう)と「偶像」(読み方:ぐうぞう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「虚像」と「偶像」という言葉は、どちらも「つくりだしたもの」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
虚像と偶像の違い
虚像と偶像の意味の違い
虚像と偶像の違いを分かりやすく言うと、虚像とは本物とは異なるイメージを表し、偶像とは本物に似せてつくられたものを表すという違いです。
虚像と偶像の使い方の違い
一つ目の虚像を使った分かりやすい例としては、「神は人々が創り出した虚像にすぎない」「SNSは虚像だらけの世界です」「平面鏡による虚像の作図が上手くできない」「アイドルという虚像から抜け出したい」などがあります。
二つ目の偶像を使った分かりやすい例としては、「イスラム教は偶像を崇拝することを禁止しています」「偶像崇拝がいけない理由を教えてください」「自然の事物を偶像化する」「アイドルという偶像のイメージを壊さないで欲しい」などがあります。
虚像と偶像の使い分け方
虚像と偶像という言葉は、どちらも人間がつくりだしたものを表し、「アイドルという虚像」「アイドルという偶像」などと表現しますが、意味や使い方には違いがあります。
虚像とは、実際とは異なる作られたイメージを意味します。「アイドルという虚像」とは、アイドルという人々が作り上げた理想のイメージを表し、実際の人物とはかけ離れた人物像である可能性があります。
偶像とは、石や木などでつくられた像、あるいは、神仏をかたどった信仰の対象となる像を意味します。この意味が転じて、比喩的用法で、あたかも神や仏のように崇拝の対象となっているものを表し、「アイドルという偶像」はこの意味で使用されています。
つまり、虚像とは実際とは異なるイメージであり、偶像とは実際に似せてつくられたものを意味します。二つの言葉はとてもよく似ていますが、相反する意味を持つ言葉なのです。
虚像と偶像の英語表記の違い
虚像を英語にすると「virtual image」「false image」「pretence」となり、例えば上記の「虚像にすぎない」を英語にすると「only a false prosperity」となります。
一方、偶像を英語にすると「idol」「icon」「joss」となり、例えば上記の「偶像を崇拝する」を英語にすると「worship an idol」となります。
虚像の意味
虚像とは
虚像とは、物体から出た光線が鏡やレンズなどによって発散させられるとき、その発散光線によって実際に物体があるように結ばれる像を意味しています。
その他にも、「実際とは異なる、作られたイメージ」の意味も持っています。
虚像の使い方
「凸レンズで出来る虚像の実験を行います」「実像と虚像についてご説明いたします」「一直線でないと虚像は見えない」などの文中で使われている虚像は、「発散光線によって実際に物体があるように結ばれる像」の意味で使われています。
一方、「アイドルは世間が作り出した虚像である」「アメリカの実像と虚像を解き明かす」「商業主義が作り上げた虚像にすぎない」などの文中で使われている虚像は、「実際とは異なる、作られたイメージ」の意味で使われています。
虚像とは、凸レンズや凹レンズを屈折しながら通過する光線や、鏡で反射する光線によって見える像を意味し、「実像」に対して使用される言葉です。凹レンズ、平面鏡、凸面鏡のつくる像はみな「虚像」です。
虚像という言葉は、比喩的な使い方をされており、ある事物の実態とは異なるイメージも意味します。特に人物像など、世評や伝説などによって作り上げられた評価認識を言います。
虚像の対義語
虚像の対義語・反対語としては、反射または屈折した光が実際に交わって作る像を意味する「実像」、隠されているそのもの本来の姿を意味する「正体」などがあります。
虚像の類語
虚像の類語・類義語としては、光線の屈折または反射によって作られた像を意味する「映像」、テレビやディスプレーなどにうつる像を意味する「画像」、存在しているかのように心の中に描き出されるものを意味する「幻影」などがあります。
偶像の意味
偶像とは
偶像とは、木・石・土・金属などで作った像を意味しています。
その他にも、「神仏をかたどった、信仰の対象となる像」「あこがれや崇拝の対象となるもの」の意味も持っています。
表現方法は「アイドルは偶像なんだから」「手製の偶像」
「アイドルは偶像なんだから」「手製の偶像」などが、偶像を使った一般的な言い回しです。
偶像の使い方
「石で作られた偶像を陳列する」「美術的価値のある偶像が発掘された」「あなたは偶像に宿る魂を信じますか」などの文中で使われている偶像は、「木・石・土・金属などで作った像」の意味で使われています。
一方、「仏教も偶像崇拝を否定していた」「なぜ偶像崇拝は禁止されているのか」の文中で使われている偶像は「信仰の対象となる像」の意味で、「アイドルは大衆の偶像です」「推しは崇拝するべき偶像です」の文中で使われている偶像は「あこがれや崇拝の対象となるもの」の意味で使われています。
偶像の「偶」は訓読みで「ひとがた」と読み、人の形に似せたものを表し、「像」は訓読みで「かたち」と読み、実物をかたどって作ったものを表す漢字です。偶像とは、石や土などで作った像や信仰の対象とする像を意味します。転じて、崇拝の対象とされるものも意味する言葉です。
「偶像崇拝」の意味
偶像を用いた日本語には「偶像崇拝」があります。偶像崇拝とは、絵画や彫刻あるいは自然物などの可視的対象物を、信仰の対象として崇拝することを意味します。「偶像礼拝」とも言い、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などでは厳しく否定されています。
偶像の類語
偶像の類語・類義語としては、対象物をあるがままに写して描き出すことを意味する「写像」、神々の姿を彫刻や絵画などに表したものを意味する「神像」、礼拝の対象として製作された仏の彫像や画像を意味する「仏像」などがあります。
虚像の例文
この言葉がよく使われる場面としては、実際とは異なる場所に存在するかのように見える物体の像、あるものの実態とは異なるイメージを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある虚像は、実際とは異なる場所に存在するかのように見える物体の像の意味で用いられています。例文4や例文5の虚像は、実態とは異なるイメージの意味で使用されています。
偶像の例文
この言葉がよく使われる場面としては、木や金属などで作った像、神仏にかたどり信仰の対象とする像、あたかも神や仏のように崇拝の対象となっているものを表現したい時などが挙げられます。
例文3の「手製の偶像」とは、中国の小説家である魯迅の代表作「故郷」に出てくるフレーズです。自分が作り出した理想を「手製の偶像」と表現しました。
虚像と偶像という言葉は、どちらも「つくりだしたもの」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、本物とは異なるイメージを表現したい時は「虚像」を、本物に似せてつくられたものを表現したい時は「偶像」を使うようにしましょう。