似た意味を持つ「治外法権」(読み方:ちがいほうけん)と「無法地帯」(読み方:むほうちたい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「治外法権」と「無法地帯」という言葉は、どちらも「法が及ばないこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
治外法権と無法地帯の違い
治外法権と無法地帯の意味の違い
治外法権と無法地帯の違いを分かりやすく言うと、治外法権とは外国人が法律に拘束されない特権を表し、無法地帯とは法律が及ばない無秩序なエリアを表すという違いです。
治外法権と無法地帯の使い方の違い
一つ目の治外法権を使った分かりやすい例としては、「交渉で治外法権の撤廃に成功する」「一時的にイギリスの治外法権区域となりました」「外国人居留地における治外法権が廃止されました」などがあります。
二つ目の無法地帯を使った分かりやすい例としては、「パーティー会場は無法地帯と化した」「成田空港は白タク無法地帯になっている」「無法地帯と言われる刑務所の実情を探る」「私の職場はセクハラやパワハラが横行する無法地帯だ」などがあります。
治外法権と無法地帯の使い分け方
治外法権と無法地帯という言葉は、どちらも法律の影響が及ばないことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
治外法権とは、国際法上の権利で、在留外国人がその居住する国家の法律に拘束されない特権を意味します。ふつう外国人は滞在国の法律が適用されますが、外国元首・外交官・外交使節など特定の人には例外的に治外法権が認められています。
無法地帯とは、国の法律や行政の影響が及ばない特定の場所を意味します。転じて、個人や組織がルールや周囲との調和を無視して、やりたい放題に振る舞っている様子を意味する比喩表現としても使用されています。
つまり、治外法権とは外国人が法律に拘束されない特権であり、無法地帯とは法律が及ばない場所を意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
治外法権と無法地帯の英語表記の違い
治外法権を英語にすると「extraterritoriality」「extraterritorial rights」となり、例えば上記の「治外法権の撤廃」を英語にすると「abolishment of extraterritoriality」となります。
一方、無法地帯を英語にすると「a lawless area」「a lawless district」となり、例えば上記の「無法地帯と化す」を英語にすると「turn into the lawless area」となります。
治外法権の意味
治外法権とは
治外法権とは、国際法上、特定の外国人が現に滞在する国の法律、特に裁判権に服さない権利を意味しています。
治外法権の読み方
治外法権の読み方は「ちがいほうけん」です。誤って「じがいほうけん」などと読まないようにしましょう。
治外法権の使い方
治外法権を使った分かりやすい例としては、「現在の日本に治外法権はありますか」「治外法権の使い方に抗議する」「領事裁判権と治外法権とは密接な関係にあります」「治外法権を撤廃した人物は誰ですか」などがあります。
その他にも、「アメリカの治外法権を認める」「治外法権の適用を求めています」「陸奥宗光は治外法権の撤廃交渉に成功しました」「ここは治外法権区域ではありません」「大使館の敷地内は治外法権区域ですか」などがあります。
治外法権とは、外交特権の一つで、特定の外国人だけ在留地の法に服さない権利を意味します。国際法では、外国人は現に滞在する国家の管轄権に服することが原則ですが、例外的に滞在国の管轄権を免れる権利を「治外法権」と言います。
治外法権が問題となった事件
治外法権が問題となった日本の歴史上の事件には、「ノルマントン号事件」があります。明治19年、英国船ノルマントン号が勝浦沖で沈没した際、イギリス人乗組員はボートで脱出した一方、日本人船客23名は水死しました。しかし、治外法権下のイギリス領事裁判は船長を無罪としました。
治外法権の対義語
治外法権の対義語・反対語としては、内外国人を問わずその国の法律の適用を受けるべきであるとする主義を意味する「属地主義」などがあります。
治外法権の類語
治外法権の類語・類義語としては、領事や専門の裁判官が駐在国で自国民の裁判を行なった制度を意味する「領事裁判」、外交官などに与えられる特権や免除を意味する「外交特権」、外交使節などがその駐在する国で侵してはならないと認められている特権を意味する「不可侵権」などがあります。
無法地帯の意味
無法地帯とは
無法地帯とは、法律が機能していない一定の地域や場所を意味しています。
無法地帯の読み方
無法地帯の読み方は「むほうちたい」です。誤って「ぶほうちたい」などと読まないようにしましょう。
無法地帯の使い方
無法地帯を使った分かりやすい例としては、「無法地帯の無人島でサバイバル生活を始めます」「日本国内に無法地帯はありますか」「英語の授業は無法地帯となっている」「オタクの部屋は好きであふれた無法地帯である」などがあります。
その他にも、「インターネットの世界は無法地帯である」「漫画喫茶は無法地帯ではありません」「このラジオ番組はおしゃべりの無法地帯です」「職場が無法地帯とならないようルールを作りました」などがあります。
無法地帯の「無法」は、法の無いことを意味し、法律があっても守られないことや道理に外れていることを表します。「地帯」は、ある特徴によって区別される一定のエリアを表します。無法地帯とは、法律や行政の影響が及ばない地域や場所を意味する言葉です。
無法地帯という言葉は、比喩的に、無秩序でやりたい放題な様子を表す際に用いられることがあります。「オタクの部屋は無法地帯」のような使い方で自由気ままな状態や、「無法地帯と言われる刑務所」のような使い方で秩序がない混沌とした内部事情を表現します。
無法地帯の対義語
無法地帯の対義語・反対語としては、制定された法律に基づいて国政が行われることを原則とする国家を意味する「法治国家」、警察権力をもって監視や統制をする国家体制を意味する「警察国家」などがあります。
無法地帯の類語
無法地帯の類語・類義語としては、規律がないことを意味する「無規律」、秩序がないことを意味する「無秩序」、すべてが混沌としている状態を意味する「カオス」、無政府あるいは無秩序な状態であることを意味する「アナーキー」などがあります。
治外法権の例文
この言葉がよく使われる場面としては、外国人は滞在国の領土主権に服するが,例外的にそれから免れることが認められる特権を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、治外法権の慣用的な言い回しには「治外法権区域」「治外法権が適用される」「治外法権の撤廃」「治外法権を認める」などがあります。「治外法権区域」とは、治外法権が適用されるエリアを意味します。
無法地帯の例文
この言葉がよく使われる場面としては、法が無いようなエリア、荒れ果てた状態を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、無法地帯という言葉は比喩的に用いられ、法律が機能せずに無秩序状態となっている場所を表すことが多くあります。
治外法権と無法地帯という言葉は、どちらも「法が及ばないこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、外国人が居住する国家の法律に拘束されないことを表現したい時は「治外法権」を、法律が機能しないエリアを表現したい時は「無法地帯」を使うようにしましょう。