似た意味を持つ「欠如」(読み方:けつじょ)と「欠落」(読み方:けつらく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「欠如」と「欠落」という言葉は、どちらも「必要な部分が欠け落ちていること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
欠如と欠落の違い
欠如と欠落の意味の違い
欠如と欠落の違いを分かりやすく言うと、欠如とは当然あるべきものが欠けていることを表し、欠落とは本来あるものが欠けていることを表すという違いです。
欠如と欠落の使い方の違い
一つ目の欠如を使った分かりやすい例としては、「若者たちの常識の欠如が問題視されています」「英語に対する学習意欲が欠如している」「注意欠如による解雇は無効と判断されました」「先天的に欠如している歯があります」などがあります。
二つ目の欠落を使った分かりやすい例としては、「思いやりが人として欠落している」「酒に酔うと自制心は欠落します」「欠落した壁のタイルを補修する」「お取引明細の一部が欠落する不具合が発生しています」などがあります。
欠如と欠落の使い分け方
欠如と欠落という言葉は、どちらも必要な物事の一部分が欠け落ちていることを表し、ほぼ同じように使える言葉ですが、若干のニュアンスの違いがあります。
欠如とは、必要な物事が欠けていることを意味し、当然あるべきものがない様子を表します。「常識の欠如」「注意欠如」のような使い方で、多くは精神に関することに対して用いられる言葉ですが、「先天性欠如歯」のように物質的な物事に使用されることもあります。
欠落とは、一部分が欠け落ちることを意味し、精神的なことにも物質的なことにも使用される言葉です。欠落はもともとあったものが抜け落ちるというニュアンスがあり、「記憶の欠落」などの使い方をしますが、欠如にはこのニュアンスがないため「記憶の欠如」とは表現しません。
つまり、欠如と当然あるべき物事が欠けていることを意味し、欠落とは本来はある物事が欠けていることを表す言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
欠如と欠落の英語表記の違い
欠如も欠落も英語にすると「lack」「absence」となり、例えば上記の「常識の欠如」を英語にすると「a lack of common sense」となります。
欠如の意味
欠如とは
欠如とは、必要な物事が欠けていることを意味しています。
その他にも、「文章を書くとき、天皇または高貴の人に敬意を表すため、その名前の上に1字か2字分の空白を置くこと」の意味も持っています。
欠如の表記方法
欠如は「闕如」とも書きますが、一般的には「欠如」と表記されています。
欠如の読み方
欠如の読み方は「けつじょ」です。誤って「けつにょ」などと読まないようにしましょう。
欠如の使い方
「当事者意識が欠如している」「欠如モデルから垂直モデルへ転換する」「意匠の独創性の欠如がみられる」「先天性欠如歯の原因は明らかになっていません」などの文中で使われている欠如は、「必要な物事が欠けていること」の意味で使われています。
一方、「貴人への敬意を欠如で表す」「文章を書くときの約束事の一つに欠如はがあります」「欠如は唐の制度から取り入れたものです」などの文中で使われている欠如は、「文章を書くとき、敬意を表すために名前の上に空白を置くこと」の意味で使われています。
欠如とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、ほとんどの場合は「必要な物事が欠けていること」の意味で用いられています。欠如の「欠」はあるべきものが足りないことを表す漢字であり、「如」は状態を表す言葉に添えて調子を助ける語です。
「注意欠如多動性障害」の意味
欠如を用いた日本語には、「注意欠如多動性障害」があります。注意欠如多動性障害とは、発達障害の一種であり、不注意さや落ち着きのなさ、考えなしに行動する特性があります。「ADHD」とも言い、子どもだけでなく成人の3~4%が持っていると言われています。
欠如の対義語
欠如の対義語・反対語としては、欠けたところや足りないところが全くないことを意味する「完全」などがあります。
欠如の類語
欠如の類語・類義語としては、物の一部が欠けてなくなることを意味する「欠損」、大切な事が抜け落ちていることを意味する「遺漏」、手続きや仕事の上で不足や欠点があることを意味する「手落ち」、あるべきものがないことを意味する「抜け」などがあります。
欠落の意味
欠落とは
欠落とは、一部分が欠け落ちることを意味しています。
欠落の読み方
欠落の読み方は「けつらく」です。欠落は「かけおち」とも読みますが、その場合は「結婚を許されない男女がひそかによその土地に逃れること」という別の意味を持ちます。
欠落の使い方
欠落を使った分かりやすい例としては、「感情が欠落している人もいます」「歌詞の一部が欠落している」「日本の英語教育には実践が欠落している」「欠落変数バイアスをシミュレーションする」などがあります。
その他にも、「この美術作品には欠落箇所があります」「破損や欠落した彫刻を修復する」「航空機の部品欠落が発覚した」「車両事故の原因はボルトの欠落でした」「データの一部または全部が欠落している」などがあります。
欠落の「欠」は訓読みで「かく」と読み、こわれ落ちて足りなくなることを表します。抜けてなくなることを表す「落」と組み合わさり、欠落とは、必要なある部分が欠け落ちていることを意味します。
「欠落変数バイアス」の意味
欠落を用いた日本語には、「欠落変数バイアス」があります。欠落変数バイアスとは、おもに計量経済学で用いられる言葉であり、本来コントロールすべき共変量をモデルから取り除いてしまうことで生じるバイアスを意味します。
欠落の対義語
欠落の対義語・反対語としては、必要なものが完全に備わっていることを意味する「完備」などがあります。
欠落の類語
欠落の類語・類義語としては、必要な記述などが抜け落ちることを意味する「脱落」、必要な事物が欠け落ちていることを意味する「欠漏」、あるべきものが抜け落ちることを意味する「漏れ」などがあります。
欠如の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、欠けて足りないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、欠如の慣用的な言い回し、慣用的な表現には「感覚の欠如」「欠如する」「欠如している」などがあります。例文5にある「先天性欠如歯」とは、生まれつき永久歯の本数が足りない状態を意味します。
欠落の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、抜け落ちることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、欠落の慣用的な言い回し、慣用的な表現には「欠落している」「欠落している人」「人として欠落している」などがあります。例文1から例文4の欠落は抽象的な事柄に対して用いられ、例文5の欠落は物質的な事柄に使用されています。
欠如と欠落という言葉は、どちらも「必要な物事が欠けていること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、あるべき物事が欠けていることを表現したい時は「欠如」を、もともとあった物事が欠けていることを表現したい時は「欠落」を使うようにしましょう。