似た意味を持つ「着手」(読み方:ちゃくしゅ)と「着工」(読み方:ちゃっこう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「着手」と「着工」という言葉は、どちらも「取りかかること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
着手と着工の違い
着手と着工の意味の違い
着手と着工の違いを分かりやすく言うと、着手とは何かに取りかかることを表し、着工とは工事に取りかかることを表すという違いです。
着手と着工の使い方の違い
一つ目の着手を使った分かりやすい例としては、「ようやく新しい事業に着手することになった」「弁護士の着手金に消費税はかかりますか」「基本的に着手金は返還されません」「サーバーセキュリティ対策に着手する」などがあります。
二つ目の着工を使った分かりやすい例としては、「住宅着工の件数は景気に左右されます」「着工前に近隣への挨拶を忘れないでください」「消防用設備等の着工届を提出しました」「着工届は工事開始の何日前に出す必要がありますか」などがあります。
着手と着工の使い分け方
着手と着工という言葉は、どちらも何かをやり始めることや取りかかることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
着手とは、手をつけることを意味し、何かに取りかかることを表す言葉です。仕事や研究など、あらゆる物事をに取りかかることに使用できます。また、「着手未遂」のような使い方で犯行に取りかかること、「将棋初心者の着手を予想する」のような使い方で将棋の駒を打つことも表します。
着工とは、建築用語で、工事に取りかかることを意味します。着工は「工事に着手すること」を表し、基礎工事を始めた時点を指すことが多い言葉です。あくまでも工事に限定した表現であり、他の仕事や研究あるいは事業などに使用されることはありません。
つまり、着手とは何かに取りかかることを意味しますが、着工とは工事に取りかかることのみを表現します。二つの言葉を比べると、着工よりも着手の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
着手と着工の英語表記の違い
着手を英語にすると「start」「commencement」となり、例えば上記の「新しい事業に着手する」を英語にすると「start a new business」となります。
一方、着工を英語にすると「Start of construction」「commencement of work」となり、例えば上記の「住宅着工」を英語にすると「housing starts」となります。
着手の意味
着手とは
着手とは、ある仕事に手をつけること、取りかかることを意味しています。
その他にも、「刑法で、犯罪の遂行に直接関係のある行為に取りかかること」「囲碁や将棋などで、石を置いたり駒を動かしたりすること、手」の意味も持っています。
着手の読み方
着手の読み方は「ちゃくしゅ」です。誤って「ちゃくす」「きて」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「着手開始」「着手できる」
「着手開始」「着手できる」などが、着手を使った一般的な言い回しです。
着手の使い方
「着手届はオンライン申請を利用できます」「利益向上を目指し英語教育事業に着手する」「着手金の勘定科目を間違えてしまった」「弁護士に依頼する際の着手金の相場はいくらぐらいですか」などの文中で使われている着手は、「仕事に手をつけること」の意味で使われています。
一方、「犯行に着手しても遂げなければ未遂になります」の文中で使われている着手は「刑法で犯罪の遂行に取りかかること」の意味で、「着手禁止点のルールをご存知ですか」の文中で使われている着手は「囲碁や将棋などで石や駒を動かすこと」の意味で使われています。
着手とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため文脈により意味を捉える必要があります。着手の「着」は関わりをもつことを表し、「手」は仕事や石や駒の打ち方を表す漢字です。
「着手金」の意味
着手を用いた日本語には「着手金」があります。着手金とは、業務に取りかかることに対して支払う金銭を意味します。交渉や訴訟など、結果が見通せない業務の場合は、不成功に終わっても返還されないのが一般的です。
着手の対義語
着手の対義語・反対語としては、すっかり仕上げることを意味する「完成」、まだ手をつけていないでそのまま残っていることを意味する「手付かず」などがあります。
着手の類語
着手の類語・類義語としては、仕事などを始めることを意味する「手を付ける」、関係をもちはじめることを意味する「手を染める」、物事に取りかかる第一歩を意味する「手始め」などがあります。
着工の意味
着工とは
着工とは、土木や建築などの工事を始めることを意味しています。
着工の読み方
着工の読み方は「ちゃっこう」です。誤って「ちゃくこう」「ちゃっく」などと読まないようにしましょう。
着工の使い方
着工を使った分かりやすい例としては、「英語教室の着工は10月頃になりそうです」「着工届に図面を添付する」「父の命日が着工日とは因縁を感じます」「着工式の手土産は何が喜ばれるだろう」などがあります。
その他にも、「着工金と中間金の相場はいくらぐらいですか」「着工から完成までの流れを教えてください」「着工してから毎日のように差し入れをしています」「着工から竣工までの工事期間を計算する」などがあります。
着工の「工」は訓読みで「たくみ」と読み、物を作り出す仕事を表す漢字です。関わりをもつことや取りかかることを表す「着」と組み合わさり、着工とは、工事に取りかかることや工事を始めることを意味します。
「建物建築着工金」の意味
着工を用いた日本語には「建物建築着工金」があります。建物建築着工金とは、略して「着工金」とも呼ばれ、工事着工時に建築代金の一部として支払うお金を意味します。建物上棟時に建築代金の一部として支払うお金は「中間金」と言いますが、 着工金と中間金は工事費用の約30%ずつが相場です。
着工の対義語
着工の対義語・反対語としては、建築物や土木関係などの工事が完了することを意味する「竣工」、工事を終えることを意味する「完工」などがあります。
着工の類語
着工の類語・類義語としては、大規模な工事を始めることを意味する「起工」、建築の着工に際して礎石を据えることを意味する「定礎」、工事を実施することを意味する「施工」などがあります。
着手の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、取りかかること、やりはじめること、手をつけることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、着手という言葉は主にビジネスシーンで使用されています。
着工の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、工事に着手すること、工事に取りかかることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、着工という言葉は、ビジネスシーンで使用されることがほとんどです。
着手と着工という言葉は、どちらも「取りかかること、やりはじめること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、取りかかること全般を表現したい時は「着手」を、工事に取りかかることを表現したい時は「着工」を使うようにしましょう。