似た意味を持つ「幾重」(読み方:いくえ)と「何重」(読み方:なんじゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「幾重」と「何重」という言葉は、どちらも「いくつも重なっていること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
幾重と何重の違い
幾重と何重の意味の違い
幾重と何重の違いを分かりやすく言うと、幾重とは辞書に掲載されている言葉、何重とは辞書に掲載されていない言葉という違いです。
幾重と何重の使い方の違い
一つ目の幾重を使った分かりやすい例としては、「幾重にも重なり合う旋律が印象に残りました」「幾重もの厳格な検査工程を経た製品を市場に出す」「幾重にもご迷惑をおかけして申し訳ございません」などがあります。
二つ目の何重を使った分かりやすい例としては、「花びらが複雑に何重にも重なっている」「紐を何重にも巻いて縛りました」「色を何重にも重ねて深みを出す」「三人体制で何重にも確認しています」などがあります。
幾重と何重の使い分け方
幾重と何重という言葉は、どちらも何枚も重なっていること、繰り返しているさまを意味します。二つの言葉はほぼ同義であるため、上記の例文にある幾重と何重は、互いに置き換えて使っても意味は通じます。
ただし、幾重は辞書に掲載されている正しい日本語ですが、何重は辞書に載っていない俗語です。そのため、幾重はやや改まった言い方であり、何重は口語的でややくだけた印象を与えます。公用文や新聞などに用いる場合には「幾重」と表記することが適切でしょう。
幾重と何重の英語表記の違い
幾重も何重も英語にすると「piling up」「multiple layers」「many layers」となり、例えば上記の「幾重にも重なり合う旋律」を英語にすると「a melody that overlaps many layers」となります。
幾重の意味
幾重とは
幾重とは、何枚も重なっていること、いくつかの重なりを意味しています。
幾重の読み方
幾重の読み方は「いくえ」です。誤って「いくじゅう」「きじゅう」などと読まないようにしましょう。
幾重の使い方
幾重を使った分かりやすい例としては、「このドラマは伏線が幾重にも張り巡らされている」「幾重にも重なるチュールが美しいドレスである」「曲線が幾重にも重なる唯一無二のデザインです」などがあります。
その他にも、「私たちは様々な危険に幾重にも取り囲まれている」「オーロラの幾重もの輝きに感動しました」「幾重にも重なるミルフィーユが美味しかったです」「幾重にもお詫び申し上げます」などがあります。
幾重の「幾」は数量の不定なことや量的に多いことを表し、「重」は物の上にそれと同類の物を載せることや繰り返すことを表す漢字です。幾重とは、いくつも重なっていることを意味し、何層も重なっている状態や物事が何度も繰り返される様子を表します。
「幾重にも重なる」の意味
幾重を用いた言い回しには「幾重にも重なる」があります。幾重には「重」という漢字があるため、二重表現の誤用ではないかと考える人がいますが、「幾重」は重なりを表し、その重なりがいくつもあることを意味するので正しい日本語と言えます。
幾重の対義語
幾重の対義語・反対語としては、そのものだけであることを意味する「一重」などがあります。
幾重の類語
幾重の類語・類義語としては、いく重にも重なり合うさまを意味する「畳畳」、物が九つまたはいくつも重なっていることを意味する「九重」、同じ物事が重なり合うことを意味する「重複」、幾重にも多く重なることを意味する「十重二十重」(読み方:とえはたえ)などがあります。
何重の意味
何重とは
何重とは、多くの重なり、いくつかの重なりを意味しています。
何重の読み方
何重の読み方は「なんじゅう」です。誤って「なんえ」「なにじゅう」などと読まないようにしましょう。
何重の使い方
何重を使った分かりやすい例としては、「何重にも重なる雲を油絵で表現する」「カルテットは何重奏のことですか」「何重苦も背負ったハンデを乗り越える」「壊れないように緩衝材を何重にも巻いてください」などがあります。
その他にも、「物が何重にも見える目の病気があります」「何重結合かの見わけ方を教えてください」「製品の安全性を何重にもチェックしています」「マフラーを何重にも巻いて寒さをしのぐ」などがあります。
何重の「何」は、属する範囲さえはっきりしない不定のものを表す漢字です。事のある上にさらに事を加えることを表す「重」と結び付き、何重とは、いくつも重なっていること、いくつかの重なりを意味します。
何重は辞書に掲載されていない表現
何重という言葉は、辞書に掲載されていない俗語です。前述の「幾重」と同じ意味で使用されていますが、書き言葉よりも話し言葉で用いられている言葉です。幾重と同じように使用できますが、公文書などのかしこまった文書には「幾重」を使う方がよいでしょう。
何重の対義語
何重の対義語・反対語としては、重ならないであることを意味する「単」(読み方:ひとえ)などがあります。
何重の類語
何重の類語・類義語としては、積み重なっているものや重なりを意味する「層」、七つ重ねることたたくさんのものを重ねることを意味する「七重」、数多く重なり合うことを意味する「百重」、物事が次から次へ重なり積もることを意味する「累積」などがあります。
幾重の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、多くのかさなり、何重を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、幾重の慣用的な言い回し、慣用的な表現には「幾重にも重なる」「幾重もの」「幾重の」などがあります。
何重の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、多数折り重なっているさまを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、何重の慣用的な言い回しには「何重にも巻く」「何重にも見える」「何重にも重なる」などがあります。
幾重と何重という言葉は、どちらも「いくつもの重なり」を表します。どちらを使っても構いませんが、公的な書類などに記載する場合は、辞書に掲載されている「幾重」を使用する方がよいでしょう。