似た意味を持つ「故人」(読み方:こじん)と「死者」(読み方:ししゃ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「故人」と「死者」という言葉は、どちらも「死亡した人」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
故人と死者の違い
故人と死者の意味の違い
故人と死者の違いを分かりやすく言うと、故人とは生前かかわりのあった死んだ人に使い、死者とは自分の知らない死んだ人に使うという違いです。
故人と死者の使い方の違い
一つ目の故人を使った分かりやすい例としては、「遺族の方から故人の葬儀日程を聞きました」「故人への手紙を棺に入れる」「故人へのメッセージを弔電として送る」「四十九日法要とは別に故人を偲ぶ会を行いました」などがあります。
二つ目の死者を使った分かりやすい例としては、「交通事故の死者数は減少傾向にあります」「今季初の熱中症による死者が出ました」「死者に化粧を施す風習があります」「死者の額に三角巾を付ける理由をお話しします」などがあります。
故人と死者の使い分け方
故人と死者という言葉は、どちらも既に亡くなっている人のことを指しますが、使い方には違いがあります。
故人とは、この世に生きていない死んだ人を意味し、姻戚や友人知人など生前かかわり合いがあった死亡者に用いる言葉です。「故人を偲ぶ」とは、亡くなった人を懐かしい気持ちで思い出すことを表す慣用句です。
死者とは、もう生きておらず亡くなった人を意味します。「交通事故の死者数」のような使い方で不特定多数の死人や、「熱中症による死者が出ました」のような使い方で自分の知らない死人について客観的に用いられる言葉です。
つまり、故人とは縁故のあった特定の死人を表し、死者とは不特定多数の死人や自分の知らない死人を指す言葉です。二つの言葉の意味は同じですが、使い方には違いがあるので注意してください。
故人と死者の英語表記の違い
故人も死者も英語にすると「deceased」「decedent」「dead person」となり、例えば上記の「故人の葬儀」を英語にすると「the last offices for the deceased」となります。
故人の意味
故人とは
故人とは、死んだ人を意味しています。
その他にも、「古くからの友人、昔の友達、旧友」の意味も持っています。
故人の読み方
故人の読み方は「こじん」の他に「ふるひと」「ふるびと」がありますが、「ふるひと」「ふるびと」と読むと「昔の人」や「年をとった人」などの意味にもなります。
故人の使い方
「故人アカウント管理連絡先を設定する」「故人の戸籍謄本は誰でも取れるものですか」「故人との関係の書き方がわかりません」「故人の銀行口座が凍結される前にやっておくべきことがあります」などの文中で使われている故人は、「死んだ人」の意味で使われています。
一方、「今年のお盆は故人と再会する予定です」「彼は小学校以来の故人です」「故人と話す夢は欲しかったものが手に入る前兆です」などの文中で使われている故人は、「古くからの友人、旧友」の意味で使われています。
故人とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「死んだ人」の意味で用いられています。「昔の友達、旧友」の意味は漢文や古語に由来するもので、現代の日常会話ではあまり使用されていません。
故人の故事成語
故人を用いた故事成語には「二千里の外故人の心」(読み方:にせんりのほかこじんのこころ)があります。二千里の外故人の心とは、遠く離れた古くからの友人のことを思う気持ちを意味します。中国の詩人である白居易の詩の一節に由来する言葉です。
故人の対義語
故人の対義語・反対語としては、生きている人や命ある人を意味する「活人」、この世に現に生きている人を意味する「空蝉」(読み方:うつせみ)などがあります。
故人の類語
故人の類語・類義語としては、死んだ人を意味する「帰らぬ人」、死んでこの世にいない者を意味する「亡き者」、死んだ人や死人を意味する「仏様」、死んでしまった人や故人を意味する「昔人」などがあります。
死者の意味
死者とは
死者とは、死んだ人、死人を意味しています。
死者の使い方
死者を使った分かりやすい例としては、「死者を埋葬地まで見送る」「死者の名誉毀損罪が設けられました」「死者の蘇生は現実的に可能なのだろうか」「古代エジプトの死者の書には神への賛歌が書いてあります」などがあります。
その他にも、「仏教では法要を営み死者を弔います」「死者の肖像権は原則として認められていません」「死者の顔に白い布をかけるのは何故ですか」「メキシコの死者の日にはマリーゴールドの花を飾ります」などがあります。
死者とは、文字通り「死んだ者」を意味し、亡くなった不特定多数の人や、死亡した自分の知らない人について用いられる言葉です。「交通事故の死者数」のような使い方で、客観的に死亡した人を捉える際に使用されています。
「死者の書」の意味
上記の例文にある「死者の書」とは、古代エジプト新王国時代以降、棺の中のミイラとともに副葬された宗教文書です。パピルスの巻物や皮革に教訓や呪文を図説とともに記したものであり、古代エジプト人の死生観を知るうえでの貴重な資料となっています。
死者の対義語
死者の対義語・反対語としては、生きている者を意味する「生者」、この世に生きている人を意味する「現し人」(読み方:うつしびと)などがあります。
死者の類語
死者の類語・類義語としては、死んだ人や成仏できずにさまよっている魂を意味する「亡者」、亡くなった人や死者を意味する「物故者」、死人の朽ち果てた骨を意味する「枯骨」、あの世の者や死ぬと決まった者を意味する「彼方者」(読み方:あっちもの)などがあります。
故人の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、死亡した人のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、故人の慣用的な言い回しには「故人を弔う」「故人の死」「故人を偲ぶ」などがあります。「故人を弔う」とは、故人を悼み、その魂を安らげる行為を指す言葉です。
死者の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、死亡者、もはや生きていない人々を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「死者の日」とは、ラテンアメリカで死者の魂を迎え祝う日のことです。特にメキシコで11月1日と2日に行われる祭礼が有名で、国中の町や村でパレードやパーティーが開かれています。
故人と死者という言葉は、どちらも「死亡した人」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、生前つながりがあった特定の死人を表現したい時は「故人」を、自分の知らない死亡者や不特定多数の死人を表現したい時は「死者」を使うようにしましょう。