似た意味を持つ「見学」(読み方:けんがく)と「視察」(読み方:しさつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「見学」と「視察」という言葉は、どちらも「実際に見ること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
見学と視察の違い
見学と視察の意味の違い
見学と視察の違いを分かりやすく言うと、見学とは実際に見て学ぶこと、視察とは実際に見て状況を判定することという違いです。
見学と視察の使い方の違い
一つ目の見学を使った分かりやすい例としては、「子供とお菓子の工場見学に行きました」「施設見学会のチラシを作成する」「英語サークルの活動の様子を見学しました」「スイミングクラブへの見学を申し込む」などがあります。
二つ目の視察を使った分かりやすい例としては、「工事現場を訪問して安全視察を行いました」「農水大臣は備蓄米の販売の様子を視察しました」「視察研修の勘定科目を会計士に確認する」「視察や見学を希望される方はお問合せください」などがあります。
見学と視察の使い分け方
見学と視察という言葉は、どちらも現地で実際に見ることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
見学とは、実際のありさまなどを見て学ぶことを意味し、実際に出かけて行って知識を得たり学んだりすることを表します。見学は学ぶことが目的であり、見学者は教えられる立場であるため物事を下から見た言葉だと言えるでしょう。
視察とは、その場に行って実際の状況を見極めることを意味し、実情を見たり調査したりして知ることを表します。視察は現状の良し悪しを見極めることが目的であり、視察者は判定する立場であるため物事を上から見た言葉だと言えるでしょう。
つまり、見学とは実際に見て学ぶことであり、視察とは実際の状況を見極めることを意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
見学と視察の英語表記の違い
見学を英語にすると「tour」「observation」「field trip」となり、例えば上記の「工場見学」を英語にすると「factory Tour」となります。一方、視察を英語にすると「inspection」「observation」となり、例えば上記の「安全視察」を英語にすると「safety inspection」となります。
見学の意味
見学とは
見学とは、実際のありさまを見て知識を広めることを意味しています。
その他にも、「体調などの都合で、体育実技などを実際に行わないで見て学ぶこと」の意味も持っています。
見学の使い方
「見学者に工場内を案内する」「国会議事堂や法務省など巡る見学ツアーに参加します」「来週の日曜日に住宅構造見学会を開催する予定です」などの文中で使われている見学は、「実際のありさまを見て知識を広めること」の意味で使われています。
一方、「体調不良のため体育の授業は見学させていただきます」「見学者はレポートを書いて提出してください」などの文中で使われている見学は、「都合により体育実技などを実際に行わないで見て学ぶこと」の意味で使われています。
見学とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。見学の「見」は視覚を働かして物事の存在や内容を認めること、「学」は教えを受けたりして知識や技芸を身につけることを表す漢字です。
表現方法は「社会科見学」
見学を用いた日本語には「社会科見学」があります。社会科見学とは、社会科の授業の一環として、児童や生徒が、地域の産業施設や史跡などを訪問し、知識や理解を深めることです。近年は、社会人が観光旅行の一環として社会科見学に参加するケースが増え、「大人の社会科見学」と呼ばれています。
見学の対義語
見学の対義語・反対語としては、自分で実際に経験することを意味する「体験」などがあります。
見学の類語
見学の類語・類義語としては、催し物や名所旧跡などを見て楽しむことを意味する「見物」、景色や芝居などを見ることを意味する「観覧」、その場所に行って見ることを意味する「参観」、神社仏閣やその宝物などを謹んで観覧することを意味する「拝観」などがあります。
視察の意味
視察とは
視察とは、現地や現場に行き、その実際のようすを見極めることを意味しています。
視察の使い方
視察を使った分かりやすい例としては、「本社のお偉いさんが工場を視察に来る予定です」「視察後にお礼のメールを送りました」「急な視察訪問は相手方に失礼だろう」「海外ビジネスの現地視察を積極的に行っています」などがあります。
その他にも、「視察報告書のテンプレートを探しています」「視察旅行の勘定科目はどれにすべきですか」「行政視察に参加して北欧の4都市を巡りました」「海外視察に英語が得意な部下を連れて行きました」などがあります。
視察の「視」は注意して見ることを表す漢字です。調べて明らかにすることを表す「察」と組み合わさり、視察とは、ありのままの状態を注意深く見きわめること、実際に出かけて行って状況を見極めることを意味します。
表現方法は「行政視察」
視察を用いた日本語には「行政視察」があります。行政視察とは、行政の施策に役立てるため、先進的な取り組みを行っている他の自治体に赴き、現地調査や情報収集などを行うことです。また、他の自治体の事例を参考にしながら、自治体の抱える課題について解決策を見つけようとすることです。
視察の類語
視察の類語・類義語としては、状況や実情を見たり調査したりすることを意味する「査察」、見回って事情を調査することを意味する「巡察」、物事の実態や動向などを明確にするために調べることを意味する「調査」、実際に立ち会って検査することを意味する「検分」などがあります。
見学の例文
この言葉がよく使われる場面としては、実際を見て知識を得ること、見ることによって学ぶことを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「完成見学会」とは、新築で建て終わったばかりの住宅を、購入者に引き渡す前に一般公開される見学会です。見学者は、自分の家づくりのヒントが得られるなどのメリットがあります。
視察の例文
この言葉がよく使われる場面としては、実際にその場に出かけて行って状況を見きわめることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「視察団」とは、組織や地域などを実際に訪ねて実際のありさまを知るために結成された集団を意味します。
見学と視察という言葉は、どちらも「実際に見ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、実際に見て学ぶことを表現したい時は「見学」を、実際に見て状況を判定することを表現したい時は「視察」を使うようにしましょう。