【正統】と【正当】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

同じ「せいとう」という読み方の「正統」と「正当」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「正統」と「正当」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。




正統と正当の違い

正統と正当の違いを分かりやすく言うと、正統とは正しい系統や思想、正当とは正しく道理にかなっている様子という違いです。

一つ目の正統を使った分かりやすい例としては、「正統派美人である彼女は近寄りがたい存在です」「政治的正統性の概念を論じる」「正統的周辺参加の機会を増やす」「正統主義とは何かを簡単にわかりやすく教えてください」などがあります。

二つ目の正当を使った分かりやすい例としては、「彼は正当な理由のある欠勤だと主張しています」「自分のミスを正当化してはいけません」「正当防衛は刑法36条で規定されています」「CEOは買収の正当性を訴えています」などがあります。

正統と正当という言葉は、どちらも「せいとう」と読みますが、意味や使い方には大きな違いがあります。

正統とは、もともと正しい系統や血筋を表し、「正統な皇位継承者」のような使い方をする言葉です。また、「正統カリフ」のような使い方で、始祖の教えを忠実に受け伝えていること、「正統派美人」のような使い方で、社会で最も妥当とされる立場の意味でも使用されている言葉です。

正当とは、道理にかなって正しいことや、法規や法律にかなっていることを意味します。「正当な理由」とは、正当さがある理由であり、ある行為や状況が道理にかなっており、社会通念上も認められるような十分な理由であることを表現します。

つまり、正統とは正しい系統や思想であり、正当とは正しく道理にかなっているさまを意味します。二つの言葉は同じ読み方をしますが、意味が全く違う同音異義語なので互いに置き換えて使うことはできません。

正統を英語にすると「legitimate」「traditional」「orthodox」となり、例えば上記の「正統派」を英語にすると「an orthodox school」となります。一方、正当を英語にすると「fair」「just」「legal」となり、例えば上記の「正当な理由」を英語にすると「a just cause」となります。

正統の意味

正統とは、正しい系統や血筋を意味しています。

その他にも、「創始者の教え・学説・思想などを正しく受け継いでいること」「その時代、その社会で最も妥当とされる思想や立場」の意味も持っています。

「源氏の正統は断絶しました」「魏は正統王朝である後漢から禅譲を受けた」「北朝と南朝のどちらを正統とするか」「我こそが正統な皇位継承者である」などの文中で使われている正統は、「正しい系統や血筋」の意味で使われています。

一方、「ムハンマドの死後30年を正統カリフ時代と言います」の文中で使われている正統は「創始者の教えなどを正しく受け継いでいること」の意味で、「娘は正統派イケメンという俳優を推しています」の文中で使われている正統は「その時代で最も妥当とされる思想」の意味で使われています。

正統の読み方は「せいとう」です。同じ読み方をする熟語に「正当」や「政党」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。

正統とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。正統の「正」は訓読みで「ただしい」と読み、本当であることや本筋であることを表し、「統」は家系や集団など一続きになっているものを表す漢字です。

正統を用いた日本語には、「正統カリフ」があります。正統カリフとは、イスラムにおいて、ムハンマドの直後の後継者であるメジナの4人のカリフを意味します。アブー・バクル、ウマル、ウスマーン、アリーの4人を指し、この4人が治めた時代を「正統カリフ時代」と呼びます。

正統の対義語・反対語としては、社会に承認されている正統に対して特殊な少数派を意味する「異端」などがあります。

正統の類語・類義語としては、正統の血筋を意味する「嫡流」(読み方:ちゃくりゅう)、血筋が父祖から子孫へ一直線につながる系統を意味する「直系」、本来の形式に従っていることを意味する「正式」、正式にきめられていることを意味する「正規」などがあります。

正当の意味

正当とは、道理にかなっていて正しいこと、法規にかなっていることを意味しています。

その他にも、「実直なこと、また、そのさま」の意味も持っています。

「正当防衛が成立する要件を満たしていない」「主権の正当性の契機と権力的契機を融合する」「すぐに自己正当化バイアスが働いてしまう」「これは正当な理由のある自己都合退職です」などの文中で使われている正当は、「道理や法規にかなっていて正しいこと」の意味で使われています。

一方、「生徒たちは正当な英語教師を慕っています」「正当な仕事ぶりが評価されています」「正当な対応に感謝いたします」などの文中で使われている正当は、「実直なこと、実直なさま」の意味で使われています。

正当の読み方は「せいとう」の他に「しょうとう」とも読みますが、一般的には「せいとう」と読まれています。

正当とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、多くは「道理にかなっていて正しいこと、法規にかなっていること」の意味で用いられています。現代語の中で「実直なこと」の意味で用いられることはほとんどありません。

正当を用いた日本語には「正当防衛」があります。正当防衛とは、自己または他人に加えられる急迫した不正の侵害に対し、これを防ぐためやむをえず行なう加害行為を意味します。刑法上は違法性がないものとみなされ、民法上も損害賠償責任を負いません。

正当の対義語・反対語としては、正当でないことや道理に合わないことを意味する「不当」などがあります。

正当の類語・類義語としては、適当で正しいことを意味する「適正」、きわめて当然であり適切であることを意味する「至当」、行いや心の持ち方の正しいことを意味する「方正」、まともなさまや真面目なさまを意味する「まっとう」などがあります。

正統の例文

1.イギリス英語こそが正統な英語であると考え、オックスフォード大学に留学しました。
2.明日の歴史のテストに出そうなので、正統カリフである4人の名前を必死に覚えているところです。
3.人とは違ったものが好きなので、正統派アイドルよりも個性派アイドルに惹かれます。
4.19世紀のウィーン体制は、正統主義の原則によって諸大国の勢力均衡を維持しようとするものでした。
5.キリスト教における正統と異端の激烈な争いは、歴史的な政治にも利用されてきました。

この言葉がよく使われる場面としては、正しい系統、正当の血筋、正しい筋道、最も妥当とされる思想や立場を表現したい時などが挙げられます。

例文4にある「正統主義」とは、1814〜15年のウィーン会議において、フランス代表のタレーランが主張した戦後秩序の理念です。フランス革命以前の正統王朝の復位と旧制度(アンシャンレジーム)の復活をめざす反動的な立場を取るものです。

正当の例文

1.常に自分を正当化する人は、現実から目を背けてばかりいるので成長できません。
2.正当な理由のある就業上の厳格な指導と、パワハラは厳しく区別されなければなりません。
3.戦争の正当性を認めてしまう世の中では、いつまでたっても世界平和は訪れないだろう。
4.ケンカをふっかけてきた相手を集団でボコボコにする行為は、はたして正当防衛になるのだろうか。
5.学級委員長は正当な人柄で人望があり、クラスの誰からも信頼されています。

この言葉がよく使われる場面としては、道理にかなっているさま、正直でまじめなことを表現したい時などが挙げられます。

上記の例文にあるように、正当の慣用的な言い回し、慣用的な表現には「正当化」「正当な理由」「正当性」などがあります。「正当化」とは、自分の言動や特定の物事などを、正しく道理にかなっているようにみせたり、理論づけたりすることを意味します。

正統と正当という言葉は、どちらも「せいとう」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、正しい系統を表現したい時は「正統」を、正しく道理にかなっていることを表現したい時は「正当」を使うようにしましょう。

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