【誘拐】と【拉致】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「誘拐」(読み方:ゆうかい)と「拉致」(読み方:らち)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「誘拐」と「拉致」という言葉は、どちらも「連れ去ること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




誘拐と拉致の違い

誘拐と拉致の違いを分かりやすく言うと、誘拐とはだまして連れ去ること、拉致とはむりやりに連れ去ることという違いです。

一つ目の誘拐を使った分かりやすい例としては、「人質が誘拐犯に同情してしまうことがあります」「幼女誘拐事件の容疑者が逮捕されました」「営利目的誘拐罪は刑法225条で規定されています」などがあります。

二つ目の拉致を使った分かりやすい例としては、「日本人拉致問題に関するニュースをチェックする」「拉致被害者家族連絡会が結成されました」「行きたくなかったのに拉致同然に連れ去られた」などがあります。

誘拐と拉致という言葉は、どちらも人を連れ去ることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。

誘拐とは、人をだましたり甘い言葉で誘惑したりして連れ去ることを意味します。誘拐は、身代金目的、わいせつ目的、営利目的など、様々な目的で行われ、目的によって犯罪名や刑罰が違ってきます。

拉致とは、本人が望まないのに、むりやり連れ去ることを意味します。誘拐よりも強引で、暴力的な手段で連れ去ることを指すことが多い言葉です。

つまり、二つの言葉の違いは、人を連れ出す方法です。誘拐とは人をだまして連れ去ることを表し、拉致は人をむりやり連れ去ることを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。

誘拐も拉致も英語にすると「kidnapping」「abduction」となり、例えば上記の「誘拐犯」を英語にすると「a kidnapper」となります。

誘拐の意味

誘拐とは、だまして人を連れ去ること、かどわかしを意味しています。

誘拐を使った分かりやすい例としては、「誘拐殺人の時効について調べています」「誘拐される夢を見ました」「子供が英語教室の帰りに誘拐されました」「誘拐を題材にしたテレビドラマを知っていますか」などがあります。

その他にも、「誘拐事件が連続して起きています」「有名イラストレーターが誘拐されました」「誘拐犯と天才少女の絆を描いた小説にハマっています」「誘拐に関する報道をくまなくチェックする」などがあります。

誘拐の「誘」は訓読みで「さそう」と読み、こちらになびくように仕向けることを表し、「拐」はだまして連れ去ることや金品をだましとることを表します。誘拐とは、他人をだまし誘い出して連れ去ることを意味します。

誘拐を用いた日本語には「略取誘拐罪」があります。略取誘拐罪とは、暴行・脅迫あるいはだましたりして、人を自己または第三者の実力的支配のもとにおく罪の総称です。未成年者の略取誘拐罪、営利・わいせつ・結婚を目的とする略取誘拐罪、身代金誘拐罪などがあります。

誘拐の対義語・反対語としては、束縛されたりしているものを自由にすることを意味する「解放」などがあります。

誘拐の類語・類義語としては、女性や子供をだまして無理やり連れ去ることを意味する「人さらい」、本人の意思にかかわらず連れて行くことを意味する「連行」、人をだまし力ずくで他へ連れ去ることを意味する「かどわかす」などがあります。

拉致の意味

拉致とは、むりやりに連れて行くことを意味しています。

拉致を使った分かりやすい例としては、「富山県で拉致未遂事件が発生した」「新潟県在住の英語教師が拉致されました」「拉致被害者の家族4人が帰国しました」「北朝鮮による日本人拉致問題は国民的な課題です」などがあります。

その他にも、「拉致問題を考える集いが大阪で開催されました」「政府は拉致問題は解決済みとの見解を示した」「拉致問題についてわかりやすく教えてもらいました」「最近も拉致の可能性を排除できない事案がありました」などがあります。

拉致の読み方は「らち」「らっち」の二通りありますが、一般的には「らち」と読まれています。

拉致の「拉」は訓読みで「ひしぐ」と読み、押しつぶすことや強引に連れていくことを表します。占地したところにおもむくことを表す「致」と結び付き、拉致とは、本人の意思に反して強制的に連れ去る行為を意味します。

拉致を用いた日本語には「日本人拉致問題」があります。日本人拉致問題とは、北朝鮮の工作員らが1970~80年代に日本人を北朝鮮へ連れ去った事件と、それをとりまく問題です。当時の小泉純一郎首相との日朝首脳会談で金正日総書記が拉致を認めて謝罪し被害者5人が帰国しました。

拉致の対義語・反対語としては、外からの危険や破壊などからかばい守ることを意味する「保護」などがあります。

拉致の類語・類義語としては、人を連れて行方をくらますことを意味する「連れ去り」、暴力や脅迫などにより人をかどわかし連れ去ることを意味する「略取」、人を捕らえて無理に連れていくことを意味する「拘引」などがあります。

誘拐の例文

1.ゼミで開催する模擬裁判のために、未成年者誘拐罪の判例を集めています。
2.SNSで知り合った女子高校生を自宅に連れ込んだとして、英語教師がわいせつ誘拐の容疑で逮捕されました。
3.誘拐をテーマにした韓国ドラマが、日本でリメイクされ映画化するそうです。
4.この小説は、実際に起きた小学生誘拐事件をもとに書き綴られています。
5.多くの誘拐犯は、被害者の生活パターンを収集した上で犯行を計画します。

この言葉がよく使われる場面としては、人をその意思に反して第三者の支配下に移すことを表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「未成年者誘拐罪」とは、正しくは「未成年者略取及び誘拐罪」と言い、刑法第224条に規定されている犯罪です。未成年者を略取または誘拐する罪であり、3か月以上7年以下の懲役に処せられます。

拉致の例文

1.拉致事件をめぐる最近の動向について、担当大臣より説明がありました。
2.現在進行形で起こっている拉致問題について、わかりやすく解説いたします。
3.拉致の可能性を排除できないとされていた行方不明者が、国内で発見されました。
4.北朝鮮による拉致問題について、私たちが今できることは何だろう。
5.ニュースを観ていて気になったので、政府認定拉致被害者が多い県をインターネットで調べました。

この言葉がよく使われる場面としては、無理に連れて行くこと、捕えて連れて行くことを表現したい時などが挙げられます。

例文5にある「政府認定拉致被害者」とは、拉致被害者支援法に基づき、日本政府が北朝鮮による拉致と認定した計17人の被害者のことです。

誘拐と拉致という言葉は、どちらも「人を連れ去ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、だまして連れ去ることを表現したい時は「誘拐」を、むりやりに連れ去ることを表現したい時は「拉致」を使うようにしましょう。

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