同じ「じゅうぶん」という読み方、似た意味を持つ「十分」と「充分」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「十分」と「充分」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
十分と充分の違い
十分と充分の意味の違い
十分と充分の違いを分かりやすく言うと、満ち足りている様子を正しく表記しているか、誤解を避けるためにあえて表記しているかの違いです。
充分は当て字で十分は正しい日本語
「じゅうぶん」とは、満ち足りていてなんの不足もない状態を示す言葉で、本来は「十分」という漢字で表記します。正しくは「十分」であり、「充分」という字は当て字です。
学校教育の現場や、新聞などでは「十分」で統一されており、文部科学省の用語集でも公文書や法令などでは「十分」という字で統一すると記載されています。どちらの漢字を使えば良いか迷った場合には「十分」という表記を使うのが良いでしょう。
一方、「充分」という漢字は「じゅうぶん」という言葉の当て字です。この当て字は、言葉の誤解を避けるために生まれたと言われています。
例えば、小説の一節などで「家から十分歩く」という文章があったとします。これを読む時に「家から時間的に10分歩いた」と読む人と、「家からたっぷりと(じゅうぶんに)歩いた」と読む人がいて、解釈が異なってしまう場合があります。
そういった言葉の誤解を避けるために、文学的な分野では「充分」という表現を好んで使う人もいます。
また、同じく文学的な分野では、満ち足りている様子を示すのに「十」という字は、画数がたった2画であり、それだけでは自分の気持ちの満足は伝えきれないという場合、つまり心情的に十分以上に満足であるという場合に「充分」とすることもあります。
しかし、上記の表現は、どれも文学的な分野でのことであり、正しい使い方というわけではありません。特別な心情を込める場合は別として、正しく言葉を使わなくてはいけない場面では「十分」という字を使うようにしましょう。
十分の英語表記
十分を英語にすると「sufficient」「enough」となり、例えば「十分楽しめる」を英語にすると「Enjoy enough」となります。
十分の意味
十分とは
十分とは、満ち足りていて、なんの不足もない状態の正しい表記を意味しています。
表現方法は「十分すごい」「十分可愛い」「十分に発揮」
「十分すごい」「十分可愛い」「十分に発揮」などが、十分を使った一般的な表現方法です。
十分の使い方
十分を使った分かりやすい例としては、「その力を十分に発揮してください」「お気持ちだけで十分嬉しいです」「十分理解しました」「親も一緒に十分遊んであげてください」「十分寝ましたから元気です」「十分な時間を確保できない」などがあります。
十分の由来
十分とは、何もかもが足りている状態を指していて、たっぷりとある、不足していない、という意味もあります。これは、十分の「十」という字が数字的な意味ではなく、全方位という意味を持っているからです。
十という字は、方角を示す意味も持っており、東西南北全ての方位の中心点という意味があります。全方位を網羅しているという意味から転じて、「全部」「完全」「欠けているところがない」という意味を持つようになりました。
文部省が作成している用語集でも「じゅうぶん」という言葉は「十分」という漢字で統一されているので、公文書や新聞、学校教育の現場などでは「十分」と記載がされています。
「十分」と「充分」で、どちらの漢字を使ったら良いか迷った場合には、「十分」と書くようにしましょう。
十分の「十」の字が使われている言葉としては、少しも欠けたところがないことを意味する「十全」、多くの人の目や観察の目を意味する「十目」、あらゆる方面、すべての方向を意味する「十方」などがあります。
十分の対義語
十分の対義語・反対語としては、十分ではないことを意味する「不十分」があります。
十分の類語
十分の類語・類義語としては、十分すぎるほどの状態を意味する「十二分」、物事を思い通りにすることを意味する「存分」、ものが豊富にあることを意味する「潤沢」、豊かであることを意味する「豊富」などがあります。
充分の意味
充分とは
充分とは、満ち足りている様子の当て字での表現を意味しています。
充分は公用文では使えない
この充分という漢字は、文学的な分野から生まれた当て字であり、正しい漢字表記ではありません。
本来の正しい漢字である「十分」という字が、読み方によっては「10分」などのように誤読されがちなので、文脈として紛らわしい場面や誤解されることなく正しく言葉の意味を伝えたい場合などに、意識的に「充分」という字が使われることがあります。
しかし、正しい漢字表記ではないので、公文書などの書類に書く際などでは「充分」とは書かずに「十分」と正しい表記で書くようにしましょう。
充分の「充」の字には、いっぱいになる、満ちている、中身がいっぱい詰まっている、などの意味があります。そこから転じて、心情表現などで「もう充分に幸せです」などのように使われることがあります。
上記のような場合は、満ち足りている様子を意識的に強調しているのであって、本来では正しい表現ではありません。小説などで、作者の好みによって使われることがある表記の方法です。
表現方法は「充分に注意」「不充分」「充分に留意いたします」
「充分に注意」「不充分」「充分に留意いたします」などが、充分を使った一般的な表現方法です。
充分の使い方
充分を使った分かりやすい例としては、「充分に注意したが失敗してしまった」「今後は充分に留意いたします」などがあります。
充分の類語
充分の「充」の字が使われている言葉としては、内容が満ち満ちていて豊かなことを意味する「充実」、欠けた物を一杯に満たすことを意味する「充足」、ある空間的な範囲に何かが一杯に満ちることを意味する「充満」などがあります。
十分の例文
この言葉がよく使われる場面としては、公文書や学校教育の現場、新聞記事などで満ち足りていることを表現する際が挙げられます。
「十分」と「充分」は、共に満ち足りていることを意味する漢字を使っているので、どちらが正しい漢字であるのか、混乱しがちです。そういった場合は、別の言葉に置き換えて考えてみるのも良いでしょう。
例えば、十分を超えて満ちている様子を示す言葉に「十二分」(じゅうにぶん)というものがあります。この漢字を書く際には「充二分」とは書きません。どちらの漢字が正しいか迷った際には、「十二分」という言葉を思い起こしてもわかりやすいでしょう。
充分の例文
この言葉がよく使われる場面としては、小説などで満ち足りているという心理描写を強調して伝えたい際などが挙げられます。
また、例文3のように「十分休んでくれたまえ」と書くと「10分の休憩である」と誤読されがちな場合などには意識的に「充分」という表現を使う場合があります。漢字の正しさよりも、その文章の持つ意味を正しく伝えることを優先する場合などです。
同じように、心理的描写として満ち足りていることを強調して表現したい場合などに、あえて「充分」という漢字を使っている場合もありますが、いずれも正しい表記ではないことを忘れないようにしましょう。