似た意味を持つ「困難」(読み方:こんなん)と「艱難」(読み方:かんなん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「困難」と「艱難」という言葉は、どちらも物事の難しさを表す共通点があり、本来の意味は違いますが混同して使われる傾向があります。
困難と艱難の違い
困難と艱難の意味の違い
困難と艱難の違いを分かりやすく言うと、成し遂げるのが難しい状態か、苦しみ悩んでいる状態かの違いです。
困難は難しくも乗り越えられるものであるのに対し、艱難は苦しみを耐え忍ぶというような意味があります。
困難と艱難の使い分け方
難しさの度合いで考えると、艱難の方が困難よりも、より難しく厳しいものであるという意味があります。困難なことを更に悩み苦しむことが艱難という言葉の意味です。
「困難」という言葉については、成し遂げるのが難しいという意味があるので、成し遂げられる可能性はあると言えます。前向きな意味も含まれる言葉で、困難を前に成長のチャンスを伺わせるような意味合いで使われることが多いです。
対する艱難については、自然災害に見舞われた際や、親族などが亡くなった際にその悲しみに直面したような場面で使われることが多いです。乗り越えられるものとは限らず、自分ではどうにもできない苦しみを含みます。
艱難という言葉は、困難よりもより深く苦しい状況を伝えたい時に使うようにします。困難は乗り越えることに意味があるのに対し、艱難については悩み苦しむことに言葉の意味の重点を置いています。
難しいことを乗り越える意味を持たせたい場合は「困難」という言葉を使い、難しいことに直面して悩み苦しみ耐えているような意味を持たせたい場合は「艱難」という言葉を使うようにすると良いでしょう。
困難と艱難の英語表記の違い
困難を英語にすると「difficulty」「trouble」「distress」となり、例えば「困難を乗り越える」を英語にすると「Overcoming difficulties」となります。
一方、艱難を英語にすると「tribulation」「difficulties」「hardships」となり、例えば「艱難をしのぐ」を英語にすると「Survive tribulation」となります。
困難の意味
困難とは
困難とは、簡単には実現が難しいことを意味しています。
表現方法は「困難を極める」「困難な状況」「困難に直面する」
「困難を極める」「困難な状況」「困難に直面する」「困難を乗り越える」などが、困難を使った一般的な表現方法です。
困難の使い方
困難を使った分かりやすい例としては、「困難と直面するたびに成長してきた」「困難な状況に陥ると平常心を保てない」「困難を乗り越えるための言葉を欲している」「経済的困難を抱えるシングルマザーは多い」「地震で帰宅が困難となってしまった」などがあります。
困難という言葉には、艱難ほどの重さはありません。実現が難しいことに直面した場合などに使われる言葉ですが、実現不可能であると決まっているわけではありません。実現が出来る可能性もあるけれど、それが難しいという場合に使う言葉です。
困難の語源
困難とは、難しくて困ると書きます。困難の「困」という字は、木が口という囲いの中で伸び悩んでいる様子を表した漢字です。そこから転じて、動きが取れずに苦しむ、悩む、どうにか身動きを取ろうとあがく、というような意味を持つようになりました。
困難は、確かに難しさや苦しみを表す言葉ですが、その言葉の中には困難を乗り越えて一歩先に行く、成長するというような意味が含まれる場合が多くあります。希望の気持ちを併せ持っている際には困難という言葉を使うと良いでしょう。
困難の対義語
困難の対義語・反対語としては、簡単であることを意味する「容易」があります。
困難の類語
困難の類語・類義語としては、トラブルが起きていることを意味する「揉め事」、激しい騒ぎを意味する「波乱」、手間が掛かることを意味する「面倒」、処理するのが困難なことを意味する「難事」、困ったことがらを意味する「問題」などがあります。
困難の「困」の字を使った熟語としては、貧しくて困っている様を表す意味をもつ「貧困」、金銭事情などで困りきってしまうことを意味する「困窮」、困ってしまってどうしてよいかわからないことを意味する「困惑」などがあります。
艱難の意味
艱難とは
艱難とは、厳しいことに直面して悩み苦しむことを意味しています。
艱難の使い方
艱難を使った分かりやすい例としては、「たくさんのしかかる艱難に心が折れそう」「艱難の時こそ冷静になろう」「困難を乗り越えて立派な人間になるという『艱難汝を玉にす』が私の座右の銘だ」「艱難をしのぐとチャンスが現れるはずだ」などがあります。
艱難という言葉は、苦しく辛いことに直面して、思い悩んだりする様子を意味しています。困難と違って、成し遂げることに重点を置いているわけではなく、思い悩むことを主軸として考えた際に使う言葉です。
四字熟語「艱難辛苦」の意味
天災などの災害に見舞われた時や、大切な人が亡くなった場面など、自分ではどうにもできない出来事に巡り合ってしまった際などに使われる言葉で、艱難辛苦という四字熟語としてよく使用されます。
「艱難辛苦」(読み方:かんなんしんく)とは、非常に困難な状況やつらい思いをすることで苦しみ悩むことを意味しています。
艱難の類語
艱難の類語・類義語としては、苦しんで悩むことを意味する「苦渋」、あれこれ苦しむことを意味する「苦悩」、苦しみ悶えることを意味する「苦悶」、辛い目にあって苦しむことを意味する「苦艱」(読み方:くかん)、難しい場面のことを意味する「難関」などがあります。
艱難の「艱」という字は、険しく苦しい、悩み苦しむという意味を持つ言葉です。つまり、艱難とは難しい出来事に直面して、悩み苦しむという意味だと言えます。
艱難の「艱」の字を使った熟語としては、難儀や苦労、辛苦などを意味する「艱苦」、 厳しく困難なことを意味する「険艱」、苦しい悩みを意味する「辛艱」などがあります。
困難の例文
この言葉がよく使われる場面としては、なんらかの事情により、実現することが難しい出来事や、乗り越えることが難しい出来事に直面した際などが挙げられます。
困難とは、簡単に成し遂げられないことや、実現するのが難しい物事に対して使われる言葉です。しかし、それらの出来事を乗り越えられないと決まっているわけではありません。乗り越えて成長に繋げるような文面で使われることも多くあります。
例文1で考えてみると、「今更変更するのは困難」であるけれど、絶対に変更が出来ないわけではない、というような使われ方をしています。
また、例文3のように「このままでは困難だ」というように、現状に変化を加えれば乗り越えられる可能性があるような文面で使われたりもします。
例文4では自然災害的な要素が含まれていますが、自然災害そのものについては、人間の力でどうにもなりませんが、帰宅の困難については自力でどうにか出来る部分でもあります。
このように、難しい局面ではあるけれど、どうにかしようと努力すれば乗り越えられる可能性がある際に「困難」という言葉を使います。
艱難の例文
この言葉がよく使われる場面としては、災害が起こった時や親しい人を亡くした時など、自分の力ではどうにも出来ないくらいの大きな出来事に直面した場合が挙げられます。
乗り越えられないと断言することは出来ませんが、乗り越えるのには「困難」という言葉以上の苦悩が必要である場合に「艱難」という言葉を使います。
艱難辛苦という四字熟語として使われることが多く、「艱難辛苦をなめる」「艱難辛苦を切り抜けて」というような使われ方をします。
艱難辛苦とは、非常に困難な状況や辛い思いをして苦しみ悩むことを意味しています。困難という言葉では、とても足りないほどの大きな出来事について表したい場合には、艱難という言葉を使うと覚えておくようにしましょう。