似た意味を持つ「皆無」(読み方:かいむ)と「絶無」(読み方:ぜつむ)と「虚無」(読み方:きょむ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「皆無」と「絶無」と「虚無」という言葉は、何もないという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
皆無と絶無と虚無の違い
皆無と絶無と虚無の意味の違い
皆無と絶無と虚無の違いを分かりやすく言うと、皆無は何もないことを表現する時に使い、絶無は何もないことを強調する場合に使い、虚無は中身だけがない場合に使うという違いです。
皆無と絶無と虚無の語源の違い
皆無の皆には、全部、すっかりといった意味があります。そのため、すべてがない、何もないという意味になります。
絶無の絶には、非常に、この上ないといった意味があります。そのため、絶無という言葉は後にも先にも少しも見られないことを意味する言葉となり、皆無よりも強調した言い方になります。
虚無の虚には、中身がない、からっぽ、うわべだけ、弱いなどといった意味があります。そのため、虚無という言葉は外身はあれど、中身がないことを表します。
これらが三つの言葉の明確な違いです。皆無と絶無は似たような意味を持ちますが、虚無は大きく意味が違うため気を付けてください。
皆無の意味
皆無とは
皆無とは、全く存在しないことや全然ないことを意味しています。その他にも、打消しの言葉と共に使うことで、全く、さっぱりという副詞の意味を持つようになります。
表現方法は「皆無すぎる」「センスが皆無」「記憶力皆無」
「皆無すぎる」「センスが皆無」「記憶力皆無」「モチベ皆無」「皆無になる」などが、皆無を使った一般的な表現方法です。
皆無作の意味
皆無を使った言葉として「皆無作」があります。農作物や植物の結実量を示す際に使われる言葉の一つで、「皆無作」の場合は収穫量が全くないことや実がほとんどつかないことを表します。この言葉は特にブナに対して多く使われます。
他にも、栽培している農作物の収穫量が通常よりも極端に少ない状態を表す場合には凶作を使い、収穫量が通常よりも少ない状態を表す場合には不作を使い、収穫量が通常よりも多い状態を表す場合には豊作という言葉を使います。
また、並作(読み方:なみさく)という言葉は平年並みの収穫量や結実量であるときに使われる言葉ですが、この言葉は「平年作」が省略されて並作とされています。これと同様に「皆無作」も皆無とだけ記載されることが多いです。
皆無の類語
皆無の類語・類義語としては、無いことを意味する「無し」、わずかや何もないこと、価値のないことを意味する「零」があります。
皆無の皆の字を使った別の言葉としては、指定の休日以外は1日も休まずに出席することを意味する「皆勤」、日食や月食で太陽や月の全面が隠される現象を意味する「皆既食」、残らず全てやまるでを意味する「悉皆」(読み方:しっかい)などがあります。
絶無の意味
絶無とは
絶無とは、全くないことを意味しています。
表現方法は「絶無を図る」「絶無を期す」「絶無を期する」
「絶無を図る」「絶無を期す」「絶無を期する」などが、絶無を使った一般的な表現方法です。
四字熟語「僅有絶無」の意味
絶無を使った言葉として「僅有絶無」(読み方:きんゆうぜつむ)があります。ほとんどないことを意味する四字熟語で、「絶無僅有」も同じ意味を持ちます。
「僅有絶無」の類語・類義語として、これまでに一度もなく今後もありえないと思われるほど珍しいことを意味する「空前絶後」、千年の間に一回しか会えないような良い機会を意味する「千載一遇」があります。
絶無の類語
絶無の類語・類義語としては、何もないことや価値のないことを意味する「ゼロ」、何もないことを意味する「ナッシング」があります。
絶無の絶の字を使った別の言葉としては、物事をするのに極めてよいことを意味する「絶好」、きわめて大きいことを意味する「絶大」、他に比べるものがないほど優れていることを意味する「卓絶」、群を抜いて優れていることを意味する「冠絶」などがあります。
虚無の意味
虚無とは
虚無とは、何物もなく虚しいことを意味しています。その他にも、この世に存在するすべてのものに価値や意味を認められないことや、無限の宇宙も意味します。
表現方法は「虚無になる」「虚無の世界」「虚無感」
「虚無になる」「虚無の世界」「虚無感」などが、虚無を使った一般的な表現方法です。
虚無の読み方
虚無という言葉は「きょむ」という読み方をし、「きょぶ」という読み方はしません。
「こむ」という読み方も存在しますが、この読み方をする場合は有でも無でもない空を意味する仏教用語となります。この言葉が由来となった「虚無僧」(読み方:こむそう)は、仏教の一派である普化宗(読み方:ふけそう)の僧侶を指す言葉です。
また「虚無僧」は、わらのような植物のマコモで編んだ敷物「薦」(読み方:こも)を持って野宿をしたことから「薦僧」と呼ばれ、これが転じて虚無僧になったとも言われています。
四字熟語「虚無恬淡」の意味
虚無を使った言葉として「虚無恬淡」(読み方:きょむてんたん)があります。心に不信や不満、欲望などがなく、穏やかで落ち着いていることを意味する四字熟語です。恬淡はあっさりとしていて、無欲なことを意味する言葉です。
虚無の対義語
虚無の対義語・反対語としては、必要なものが十分に備わることや中身がいっぱいに満ちていることを意味する「充実」、ある物事に向かって気持ちが燃え立つことやその気持ちを意味する「情熱」があります。
虚無の類語
虚無の類語・類義語としては、何も書いてないことやその部分を意味する「空白」、内部に何もないことや、実質的な内容や価値がないことを意味する「空虚」、大空や虚空、気が散って空虚になっている状態を意味する「太虚」があります。
虚無の虚の字を使った別の言葉としては、実質の伴わないうわべだけの栄誉を意味する「虚栄」、みせかけの威勢を意味する「虚勢」、真実ではないのに真実のように見せかけることを意味する「虚偽」、勢いやからだが弱いことを意味する「虚弱」などがあります。
皆無の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何もないことを意味する時などが挙げられます。
例文1の「皆無に等しい」と例文2の「皆無に近い」は、ゼロではないが限りなくゼロに近いことを意味する表現です。
絶無の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何もないことを強く主張する時などが挙げられます。
例文3の「絶無を期する」の期するには、そうなるように期待するという意味があります。したがって、絶無と組み合わせて使うことで、全くない状態を期待するという意味になります。例文3のように本来あってはならないことに対してよく使われます。
虚無の例文
この言葉がよく使われる場面としては、中身がからっぽであることを意味する時などが挙げられます。
例文1「虚無感」とは、すべてが虚しく感じることや何事にも意味や価値が感じられないような感覚を意味する言葉です。「虚無感に襲われる」といった表現も使うことができます。
例文3の「虚無主義」とは、今生きている世界、特に過去や現在における人間の存在には意義や目的、本質的な価値がないと主張する哲学的な立場を意味する言葉で、ニヒリズムともいわれます。
虚無主義の立場は、何も信じられない事態に疲弊、絶望したため流れに身を任せて生きる消極的ニヒリズムと、全てが無価値であるということを前向きに考え一瞬一瞬を一生懸命に生きる積極的ニヒリズムに大きく分けられます。
哲学者として有名なドイツのニーチェは、後者の積極的ニヒリズムを肯定して、無意味な人生の中で自分の確立した意思で行動する「超人」になるべきだと説きました。
皆無と絶無と虚無どれを使うか迷った場合は、何もない状態を表す場合には「皆無」を、何もない状態を強調する場合は「絶無」を、中身だけがない状態を表す場合は「虚無」を使うと覚えておけば間違いありません。