似た意味を持つ「トリ」と「大トリ」(読み方:おおとり)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「トリ」と「大トリ」という言葉は、どちらも演目の最後に出演する人を示すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
トリと大トリの違い
トリと大トリの意味の違い
トリと大トリの違いを分かりやすく言うと、寄席などで最後に登場する人のことか、複数に分かれたチーム戦の時に一番最後に登場する人のことかの違いです。トリを務める人も、大トリを務める人も、どちらも真打ちと呼ばれる実力のある人を意味します。
トリと大トリの使い分け方
トリというのは、寄席などの席で一番実力のある人、技量が最上級であり、格付けで一番上にある人のことを意味しています。寄席で行われる芸事は、実力がる人ほど、最後に出演するという習わしがあります。
落語などでは、一番最初に出てくる人のことを「前座」と呼びます。これは、格付けで一番下、最下位の人のことを指します。次に「二つ目」と呼ばれる人が出演し、最後に「後座」と呼ばれる人が芸を披露します。
この「後座」を務める人のことを、真打ちと呼んだり、トリと呼んだりします。これは技量の格付けが一番上の人のことを指し、落語家や講談師にとっては最高の資格となります。つまり、トリというのは、寄席で最後に出てくる人のことを指しています。
では、大トリという言葉は、どういった意味を持つのでしょうか。これは、複数の組が芸事で優劣を競う際に使用される言葉です。例えば二つのグループに分かれて芸を披露するとします。この場合、芸を披露する先攻後攻を決める必要があります。
AグループとBグループに分かれ、Aグループが先攻を務めるとします。すると、AグループBグループ、AグループBグループ、と続けていって、最後は後攻であるBグループが芸を披露することになります。
つまり、Aグループのトリが出演した後に、Bグループのトリということになります。これを大トリと呼びます。大トリとは、二つ以上のグループに分かれて競い合う際にのみ、使われる用語であると覚えておくようにしましょう。
この大トリという概念は、年末に行われる紅白に分かれた歌合戦からであると言われています。一般的な落語などの娯楽では、グループに分かれるようなことはないので、この「大トリ」という言葉はあまり使われないものです。
トリの意味
トリとは
トリとは、寄席などで最後に出演する人のことを意味しています。最後に出演する人物は、真打ち(しんうち)と呼ばれ、芸の技量が最上級の人のことを意味しています。
真打ちというのは、漢字で「真打ち/真打」の他にも、客の心を打つことから「心打」とも書かれます。
寄席とは、「よせ」と読み、落語や漫才、講談などの大衆芸能を行う場所を意味しています。人を寄せる席であることから、寄席と呼ばれるようになりました。この寄席では、落語などの娯楽が行われます。
この落語などの娯楽は、出演する順番というのが明確に決められているものです。出演順は、落語家や講談師などの芸人の技量によるものであり、技が未熟な人ほど、先に出演をするのが習わしとなっています。
一番最初に出てくる人のことを「前座」(ぜんざ)と呼びます。これはつまり落語家で言うところの格付けが一番下の人のことです。前座の次に出てくる人を「二つ目」(ふたつめ)と呼びます。これは格付けで言うところの、前座の一つ上の人のことです。
前座の反対語としては「後座」(ござ)という言葉があります。これは出演が後の方であることを意味する言葉であり、つまりは真打ちのことを指します。トリ、真打ち、後座というのは、全て同じ意味であると覚えておくようにしましょう。
トリの由来
そもそも、最後に出てくる人のことを、なぜ「トリ」と呼ぶのでしょうか。「トリ」とは漢字で表記するところの「取り」です。これは、寄席の出演料(ギャラという言葉でも表現されます)を受け「取る」という意味の「取り」です。
昔は、寄席の出演料というのは、最後に出てくる演者に支払うものでした。最後を務める真打ちが出演料の全額をいったん全部受け取り、そこから出演者に分配をしました。
分配する金額を決めるのも、最後の出演者である真打ちです。もちろん、一番多く出演料を取るのも真打ちでした。
そのことから、出演料を受け「取る」、出演料を一番多く「取る」という意味で、最後に出演する人を「トリ」「取り」と呼ぶようになりました。現在では、出演料の受け取りや分配については、明確な決まりはありません。
ただ、一番最後に出演する人のことを「トリ」「取り」と表現する言葉だけが残って今に至ります。トリというのは、一番最後に出演する技量の高い人のことを意味するのだと覚えておくようにしましょう。
表現方法は「トリを務める」「トリを飾る」
「トリを務める」「トリを飾る」などが、トリを使った一般的な言い回しです。
トリの使い方
トリを使った分かりやすい例としては、「このライブでトリを務める人を私は観に来た」「夏の総体に向けたこの集会のトリを務めるのは野球部のみんなです」「次の舞台のトリを飾る役者さんはサプライズとなっております」などがあります。
大トリの意味
大トリとは
大トリとは、出演者が複数の組に分かれて芸を競い合う際に、後攻となって一番最後に出演する人のことを意味しています。大トリという言葉を使い始めたのは、毎年年末に、紅白に分かれて行う歌合戦の場であるとも言われています。
トリというのは、前述した通り、演目の一番最後に出てくる人のことを指します。大トリというのは、トリを務める人、つまり真打ちなどの立場にある人が複数いる場合に使われる言葉です。
紅白歌合戦の大トリとは
例えば、年末に行われる歌合戦などで、紅組、白組とに分かれて芸の出来栄えを競い合う場合などが分かりやすいでしょう。この場合、二つの組があるので、先攻後攻を決める必要があります。
紅組が先攻、白組が後攻とします。すると、紅組の前座からはじまり、白組の前座、紅組の二つ目、白組の二つ目、という風に進行していきます。最後には、紅組のトリが出演し、その後に一番最後の出演として、白組のトリが出てきます。
この白組のトリを、大トリと呼びます。普通の寄席では、このように真打ちが複数いるような公演はなかなか行われないため、あまり使われることのない言葉です。
大トリという言葉は、複数の組が競い合う場合に使われるもので、組数は二組以上でも問題ありません。しかし、近年では紅白に分かれる歌合戦などでも、大トリは、紅組にも白組にも属さない特別枠として設けられることが多くあります。
これは、大トリを務めた組の方がなんとなく印象に残りやすく、勝ちやすくなってしまうということから、公平性を保つための配慮です。
表現方法は「大トリを務める」「大トリを飾る」
「大トリを務める」「大トリを飾る」などが、大トリを使った一般的な言い回しです。
トリの例文
この言葉がよく使われる場面としては、寄席で一番最後に出演する人が登場した時などが挙げられます。トリというのは、落語家で言うところの格付けトップである真打ち、後座を務める人のことを指します。
昔は、寄席で一番最後に登場する真打ちが出演料の全てを取りまとめて受け取るという習わしがあったため、受け取る人、という意味で「取り」「トリ」と呼ばれるようになりました。
また、出演料を一括で受け取ったあと、真打ち本人が、一番多い配分で出演料を取ったことから、「取り」と呼ばれたとも言われています。トリというのは、真打ちのことであり、一番最後に出てくる後座を務める人であると覚えておくようにしましょう。
大トリの例文
この言葉がよく使われる場面としては、演芸会などで、複数の組に分かれ、先攻後攻という順番で優劣を決める時などが挙げられます。日本でこの方法を使っているもので、特に有名なのは、年末に紅白に分かれて行われる歌合戦などです。
組み分けについては、複数であれば二組以上でも問題はありません。その日、その公演の中で一番最後に芸を披露する人のことを大トリと呼ぶのだと覚えておくようにしましょう。
また、大トリとは、ほとんどの場合は真打ちか、それに匹敵する技術や人気がある人が務めるもので、技量のある人でなくては務まらないものです。大トリを務める人の芸が素晴らしいものであればあるほど、公演は盛り上がりを見せるものです。