似た意味を持つ「就業」(読み方:しゅうぎょう)と「就労」(読み方:しゅうろう)と「就職」(読み方:しゅうしょく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「就業」と「就労」と「就職」という言葉は、仕事につくことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
就業と就労と就職の違い
就業と就労と就職の意味の違い
就業と就労と就職の違いを分かりやすく言うと、就業は仕事に取り掛かっている時間を表現する時に使い、就労は仕事を始める時間を表現する時に使い、就職は職業につくことを表現する時に使うという違いです。
就業と就労と就職の使い方の違い
就業という言葉は、「子どもたちの生活に合わせた就業時間」「就業中にお腹がなってしまった」などの使い方で、その日の業務に取り組むことを意味します。
就労という言葉は、「就労体験を紹介する事業主に話を聞く」「就労だけでなく健康の支えにもなってくれる」などの使い方で、仕事を始めることを意味します。
就職という言葉は、「就職活動中はスーツを着た学生でいっぱいになる」「就職サイトにいくつも登録しておく」などの使い方で、職業につくことを意味します。
就業と就労と就職の使い分け方
「就業時間」という言葉を「就労時間」と言い方をすることはできますが、「2月から4月までの就労時間」のように長いスパンに対して使う言葉となるため、意味合いが変わります。
また、「就労ビザ」を「就業ビザ」と言い換えることはできません。
一方、就職は職に新しく就くことを意味し、勤務をしている時間を指す言葉ではないため、「就職時間」「就職ビザ」などのように就業や就労と置き換えて使うことはできません。
これが、就業、就労、就職の明確な違いです。
就業の意味
就業とは
就業とは、その日の仕事に取り掛かることを意味しています。
就業を使った言葉として、「就業時間」「就業力」があります。
「就業時間」の意味
一つ目の「就業時間」とは、業務を開始する時間から終了する時間までを指す言葉です。9時に仕事を始め、1時間の休憩をとり、18時に仕事を終える場合、就業時間は9時間となります。
「就業時間」から休憩の時間を差し引いた時間を「労働時間」と言い、上の例で言えば労働時間は8時間となります。
「就業力」の意味
二つ目の「就業力」とは、学生が卒業後自らの素質を向上させて、社会的および職業的自立を図るために必要な能力を指す言葉です。
その素質である、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力、ディスカッション能力、調査能力、自己理解能力などが社会人として求められる基礎力とされ、多くの大学などがキャリア教育に力を入れるようになってきました。
表現方法は「就業開始」「就業中」「就業終了」
上記以外では「就業開始」「就業中」「就業終了」などが、就業を使った一般的な言い回しです。
就業の対義語
就業の対義語・反対語としては、その日の業務を終えることを意味する「終業」、職を失うことを意味する「失業」があります。
就業の類語
就業の類語・類義語としては、人を雇い入れることを意味する「雇用」、雇われて使われることを意味する「傭役」(読み方:ようえき)、ある職務についていることを意味する「在職」などがあります。
就労の意味
就労とは
就労とは、仕事を始めることを意味しています。
就労を使った言葉として、「不法就労」「就労継続支援事業」があります。
「不法就労」の意味
一つ目の「不法就労」とは、不法に入国したり、在留期間を超えて不法に残留したりするなど、正規の在留資格を持たない外国人が働くことを意味する言葉です。
15日以内の短期滞在を装ってパスポートのみで入国したり、観光目的など90日以内の短期滞在査証で入国し在留期限を過ぎても日本に留まり働く人が後を絶えず、2006年には19万人もの人が不法残留状態であり、2020年でも8万を超えています。
「就労継続支援事業」の意味
二つ目の「就労継続支援事業」とは、企業などで働くことが困難な障がい者に対して就労の機会を提供し、作業を行なってもらって知識や能力の向上を目指す事業を指す言葉です。
この事業は、雇用契約を結んで給料をもらいながら事業を利用するA型と、雇用契約は結ばずに生産する労力に対する手間賃をもらいながら事業を利用するB型に分けられています。
表現方法は「就労能力」「就労証明書」「就労制限」
「就労能力」「就労証明書」「就労制限」などが、就労を使った一般的な言い回しです。
就労の対義語
就労の対義語・反対語としては、会社などで認められた休日以外の休みを意味する「休暇」があります。
就労の類語
就労の類語・類義語としては、心身を労して仕事に励むことを意味する「勤労」、ある任務や職務につくことを意味する「就任」、任務に就くことを意味する「就役」(読み方:しゅうえき)などがあります。
就職の意味
就職とは
就職とは、職業につくことを意味しています。
就職を使った言葉として、「就職氷河期」「就職偏差値」があります。
「就職氷河期」の意味
一つ目の「就職氷河期」とは、就職を希望する人が正規雇用や正社員になることが社会的に困難になった時期を指す言葉で、大きく分けると二度の就職氷河期が来たと言われています。
一度目はバブル崩壊後1993年から2005年が、二度目はリーマンショック後の2010年から2013年が就職氷河期だと言われています。二度目に関しては一度目に比べて就職率が高いことから就職氷河期に該当しないとも言われています。
「就職偏差値」の意味
二つ目の「就職偏差値」とは、企業の入社難易度を偏差値として表したものです。50を基準に、高学歴である人たちが多く入社しており選考基準が厳しい企業には高い数値が付きますが、低いからと言って必ずしも就職できるというわけではありません。
表現方法は「就職活動」「就職する」「就職できない」
「就職活動」「就職する」「就職できない」などが、就職を使った一般的な言い回しです。
就職の対義語
就職の対義語・反対語としては、今まで就いていた職を失うことを意味する「失職」、勤めている職を辞めることを意味する「退職」があります。
就職の類語
就職の類語・類義語としては、会社に入りその社員となることを意味する「入社」、いつもその任務に就いていることを意味する「常任」、人をある職務につかせて用いることを意味する「任用」などがあります。
就業の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その日の仕事に取り掛かることや、職業につくことを意味する時などが挙げられます。
例文3の「就業手当」とは、失業した後に貰える失業保険の受取期間を一定期間以上残したまま、一時的に就業した際に受け取ることが出来る手当です。
就労の例文
この言葉がよく使われる場面としては、仕事を始めることを意味する時などが挙げられます。
例文1の「就労支援」とは、就職に必要なスキルを身に付けるだけでなく、安定して働くために必要な能力を身に付ける訓練を提供することを指します。
「就労支援」を「就職支援」としてしまうと、職業紹介など就職活動を支援することを表すため、意味が変わってきます。
就職の例文
この言葉がよく使われる場面としては、職業につくことを意味する時などが挙げられます。
どれも労働を行なうことを意味している例文ではないため、就業や就労と言った言葉に置き換えて使うことはできません。
就業と就労と就職どれを使うか迷った場合は、仕事に取り掛かっている時間を表す場合は「就業」を、仕事を始める時間を表す場合は「就労」を、職業につくことを表す場合は「就職」を使うと覚えておけば間違いありません。