似た意味を持つ「憔悴」(読み方:しょうすい)と「疲弊」(読み方:ひへい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「憔悴」と「疲弊」という言葉は、どちらも疲れて弱る様子を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
憔悴と疲弊の違い
憔悴と疲弊の意味の違い
憔悴と疲弊の違いを分かりやすく言うと、憔悴とは心身の状態を表し、疲弊とは心身だけでなく経済状態も表すという違いです。
憔悴と疲弊の使い方の違い
一つ目の憔悴を使った分かりやすい例としては、「心労で憔悴した顔になっていた」「離婚寸前で憔悴しきる」「憔悴しきった表情で帰国した」「憔悴感や不安感などの精神的症状が現れた」をなどがあります。
二つ目の疲弊を使った分かりやすい例としては、「感染症の脅威に国民が疲弊している」「医療従事者の疲弊度は極限に達している」「避難所には疲弊感が漂っていた」「戦後は疲弊した財政の再建が急務であった」などがあります。
憔悴と疲弊の使い分け方
憔悴とは、心身の疲れや病気のためにやせ衰えることを意味します。疲弊とは、心身が疲れて弱ることを意味します。どちらも疲れて弱っている様子を表しますが、疲弊にはさらに、経済状態などが悪化して活力を失うことの意味もあります。これが、憔悴と疲弊の明確な違いになります。
心身の疲れで弱っている様子を意味する場合でも、憔悴と疲弊には少しばかりニュアンスの違いがあります。憔悴はやつれることを意味し、肉が落ちからだが細くなることを表しています。一方の疲弊は、心身が疲れて弱ることを意味しますが、やつれることの意味はありません。
憔悴と疲弊の英語表記の違い
憔悴を英語にすると「haggardness」「emaciation」「being tired out」となり、例えば上記の「憔悴した顔」を英語にすると「haggard face」となります。
一方、疲弊を英語にすると「exhaustion」「fatigue」「impoverishment」となり、例えば上記の「国民が疲弊している」を英語にすると「the people are impoverished」となります。
憔悴の意味
憔悴とは
憔悴とは、心配や疲労・病気のためにやせ衰えることを意味しています。
表現方法は「憔悴した」「憔悴しきってる」「憔悴しきった」
「憔悴した」「憔悴しきってる」「憔悴しきった」などが、憔悴を使った一般的な言い回しです。
憔悴の使い方
憔悴を使った分かりやすい例としては、「憔悴しきるまで練習に励んだ」「闘病で憔悴しきった姿に驚いた」「徹夜明けで憔悴感をのぞかせた」「友人が子育てで憔悴しきっている」などがあります。
その他にも、「睡眠不足のため憔悴気味である」「ワンオペ育児で憔悴しきっていた」「残業続きで憔悴する夫を気遣う」「ご苦労がしのばれる憔悴ぶりだった」「憔悴しきった顔をこちらに向けた」などがあります。
憔悴の読み方
憔悴は「しょうすい」と読みます。「顦顇」とも書きますが、こちらの漢字はほとんど使われず「憔悴」と表記されることが一般的です。
憔悴の語源
憔悴という言葉は、心身の疲れから、やせ衰えることを意味します。「憔」も「悴」も訓読みで「やつれる」と読み、やせ衰えることを表します。憔悴は単なる疲れを表すのではなく、心労や疲労あるいは病気の疲れから、やつれてしまう様子を表した言葉です。
「悲傷憔悴」の意味
憔悴を用いた言葉には「悲傷憔悴」(読み方:ひしょうしょうすい)があり、非常に悲しんで憂いやつれることを意味します。悲しみいたむことを表す悲傷と、心労でやつれ衰えることを表す憔悴が組み合わさった四字熟語です。
憔悴の類語
憔悴の類語・類義語としては、からだなどが衰え弱ることを意味する「衰弱」、体力や気力を使い果たすことを意味する「消耗」、身心を損ねるほど働きすぎて疲れがたまることを意味する「過労」などがあります。
憔悴の悴の字を使った別の言葉としては、年老いてやつれることを意味する「老悴」、雑役に当たる身分の低い侍を意味する「悴侍」(読み方:かせざむらい)、やせた首を意味する「悴首」(読み方:かせくび)などがあります。
疲弊の意味
疲弊とは
疲弊とは、心身が疲れて弱ることを意味しています。
その他にも、経済状態などが悪化して活力をなくしてしまうことの意味も持っています。
表現方法は「心身ともに疲弊」「心が疲弊」「疲弊した」
「心身ともに疲弊」「心が疲弊」「疲弊した」などが、疲弊を使った一般的な言い回しです。
疲弊の使い方
「炎天下の活動で疲弊した様子だった」「心が疲弊している状態だ」「疲弊しきった表情を見せた」「T細胞疲弊に関する論文を読む」などの文中で使われている疲弊は、「心身が疲れて弱ること」の意味で使われています。
一方、「疲弊する地方都市の再生を考える」「商店街のほとんどは疲弊していく一方だ」「人口減少により国の経済が疲弊する」などの文中で使われている疲弊は、「経済状態などが悪化して活力をなくしてしまうこと」の意味で使われています。
疲弊という言葉は、上記の例のように二つの意味があります。心身が疲れて弱ることの意味は、日常生活で使われる馴染みのある表現でしょう。経済状態などが悪化する意味は、日常会話よりも新聞やニュースなどで見聞きすることが多い表現です。
「困窮疲弊」の意味
疲弊という言葉を用いた日本語には「困窮疲弊」があり、経済が悪化し勢いや活動が鈍くなることを意味します。ここでの疲弊は「経済状態などが悪化して活力をなくしてしまうこと」を表しています。「困窮疲弊した武士たちを中心に尊王攘夷の気運が高まった」などと使います。
疲弊の類語
疲弊の類語・類義語としては、ひどくつかれて苦しむことを意味する「疲労困憊」、体力や気力を使い果たすことを意味する「消耗」、心身が疲れてだるいことを意味する「倦怠」などがあります。
疲弊の弊の字を使った別の言葉としては、破れた履物や何の価値もないもののたとえを意味する「弊履」(読み方:へいり)、他に悪い影響を与える物事を意味する「弊害」、誤解を招きやすい言い方を意味する「語弊」などがあります。
憔悴の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心配や疲労・病気のためにやせ衰えることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「憔悴しきる」とは、これ以上の憔悴は考えられないほど、すっかり憔悴している様子を意味します。例文4の「憔悴気味」とは、やせ衰えそうな傾向があることを表現する言葉です。例文5では、高熱により衰弱した様子を憔悴という言葉で表しています。
疲弊の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心身が疲れて弱ること、経済状態などが悪化して活力をなくしてしまうことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている疲弊は、心身が疲れて弱ることを意味します。例文2にある「疲弊期」とは、ストレスに対する状態により区切られた期間のひとつです。ストレスに対して頑張っている期間を抵抗期、抵抗期が長引き心身ともに疲れ切ってしまう時期を疲弊期と言います。
例文3にある「疲弊感」とは、疲れによって弱り勢いが衰えた感じを表す言葉です。例文5で使われている疲弊は、経済状態などが悪化して活力をなくしてしまうことを意味します。
憔悴と疲弊という言葉は、どちらも疲れて弱る様子を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、心身の疲労によりやせ衰えることを表現したい時は「憔悴」を、心身が疲れて弱ること、経済状態などが悪化して活力を失うことを表現したい時は「疲弊」を使うようにしましょう。