似た意味を持つ「思慕」(読み方:しぼ)と「恋慕」(読み方:れんぼ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「思慕」と「恋慕」という言葉は、どちらも慕う気持ちを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
思慕と恋慕の違い
思慕と恋慕の意味の違い
思慕と恋慕の違いを分かりやすく言うと、思慕とは恋愛感情だけでなく慕う気持ち全般を表し、恋慕とは恋愛感情のみを表すという違いです。
思慕と恋慕の使い方の違い
一つ目の思慕を使った分かりやすい例としては、「先生にひそかな思慕を抱いていた」「思慕の念が完全に消え果てた」「少年時代の淡い思慕の情がよみがえる」「ふるさとへの思慕の思いがある」などがあります。
二つ目の恋慕を使った分かりやすい例としては、「二人は互いに深く恋慕した過去がある」「彼女の魅力に多くの男が恋慕する」「まだ恋慕の情を抱いたことがない」「恋慕のあまり勉強に手が付かない」などがあります。
思慕と恋慕という言葉に共通する「慕」は、思いをよせることや、慕うことを表します。思慕は、思いしたうことや恋しく思うことを意味し、異性に対する恋愛感情だけでなく、家族や友人などに対しても慕う気持ちも表します。恋慕は、特定の異性を恋い慕うことを意味し、恋愛感情のみを表す言葉です。
「思慕を抱く」と「恋慕を抱く」の違い
上記の例の「先生に思慕を抱く」とは、先生に恋愛感情を抱くこと、あるいは、先生に好感を持ち親しくなりたい気持ちを表します。これが「先生に恋慕を抱く」になると、先生に恋愛感情を抱くことのみを表します。
また、「ふるさとへの思慕の思い」とは、ふるさとに対して心がひかれ懐かしく思う気持ちを表すので、思慕を恋慕に置き換えることはできません。
思慕と恋慕の使い分け方
思慕は慕う気持ち全般を表し、異性以外の家族や友人、郷土などへの愛も表します。恋慕は恋い慕う気持ちを表し、異性への恋愛感情のみを表します。思慕と恋慕を比べると、思慕のほうが広い意味で使われ、表す対象が幅広い言葉と言えます。
思慕と恋慕の英語表記の違い
思慕を英語にすると「longing」「affection」「yearning」となり、例えば上記の「ひそかな思慕」を英語にすると「secret affection」となります。
一方、恋慕を英語にすると「love」「attachment」「tender emotions」となり、例えば上記の「深く恋慕する」を英語にすると「fall deeply in love」となります。
思慕の意味
思慕とは
思慕とは、思いしたうこと、恋しく思うことを意味しています。
表現方法は「思慕が募る」「思慕の念」「思慕の情」
「思慕が募る」「思慕の念」「思慕の情」「思慕を寄せる」などが、思慕を使った一般的な言い回しです。
思慕の使い方
思慕を使った分かりやすい例としては、「命日には亡き父を思慕する」「手紙には思慕の情が書きつらねてあった」「遠くに住む家族を思慕する」「故郷と過去への思慕の情をつづった詩だ」「故郷への思慕の念がある」などがあります。
その他にも、「光源氏は義母に思慕を寄せていた」「親友の妻に密かな思慕の念を抱く」「男女間の思慕の情を描いた映画だ」「叶わぬ恋なのに思慕が募る一方だ」「後輩から思慕される」などがあります。
思慕という言葉は、思い慕う気持ちや恋しく思う気持ちを意味します。恋愛だけでなく、家族愛や友愛など、誰かを慕う気持ちを表します。さらには上記の例の「故郷と過去への思慕」のように、時空に対しても、心がひかれ慕う気持ちや懐かしい気持ちを表す言葉です。
思慕を用いた言葉には「恩愛思慕して憂念結縛す」があります。これは浄土真宗の言葉であり、自分の愛した相手に思慕し、それが失われて行った場合には、今度は哀しみ憂いの念が結び縛ることを意味します。想いの儚さや虚しさを表した言葉です。
思慕の類語
思慕の類語・類義語としては、慕わしく思う気持ちや異性を恋い慕う気持ちを意味する「慕情」、心引かれて思いをめぐらすことを意味する「偲ぶ」、恋しく思うことや懐かしく思うことを意味する「慕う」などがあります。
思慕の思の字を使った別の言葉としては、論理的に筋道を立てて考えることを意味する「思索」、注意深く心を働かせて考えることを意味する「思慮」、心の中で思っている事柄を意味する「所思」などがあります。
恋慕の意味
恋慕とは
恋慕とは、特定の異性を恋い慕うことを意味しています。
表現方法は「恋慕する」「恋慕の情」「恋慕を寄せる」
「恋慕する」「恋慕の情」「恋慕を寄せる」などが、恋慕を使った一般的な言い回しです。
恋慕の使い方
恋慕を使った分かりやすい例としては、「先生に恋慕の情を抱いている」「この恋慕の思いは誰にも言えない」「彼女にひそかな恋慕を寄せる」「恋慕が消え失せることはなかった」「彼への恋慕は募る一方だ」などがあります。
その他にも、「彼は恋慕の闇状態になっている」「横恋慕する人を軽蔑する」「報われない片恋慕だと分かっている」「恋慕の情をテーマにした歌だ」「男女間の恋慕に理由はない」「この気持ちは恋慕なのだろうか」などがあります。
「横恋慕」「片恋慕」の意味
恋慕という言葉の「恋」は、特定の人に強くひかれることや、切ないまでに思いを寄せることを表します。恋慕は特定の異性を恋い慕うことを意味し、恋愛感情を表します。「横恋慕」は他人の配偶者や恋人に横合いから思いを寄せること、「片恋慕」は一方的に恋い慕う片思いのことです。
「恋慕の闇」の意味
恋慕という言葉を用いた日本語には「恋慕の闇」があり、恋慕の情により理性や常識を失ってしまうということを意味します。恋をすると相手のことしか見えなくなり、正しい判断ができなくなることを闇にたとえた言葉です。同じ意味の言葉に「恋は盲目」があります。
恋慕の類語
恋慕の類語・類義語としては、異性を恋い慕う気持ちを意味する「恋情」、恋しいと思う心を意味する「恋心」、愛して懐かしみ慕うことを意味する「愛慕」などがあります。
恋慕の恋の字を使った別の言葉としては、深く恋い慕うことを意味する「恋着」、恋い慕って思いきれないさまを意味する「恋恋」、恋する思いが相手に通じないことを意味する「失恋」などがあります。
思慕の例文
この言葉がよく使われる場面としては、思いしたうこと、恋しく思うことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、思慕という言葉は、家族への愛、異性への恋愛感情、過去の日々や郷土への懐かしさなど、慕う気持ちを幅広く表します。例文1にある「思慕の情」とは、人を大事に思う気持ちや感情を意味します。例文3の「思慕が募る」とは、恋しい気持ちが激しくなることを意味します。
恋慕の例文
この言葉がよく使われる場面としては、特定の異性を恋い慕うことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「恋慕の情」とは恋愛感情を意味し、恋愛感情を持つことを「恋慕の情を抱く」と表現しています。例文4にある「恋慕渇仰(れんぼかつごう)」とは日蓮宗の言葉で、日蓮上人をあこがれ慕う気持ちで信仰することを意味する言葉です。
思慕と恋慕という言葉は、慕う気持ちや恋しく思う気持ちを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、恋愛感情だけでなく慕う気持ち全般を表現したい時は「思慕」を、恋愛感情のみを表現したい時は「恋慕」を使うようにしましょう。