似た意味を持つ「妥協」(読み方:だきょう)と「譲歩」(読み方:じょうほ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「妥協」と「譲歩」という言葉は、どちらも対立を収めるために考えを曲げることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
妥協と譲歩の違い
妥協と譲歩の意味の違い
妥協と譲歩の違いを分かりやすく言うと、妥協とは互いに納得できる一致点で解決すること、譲歩とは自分の意見を押さえて相手にゆずることという違いです。
妥協と譲歩の使い方の違い
一つ目の妥協を使った分かりやすい例としては、「与党は妥協案を提示した」「お互い納得できる妥協点を見つける」「妥協でお付き合いするのは失礼だろう」「絶対に妥協してはいけないことがある」などがあります。
二つ目の譲歩を使った分かりやすい例としては、「政府は譲歩案を提示する考えを示した」「先方の譲歩を促す文書を送る」「互いに相手の譲歩を求める姿勢だ」「彼女に譲歩してばかりでストレスがたまる」などがあります。
妥協と譲歩の使い分け方
妥協と譲歩という言葉は、どちらも対立を収めるために主張を曲げることを意味し、似た表現をする言葉ですが、本来の意味は異なるので注意が必要です。妥協は、対立した主張について双方が譲り合って解決することを意味します。譲歩は、自分の主張を押さえて相手の意向に従うことを意味します。
例えば、父親がカレーライスが食べたくて子供がハヤシライスが食べたい場合、父親が子供の意見を尊重してハヤシライスにした時は、父親は譲歩したことになります。また、どちらも材料がないことが分かり、納得したうえで全く違うメニューになった時はお互い妥協したことになります。
つまり、譲歩は自分の意見を曲げて相手にゆずるという意味合いが強く、妥協は双方が納得できる一致点で解決するという意味合いが強い言葉なのです。
妥協と譲歩の英語表記の違い
妥協も譲歩も英語にすると「compromise」となり、例えば上記の「妥協案」を英語にすると「compromise plan」となります。
妥協の意味
妥協とは
妥協とは、対立した事柄について、双方が譲り合って一致点を見いだし、おだやかに解決することを意味しています。
表現方法は「妥協する」「妥協しない」「妥協した」
「妥協する」「妥協しない」「妥協した」などが、妥協を使った一般的な言い回しです。
妥協の使い方
妥協を使った分かりやすい例としては、「現状打開には妥協点を見つけることだ」「妥協したことを後悔している」「思えば妥協ばかりの人生だった」「市場調査により妥協価格を導き出します」「医薬品ごとに妥協率が異なる」などがあります。
その他にも、「目標達成のために妥協せずに取り組む」「妥協しない生き方をモットーとしている」「妥協することなく適応していく」「交渉には妥協の余地がない」「妥協点を探り早期解決をめざす」などがあります。
妥協という言葉は、日常生活からビジネスシーンまであらゆる場面で使われており、対立していた事柄について、双方が譲り合って意見をまとめることを意味します。「妥」は、おだやかに落ち着くことや、事がおさまることを表し、「協」は調子を合わせることを表します。
また、妥協という言葉は本来の意味とは異なりますが、一般に、不本意ながら妥当な線を見い出す、という意味でも使われいます。上記の例の「妥協ばかりの人生」「妥協せずに取り組む」の妥当は、この意味で使われています。
「妥協価格」の意味
妥協を用いた日本語には「妥協価格」というマーケティング用語があります。消費者が製品やサービスについて、この価格なら支払っても仕方がないとする価格のことであり、価格に対するアンケート調査結果から導き出されます。
妥協の類語
妥協の類語・類義語としては、折り合うことや譲り合って解決することを意味する「折合い」、意見や主張の違う双方が互いに譲り合うことを意味する「歩み寄り」、相手の強さ・勢いに負けて従うことを意味する「屈服」などがあります。
妥協の妥の字を使った別の言葉としては、利害の対立する二者が同意に達して約束を結ぶに至ることを意味する「妥結」、実情によくあてはまっていることや適切であることを意味する「妥当」などがあります。
譲歩の意味
譲歩とは
譲歩とは、自分の意見や主張を押さえて相手の意向に従ったり妥協したりすることを意味しています。
表現方法は「譲歩する」「譲歩してもらう」「譲歩いただき」
「譲歩する」「譲歩してもらう」「譲歩いただき」などが、譲歩を使った一般的な言い回しです。
譲歩の使い方
譲歩を使った分かりやすい例としては、「交渉相手に譲歩を求める」「雇用側の譲歩案に労働組案が注目している」「仕方なく主張を譲歩した」「部長は譲歩しない方針だ」「譲歩構文をマスターしたい」などがあります。
その他にも、「こちら側が折れる形で譲歩した」「譲歩的要請法は営業テクニックの基本だ」「行き先は彼が譲歩して私が行きたい場所になった」「相手はこれ以上譲歩しないだろう」「再交渉や譲歩はしない考えだ」などがあります。
譲歩という言葉は、他の人に道を譲ることの意味から生まれた言葉であり、自分の考えや主義の一部または全部をまげて他の意見に従うことを意味します。譲歩の「譲」はゆずること、ゆずり与えることを表し、「歩」はあゆみや、物事のなりゆきを表します。
「譲歩的要請法」の意味
譲歩を用いた日本語には「譲歩的要請法」があります。交渉におけるテクニックであり、相手の承諾を得たいときに最初に大きな要請をして、相手に拒否させてから小さな要請し、本来の要求を通す承諾誘導の手法です。ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックとも言わています。
譲歩の類語
譲歩の類語・類義語としては、異なった考え方をとり合わせて一つにまとめ上げることを意味する「折衷」、互いに譲り合うことを意味する「互譲」、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うことを意味する「協調」などがあります。
譲歩の譲の字を使った別の言葉としては、法律上の地位などを他人にゆずりわたすことを意味する「譲渡」、一部分を分けて譲ることを意味する「分譲」、権限などを他の人や機関に譲って任せることを意味する「委譲」などがあります。
妥協の例文
この言葉がよく使われる場面としては、を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「妥協点」とは、お互いの主張・条件などの折り合いがつくところであり、妥協によって両者が一致する点を意味します。例文5にある「妥協の余地がない」とは、妥協するつもりは全くないことを意味する表現です。
譲歩の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の主張の一部または全部をまげて、相手の意見と折り合いをつけることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「譲歩構文」とは、「なるほど~だが、しかし・・・」のように、一般論や反論したい考えをいったん認めてから、自分が主張したい事を後にもってくるという表現方法のことです。英語の譲歩構文には「Certainly ~, but …」「It is true (that) ~, but …」などがあります。
妥協と譲歩という言葉は、どちらも対立を収めるために自分の考えを曲げることを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、互いに納得できる一致点で解決することを表現したい時は「妥協」を、自分の意見を押さえて相手にゆずることを表現したい時は「譲歩」を使うようにしましょう。