似た意味を持つ「無論」(読み方:むろん)と「勿論」(読み方:もちろん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「無論」と「勿論」という言葉は、どちらも「言うまでもなく自明であること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
無論と勿論の違い
無論と勿論の意味の違い
無論と勿論の違いを分かりやすく言うと、無論とは文語的表現であり、勿論とは口語的表現であるという違いです。
無論と勿論の使い方の違い
一つ目の無論を使った分かりやすい例としては、「無論きみの知っていることだ」「無論おっしゃる通りです」「無論知るよしもなかった」「無論、私もその提案に賛成だ」「暴力は無論、暴言も許さない」などがあります。
二つ目の勿論を使った分かりやすい例としては、「勿論今夜の飲み会に参加するよ」「勿論すぐさま失礼をお詫びしたわ」「人を指で指すのは勿論失礼だろう」「デザインは勿論、性能も素晴らしい」などがあります。
無論と勿論の使い分け方
無論と勿論という言葉は、どちらも論ずるまでもなく明らかなさまを意味する同義語です。この二つの言葉の使い分けは曖昧ですが、あえて違いを言うならば、無論は文語的表現であり文章や改まった場面で使われ、勿論は口語的表現であり日常会話でも改まった場面でも使われています。
日常会話で無論という言葉を使うと、固くて不自然な印象を受けるので、話し言葉では勿論を使う方が良いでしょう。無論と勿論という言葉を比べると、勿論の方が幅広く使える言葉だと言えます。
無論と勿論の英語表記の違い
無論も勿論も英語にすると「of course」「certainly」「without doubt」となり、例えば上記の「無論きみの知っていることだ」を英語にすると「Of course you know what」となります。
無論の意味
無論とは
無論とは、論じる必要のないほどはっきりしているさま、言うまでもなくを意味しています。
表現方法は「無論のこと」「無論だ」「無論です」
「無論のこと」「無論だ」「無論です」などが、無論を使った一般的な言い回しです。
無論の使い方
無論を使った分かりやすい例としては、「力の差は無論だが、気力の差も大きい」「和牛は無論ですが、アンガス牛も美味しいです」「無論、お金は生きていくために必要です」「無論死ぬまで添い遂げる所存です」などがあります。
その他にも、「無論、将来は海外に進出するつもりだ」「人道に反するのは無論のこと、法令をも犯している」「成功するかどうかは無論保証の限りではない」「これからの時代、英語が必要なことは無論だ」などがあります。
無論の由来
無論という言葉は漢語を由来としており、「論ずること無し」「論ずる余地がない」という意味を持ちます。無論は、とやかく論ずるまでもなく明らかなさまや、言うまでもないことを表す副詞であり、「勿論」や「言うまでもなく」と言い換えることができます。
無論の類語
無論の類語・類義語としては、普通のことやありふれていることを意味する「当たり前」、道理にかなっていることを意味する「もっとも」、言うまでもなくを意味する「言わずもがな」などがあります。
無論の無の字を使った別の言葉としては、数えきれないほど多いことを意味する「無数」、はかることができないほど多いことを意味する「無量」、行いが人の道にそむいていることを意味する「無道」などがあります。
勿論の意味
勿論とは
勿論とは、論じる必要のないほどはっきりしているさま、言うまでもなくを意味しています。
表現方法は「勿論です」「勿論のこと」「勿論解釈」
「勿論です」「勿論のこと」「勿論解釈」などが、勿論を使った一般的な言い回しです。
勿論の使い方
勿論を使った分かりやすい例としては、「このお店のケーキは勿論ですがコーヒーも美味しいです」「勉強は勿論だが、情操教育にも力を入れている」「長い付合いでは無論のこと仲良しになる」「勿論、例外もあります」などがあります。
その他にも、「行政法における勿論解釈だろう」「勿論、質問はいつでも受け付けます」「送別会には勿論出席します」「母は勿論のこと、姉も僕を監視している」「使いますか?勿論いいですよ」などがあります。
勿論の由来
勿論という言葉も漢語を由来としており、「論ずること勿れ(なかれ)」の意味を持ちます。勿論は、議論をするまでもなく、すでに結論は決まっているという気持ちを表す副詞です。
勿論は副詞なので、「勿論行くよ」のように動詞などの用言を修飾する言葉なのですが、話し言葉では「行く?」と聞かれて、単体で「勿論」と肯定の意味でも使われています。
勿論の類語
勿論の類語・類義語としては、そうなるのがあたりまえであることを意味する「当然」、初めからや言うまでもなくを意味する「元より」、わかりきっていることを意味する「自明」などがあります。
勿論の勿の字を使った別の言葉としては、 思いがけないことや不思議なことを意味する「勿怪」、外見や態度の重々しさを意味する「勿体」などがあります。
無論の例文
この言葉がよく使われる場面としては、論ずるまでもないこと、言うまでもないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3では、無論という言葉の前に述べていることについて、論じる必要のないほどはっきりしているさまを表しています。例文4や例文5では、無論という言葉の後に述べている事柄について言うまでもないことを表現しています。
勿論の例文
この言葉がよく使われる場面としては、言うまでもなく自明であることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にあるように、勿論という言葉は目上の人に対して使う場合は注意が必要です。例えば、上司から「資料の準備はしたのか?」と聞かれて「もちろん」と答えると、「言うまでもない」「聞かれるまでもない」のニュアンスがあり失礼と取られることがあります。
例文5にある「勿論解釈」とは、法令の条文には明記していないが、あまりにも当然すぎてあえて書いていないだけなのだと解釈する方法です。
無論と勿論という言葉は、どちらも言うまでもなく明らかであることを意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、日常会話で使う時は「勿論」を使うようにしましょう。文章の中や改まった場面で使う時はどちらの言葉を使っても構わないので、好みに応じて使いましょう。