似た意味を持つ「分限免職」(読み方:ぶんげんめんしょく)と「懲戒処分」(読み方:ちょうかいしょぶん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「分限免職」と「懲戒処分」という言葉は、どちらも公務員に対する処分を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
分限免職と懲戒処分の違い
分限免職と懲戒処分の意味の違い
分限免職と懲戒処分の違いを分かりやすく言うと、分限免職とは公務員を辞めさせること、懲戒処分とは公務員や会社員に制裁を与えることという違いです。
分限免職と懲戒処分の使い方の違い
一つ目の分限免職を使った分かりやすい例としては、「問題のあった警察官の分限免職を決定した」「分限免職なので退職金が支給されました」「組織改廃を理由とした分限免職でした」「高知県の職員が分限免職となった」などがあります。
二つ目の懲戒処分を使った分かりやすい例としては、「懲戒処分の対象となる経歴詐称だ」「懲戒処分の種類は七つあります」「懲戒処分の基準を公表して下さい」「懲戒処分を受けると経歴に傷が付きます」などがあります。
分限免職と懲戒処分の使い分け方
分限免職と懲戒処分という言葉は、どちらも公務員に対する処分を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
分限免職とは、職務を遂行する上で、支障があると判断された公務員を辞めさせることです。勤務実績が良くない場合や、心身の故障で職務の遂行に支障がある場合などに適用されます。公務の機能を維持することが目的のため、不祥事などによる懲戒免職と異なり退職金が支給されます。
懲戒処分とは、ある組織内において、果たすべき義務や規律に違反した者に対する制裁処分です。処分の内容には、免職、停職、減給、戒告などあります。組織の秩序と規律を維持することが目的とするものであり、公務員だけでなく、企業内の会社員に対しても用いられる言葉です。
つまり、分限免職懲戒処分という言葉の具体的な違いは三点あります。
一点目は、対象です。分限免職は公務員に対して使われる言葉ですが、懲戒処分は公務員だけでなく会社員に対しても使われます。
二点目は、内容です。分限免職は職を辞めさせることですが、懲戒処分は職を辞めさせることの他に、減給や戒告などの処分も表します。
三点目は、目的です。分限免職は職務機能の維持を目的としていますが、懲戒処分は違反者への制裁を目的としています。
これらが、分限免職と懲戒処分という言葉の明確な違いになります。
分限免職と懲戒処分の英語表記の違い
分限免職を英語にすると「discharge without honor」「undesirable discharge」となり、例えば上記の「分限免職を決定した」を英語にすると「decide to give undesirable discharge」となります。
一方、懲戒処分を英語にすると「disciplinary action」「disciplinary penalties」となり、例えば上記の「懲戒処分の対象となる」を英語にすると「be subject to disciplinary action」となります。
分限免職の意味
分限免職とは
分限免職とは、公務員について、職務遂行上、支障がある職員を免職することを意味しています。
分限免職の使い方
分限免職を使った分かりやすい例としては、「分限免職の場合は退職手当を支給します」「分限免職と懲戒免職では再就職率に違いがある」「自衛隊員の分限免職は毎年出ます」「国家公務員法に基づき分限免職とします」などがあります。
その他にも、「分限免職処分とし退職金約1千万円を支給した」「分限免職の事例を公表して欲しい」「問題のある教員を分限免職としました」「分限免職の取消請求に関する判例を集めています」などがあります。
分限免職は公務員に課される処分
分限免職という言葉の「分限」とは、 公務員の身分に関する基本的規律のことであり、「免職」とは、職をやめさせることです。分限免職とは、公務員に課される処分の一つであり、能力不足や心身の故障などから、その職務を遂行する上で支障がある職員を辞めさせることを意味する言葉です。
分限免職は退職金が支給される
分限免職は、個人の責任は問わずに身分を失わせることで、公務全体の機能を維持することが目的のために行われ、退職金が支給されます。これに対して、公務員の非行に対する制裁として身分を失わせる「懲戒免職」の場合、退職金は支給されません。
分限免職の対義語
分限免職の対義語・反対語としては、本人の願い出を理由として公務員の職を解くことを意味する「依願免職」、自ら望んで退職するこを意味する「希望退職」などがあります。
分限免職の類語
分限免職の類語・類義語としては、公務員や会社員などが身分を保証されたまま一定期間職務を休むことを意味する「休職」、官職をやめさせることを意味する「免官」、その職を辞めさせることを意味する「解職」、職務をやめさせることを意味する「罷免」などがあります。
懲戒処分の意味
懲戒処分とは
懲戒処分とは、懲戒のためになされる行政処分、公務員などが服務上の義務に違反した場合に行うものを意味しています。
表現方法は「懲戒処分を科す」「懲戒処分を受ける」「懲戒処分になる」
「懲戒処分を科す」「懲戒処分を受ける」「懲戒処分になる」などが、懲戒処分を使った一般的な言い回しです。
懲戒処分の使い方
懲戒処分を使った分かりやすい例としては、「国家公務員法の規定に基づく懲戒処分です」「教職員の懲戒処分の基準を改正しました」「別紙の通り懲戒処分の指針を作成しました」「懲戒処分の種類はいくつありますか」などがあります。
その他にも、「懲戒処分を受けるとどうなりますか」「懲戒処分の場合に退職金はもらえますか」「転職先には懲戒処分歴を隠している」「教職員の懲戒処分の指針を制定する」「懲戒処分通知書を作成する」などがあります。
懲戒処分という言葉の「懲戒」とは、不正や不当な行為に対して制裁を加えること、「処分」とは、規則を破った者に罰を加えることを意味します。懲戒処分とは、果たすべき義務や規律に違反した者に対する制裁処分を意味する言葉です。懲戒免職、停職、減給、戒告などがこれにあたります。
懲戒処分は公務員や会社員に課される処分
懲戒処分とは、懲戒のためになされる行政処分を指すものであり、公務員に対して多く使われる言葉です。また、組織内における秩序維持のために科せられる制裁という広義的な意味で、一般企業内においても使われています。
懲戒処分の類語
懲戒処分の類語・類義語としては、職員としての身分を保有させながら一定期間職務に就かせないことを意味する「停職」、本人に将来を戒める旨の申し渡しをすることを意味する「戒告」、職務上の義務違反について警告し、将来を戒めることを意味する「譴責」などがあります。
分限免職の例文
この言葉がよく使われる場面としては、公務員について、職務遂行する上で支障がある職員を免職することを表現したい時などが挙げられます。
例文4や例文5にあるように、分限免職になる理由としては、具体的には体調不良や、心身の故障で職務の遂行に支障がある場合が多くあります。また、勤務実績が良くない場合や、組織の改廃や予算不足により定員を維持できないことによる免職も考えられます。
懲戒処分の例文
この言葉がよく使われる場面としては、職員として果たすべき義務や規律に違反した者に対する制裁処分を表現したい時などが挙げられます。
例文4で懲戒処分と対比されている「分限処分」とは、勤務実績が良くない場合や心身の故障で職務の遂行に支障がある場合に、公務能率の確保という観点から行われる処分のことです。分限処分と懲戒処分の違いは、公務能率を目的とするものか、規律違反に対する制裁を目的とするものかです。
分限免職と懲戒処分という言葉は、どちらも公務員に対する処分を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、公務員を辞めさせることを表現したい時は「分限免職」を、公務員や会社員に制裁を与えることを表現したい時は「懲戒処分」を使うようにしましょう。