【能弁】と【雄弁】と【訥弁】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「能弁」(読み方:のうべん)と「雄弁」(読み方:ゆうべん)と「訥弁」(読み方:とつべん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「能弁」と「雄弁」と「訥弁」という言葉は、話をする時の様子を表すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




能弁と雄弁と訥弁の違い

能弁と雄弁と訥弁の意味の違い

能弁と雄弁と訥弁の違いを分かりやすく言うと、能弁は物の言い方が上手なことを表現する時に使い、雄弁は説得力がある話し方をすることを表現する時に使い、訥弁は話し方が滑らかではないことを表現する時に使うという違いです。

能弁と雄弁と訥弁の使い方の違い

能弁という言葉は、「他人が話していても押しのけて話をするほど彼女は能弁だ」「彼は能弁家として知られている」などの使い方で、話が上手くてよく話すことを意味します。

雄弁という言葉は、「資料に記載されている数字が雄弁に語っている」「雄弁家である政治家の演説が駅前で行われている」などの使い方で、話に説得力があることを意味します。

訥弁という言葉は、「自身の訥弁さを他人に笑われることもある」「訥弁な友人は直したいと感じているようだ」などの使い方で、話し方が滑らかではないことを意味します。

能弁と雄弁と訥弁の使い分け方

能弁と雄弁は、どちらも話し方が上手いことを意味する言葉ですが、前者は物の言い方や話し方が上手い様子を表し、後者は話し方に説得力がある様子を表す言葉です。

ただし、能弁は雄弁と異なり、よく話すことや口数が多いことも意味します。

一方、訥弁は上手く話すことができない様子を表すため、能弁と雄弁の対義語・反対語に当たる言葉です。

これが、能弁、雄弁、訥弁の明確な違いです。

能弁の意味

能弁とは

能弁とは、話が上手くてよく話すことを意味しています。

表現方法は「能弁を垂れる」「能弁家」「能弁の罠」

「能弁を垂れる」「能弁家」「能弁の罠」などが、能弁を使った一般的な言い回しです。

四字熟語「多才能弁」の意味

能弁を使った言葉として、「多才能弁」があります。これは、様々な才能があり、話し上手なことを意味する四字熟語です。

似たような四字熟語に「博学多才」がありますが、こちらは多くの分野の才能に恵まれることを意味しますが、とりわけ話し方が上手いことを意味するわけではありません。

能弁の対義語

能弁の対義語・反対語としては、口数が少ないことを意味する「寡黙」があります。

能弁の類語

能弁の類語・類義語としては、技芸や学問などに優れている様子を意味する「堪能」、すらすらとものを言うことを意味する「口軽」(読み方:くちがる)、言葉数が多いことを意味する「多弁」、やたらにしゃべることを意味する「饒舌」などがあります。

雄弁の意味

雄弁とは

雄弁とは、説得力を持って力強く話すことを意味しています。

表現方法は「雄弁に語る」「雄弁を振るう」「雄弁な人」

「雄弁に語る」「雄弁を振るう」「雄弁な人」などが、雄弁を使った一般的な言い回しです。

雄弁を使った言葉として、「沈黙は金雄弁は銀」「高談雄弁」があります。

「沈黙は金雄弁は銀」の意味

一つ目の「沈黙は金雄弁は銀」とは、沈黙を守るほうが優れた弁舌よりも勝ることを例えた西洋のことわざで、「Speech is silver, silence is golden.」と記されるため、元は「雄弁は銀沈黙は金」という順でした。

四字熟語「高談雄弁」の意味

二つ目の「高談雄弁」とは、盛んに議論することや、辺り構わずに存分に話すことを意味する四字熟語です。

唐の時代の中国で活躍した詩人である杜甫(読み方:とほ)が、酒豪8人を選んで謳った『飲中八仙歌』(読み方:いんちゅうはっせんか)で使われたのが由来となった言葉です。

雄弁の対義語

雄弁の対義語・反対語としては、黙り込むことや口を利かないことを意味する「沈黙」があります。

雄弁の類語

雄弁の類語・類義語としては、言葉が滑らかに出てよどみないことを意味する「流暢」、巧みに話す能力を意味する「弁才」、聞いていて気持ちの良い話しぶりを意味する「快弁」、よどみなくすらすらと話すことを意味する「達弁」などがあります。

訥弁の意味

訥弁とは

訥弁とは、なめらかではなく、詰まりながら話すことを意味しています。

訥弁の訥という字は「内」に似たつくりになっていますが、厳密には「人」ではなく「入」と書くのが一般的です。「人」と書くことも間違いではありませんが、それによって読み方が「うち」などに変化することはなく、「とつ」と読みます。

「大弁は訥なるが若し」の意味

訥弁の意味を含んだ言葉として、「大弁は訥なるが若し」があります。これは、優れた弁舌家は余計なことを言わないため、むしろ口下手のように思われることを表す言葉です。

『老子』で使われた表現で、本来の四字熟語である「大辯若訥」を訓読みしたものが「大弁は訥なるが若し」に当たります。

訥弁の対義語

訥弁の対義語・反対語としては、よどみなくすらすらと話すことを意味する「達弁」があります。

訥弁の類語

訥弁の類語・類義語としては、話すことが不得意で思うことを上手く人に言えないことを意味する「口下手」、ゆっくりと話すことを意味する「口重」(読み方:くちおも)、口ごもりながら話す様子を意味する「訥々」(読み方:とつとつ)などがあります。

能弁の例文

1.能弁にまくし立てた彼女に圧倒されて何も言葉が出なかったので、少し時間が欲しいことを伝えた。
2.子どもの能弁さにしばらく耳を傾けていたが、なかなか終わりが見えず中断させてしまった。
3.彼にとって興味がある分野だったのか突然能弁になり、落ち着いた彼は一息ついたあと恥ずかしがっていた。
4.妻はわたしを説得しようとますます能弁になってまくし立ててきたものだから、ついには根負けして折れてしまったのだった。
5.インド人のつたない英語であることを恥じることもなく能弁に語りかけてくる姿を見て、わたしは今までの考えを改めるきっかけとなった。
6.君のような能弁を垂れているだけで何もしないのであれば、わたしの部下としては失格なので、今日限りで君はほかの部署に異動してもらうことにする。

この言葉がよく使われる場面としては、話が上手いことを意味する時などが挙げられます。

また、よく話して口数が多いことも意味するため、雄弁に置き換えて使うことはできない場合も多くあります。

雄弁の例文

1.その絵画は当時の歴史的な背景を雄弁に物語っていることから、教材の多くに掲載されている。
2.彼は非常に緊張していたようだが、先のプレゼンにて雄弁を振るっていた。
3.雄弁家と呼ばれるような政治家は古代ギリシア時代から存在していた。
4.日本社会では「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉が好まれるが、この男だけに関してはその格言は通用しないのであろうな。
5.大学の講義はいつになく熱を帯びて、それを気をよくした教授がさらに雄弁に語るものだから、授業時間を大幅にオーバーしてしまった。
6.あのピアニストの演奏は他の演奏者とちがって、情緒的というよりも雄弁に物語を語っているような、そんな錯覚に陥るほどであった。

この言葉がよく使われる場面としては、説得力を持って力強く話すことを意味する時などが挙げられます。

例文1の「雄弁に物語る」とは、ある状況や気持ちなどをはっきりと示すことを意味する慣用表現です。

例文2の「振るう」には思う存分発揮するという意味があります。そのため、「雄弁を振るう」は、雄弁さを発揮して堂々と力強く話すことを意味する言葉となります。

訥弁の例文

1.彼女は訥弁ではあるものの、彼女の生み出す文章は非常に綺麗な表現が並んでいる。
2.その少年は訥弁ながらも懸命に話を続けてくれたため、目線を合わせて零される言葉をゆっくりと待った。
3.訥弁であったとしても実際に行動に起こすことが出来る人は評価されるべきだと思っている。
4.男が文豪になったのは学生のころから訥弁であったので、表に出ない仕事がいいとして、もともと優れていた文才を生かしたということなのだ。
5.男は極度のあがり症であったがため、意中の人とデートでの会話も訥弁であったが、それがなんとも美しく思えたのだ。
6.地方訛りの強い訥弁はどこか滑稽な感じもあったが、それがかえって裏表のない素直な性格であることが感じられる。

この言葉がよく使われる場面としては、なめらかではなく、詰まりながら話すことを意味する時などが挙げられます。

能弁や雄弁とは大きく異なるため、置き換えて使うことはもちろんできません。

能弁と雄弁と訥弁どれを使うか迷った場合は、物の言い方が上手なことを表す場合は「能弁」を、説得力がある話し方をすることを表す場合は「雄弁」を、話し方が滑らかではないことを表す場合は「訥弁」を使うと覚えておけば間違いありません。

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