同じ「いったん」という読み方の「一旦」と「一端」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「一旦」と「一端」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
一旦と一端の違い
一旦と一端の意味の違い
一旦と一端の違いを分かりやすく言うと、一旦とは一時的なものを表し、一端とは部分的なものを表すという違いです。
一旦と一端の使い方の違い
一つ目の一旦を使った分かりやすい例としては、「荷物を取りに私は一旦家に帰ります」「治療を一旦やめることにした」「一旦停止の違反で点数が引かれた」「一旦作業を止めてください」「一旦持ち帰って検討します」などがあります。
二つ目の一端を使った分かりやすい例としては、「責任の一端は君にもある」「伝統文化の一端に触れる」「システム開発で事業革新の一端を担う」「感染メカニズムの一端を明らかにした」「靴紐の一端を固定する」などがあります。
一旦と一端の使い分け方
一旦と一端という言葉は、どちらも「いったん」と読み、漢数字の「一」という共通する漢字を持つ熟語ですが、意味や使い方には違いがあります。
一旦とは、一度や一時を意味します。上記の例文にある「一旦家に帰ります」とは外出中に一度自宅に帰ることを表し、「一旦停止」とは動いていたものが一時的に止まることを表します。
一端とは、一方の先端や一部分を意味します。上記の例文にある「靴紐の一端」とは、細長い靴紐の二つある先端のうちの片方の先端を表し、「責任の一端」とは全体の責任の一部分を表します。
つまり、一旦は物事の途中の一時的なものを表し、一端は物事の一部分を表す言葉なのです。
一旦と一端の英語表記の違い
一旦を英語にすると「for the moment」「once」となり、例えば上記の「私は一旦家に帰ります」を英語にすると「I will go home once」となります。一方、一端を英語にすると「one end」「portion」「part」となり、例えば上記の「責任の一旦」を英語にすると「portion of the blame」となります。
一旦の意味
一旦とは
一旦とは、一度、ひとたびを意味しています。
その他にも、しばらくの間、一時の意味も持っています。
表現方法は「一旦帰宅」「一旦停止」「一旦保留」
「一旦帰宅」「一旦停止」「一旦保留」などが、一旦を使った一般的な言い回しです。
一旦の使い方
「一旦帰宅して洗濯物を取り込む」「一旦停止せずに罰金を払うことになった」「一旦ゴメンと謝ってみたら」「仕事を一旦引き受けたら最後まで責任を持つ」「一旦緩急あれば直ぐに対処する」などの文中で使われている一旦は、「一度」の意味で使われています。
一方、「雨は一旦やんだが降り始めた」「一旦保留させてください」「新卒採用の受付を一旦休止しております」「イベントは一旦中止することになった」などの文中で使われている一旦は、「しばらくの間」の意味で使われています。
一旦とは、上記の例文にあるように複数の意味があります。一連の活動や、継続的に何かが行われているなかで、今までの流れを区切る時に使われる言葉です。物事が完全に終わることは表さず、また再開する可能性がある場合に用いられています。
「一旦、社に持ち帰って検討」などビジネスシーンで使われる
一旦という言葉は、敬語表現ではありませんが、ビジネスシーンでも多用されています。「一旦、社に持ち帰って検討させて頂きます」「この件は一旦ペンディングにしましょう」など、継続する交渉や業務のなかで動きを区切りたい場面などで使われています。
「一旦緩急あれば」の意味
上記の例文にある「一旦緩急あれば」とは、中国史の「史記」に出てくる表現です。「ひとたび大事が起これば」を意味し、国家に関わる大事件を控えたときに用いられる言い回しです。
「問うは一旦の恥、問わぬは末代の恥」の意味
一旦を用いたことわざには「問うは一旦の恥、問わぬは末代の恥」があります。知らないことを聞くことは、そのとき恥ずかしい思いをするが、聞かないで知らないままに過ごせば、一生恥ずかしい思いをし続けることを表します。
一旦の類語
一旦の類語・類義語としては、ひとたびや一度を意味する「一回」、一回や一度を意味する「一遍」、その時点で一応の区切りをつけるさまを意味する「一先ず」、今しばらくの間を意味する「差当り」などがあります。
一端の意味
一端とは
一端とは、一方のはし、片はしを意味しています。
その他にも、一部分の意味も持っています。
表現方法は「ほんの一端」「一端を垣間見る」「責任の一端」
「ほんの一端」「一端を垣間見る」「責任の一端」などが、一端を使った一般的な言い回しです。
一端の使い方
「糸の一端が絡まっている」「ベルトの一端に金具を付けます」「ひもの一端を切る」「ひもとコードの一端を繋げます」などの文中で使われている一端は、「一方のはし、片はし」の意味で使われています。
一方、「地域医療の一端を担う診療所です」「歴史の一端に触れる物語です」「祖父の人生の一端を垣間見る」「成功の一端を解き明かす」などの文中で使われている一端は、「一部分」の意味で使われています。
一端の読み方
一端の読み方には「いったん」「いっぱし」「ひとはし」「いちはな」の4通りあります。それぞれの読み方によって意味が異なるため、読み方を区別する必要があります。
一端という言葉の「端」は、中心からいちばん離れた部分や全体の中の一部分を表します。一端を「いったん」と読む場合は、上記の例文にあるように二つの意味があり、「物の一方のはし」と「事柄の一部分」の意味があります。
「一端を担う」の意味
上記の例文にある「一端を担う」という言い回しは、ある物事について部分的に関与していることを意味します。多くは、責任や役目の一部を負っていること表す時に使われています。
一端の対義語
一端の対義語・反対語としては、両方のはしを意味する「両端」、あるひとまとまりの物事のすべての部分を意味する「全体」、ある物事のすべてを意味する「全部」、物事の全体や総体を意味する「全般」などがあります。
一端の類語
一端の類語・類義語としては、ほんの一部分や一方の端を意味する「片端」、全体の中のある部分を意味する「一部」、 全体の中の限られた一部分を意味する「局部」、全体から切り取られた一部分を意味する「一片」などがあります。
一旦の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ひとたび、しばらくの間を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にの文中にある一旦は、「ひとたび、一度」の意味で使われています。例文3から例文5の文中にある一旦は、「しばらくの間、一時」の意味で使われています。
一端の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物の一方の端、事柄の一部分を表現したい時などが挙げられます。
例文1の文中にある一端は、「物の一方の端」の意味で使われています。一端には複数の読み方がありますが、「シーソーの一端」の読み方は「いったん」です。例文2から例文5の文中にある一端は、「事柄の一部分」の意味で使われています。
一旦と一端という言葉は、どちらも「いったん」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、一時的なものを表現したい時は「一旦」を、部分的なものを表現したい時は「一端」を使うようにしましょう。