似た意味を持つ「態々」(読み方:わざわざ)と「業々」(読み方:ぎょうぎょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「態々」と「業々」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
態々と業々の違い
態々と業々の意味の違い
態々と業々の違いを分かりやすく言うと、態々とは「わざわざ」と読み、業々とは「ぎょうぎょう」と読むという違いです。
態々と業々の使い方の違い
一つ目の態々を使った分かりやすい例としては、「態々ここまで来るのは大変だったでしょう」「態々ありがとうございます」「態々遠回りして家に帰る」「彼は報告書に態々誰も読めないような英語を書く」などがあります。
二つ目の業々を使った分かりやすい例としては、「検査結果を業々として待つ」「リーダーは兢々業々と事に当たる人です」「業々しい態度をやめて毅然と対応する」「業業たる国際交流を目指します」などがあります。
態々と業々の使い分け方
日常会話でよく使われる「わざわざ」という言葉は、漢字で「態々」と書きます。誤って「業々」と書かれる場合がありますが、「業々」は「ぎょうぎょう」と読み、「わざわざ」とは読みません。「態」も「業」も訓読みで「わざ」と読みますが、重ねて表記した場合の読み方は異なります。
態々は「わざわざ」と読み、意図して行うさまを表します。一方、業々は「ぎょうぎょう」と読み、恐れるさまや盛んなさまを表します。このように、二つの言葉は読み方も意味も全く異なる言葉なのです。
なお、態々は読めない人が多いので、「わざわざ」と平仮名表記にしておく方が無難でしょう。
態々と業々の英語表記の違い
態々を英語にすると「expressly」「intentionally」「all the way」となり、例えば上記の「態々ここまで来る」を英語にすると「come all the way here」となります。
一方、業々を英語にすると「trembling」「nervously」「splendid」となり、例えば上記の「業々として待つ」を英語にすると「wait in trembling hope」となります。
態々の意味
態々とは
態々とは、他のことのついでではなく、特にそのためだけに行うさまを意味しています。
その他にも、「しなくてもよいことを殊更するさま」の意味も持っています。
態々の使い方
「態々のご連絡ありがとうございます」「私に態々敬語を使うことないよ」「態々来てくれて嬉しいです」「態々泊まりに行く価値のあるビジネスホテルだ」などの文中で使われている態々は、「特にそのためだけに行うさま」の意味で使われています。
一方、「態々聞く必要はないだろう」「態々面接までしたのに採用されなかった」「失礼ながら態々言うのほどの話ではないと思った」「態々英語にしなくても良いでしょう」などの文中で使われている態々は、「しなくてもよいことをことさらするさま」の意味で使われています。
態々の読み方
態々の読み方は「わざわざ」です。誤って「たいたい」や「くまくま」などと読まないようにしましょう。「態」は訓読みで「たい」と読みますが、「態々」は訓読みの「わざ」を重ねて読みます。
態々の語源
態々という言葉の語源は、はっきりとした意図をもって行動することを意味する古語である「態々し」に由来するとされています。上記の例文にあるように二つの意味を持ち、どちらの意味でも使われているため文脈により意味を捉える必要があります。
態々は使い方によってプラスイメージにもマイナスイメージにもなる言葉です。目上の方との会話のなかで敬語と共に使うことがありますが、内容によっては失礼に当たるので気をつけましょう。
「態々しい」は誤用
態々を使用した誤った言い回しには「態々しい」があります。「態々しい」は誤用であり、正しい表現には「態とらしい」(読み方:わざとらしい)があります。
態々の対義語
態々の対義語・反対語としては、あることを行うときに他のことにも利用できる機会を意味する「ついで」、自分のしていることに気づいていないことを意味する「無意識」、偶然に物事が起こることを意味する「偶発」などがあります。
態々の類語
態々の類語・類義語としては、いろいろの困難を排して事をするさまを意味する「折角」、わざとすることを意味する「故意」、ある目的を持ってわざとそうするさまを意味する「意図的」、考えがあってわざとすることを意味する「殊更」などがあります。
業々の意味
業々とは
業々とは、あやぶみ恐れるさまを意味しています。
その他にも、「盛んなさま、立派なさま」の意味も持っています。
業々の使い方
「物事は兢々業々に進めるようにしている」「不安症でいつも業々しい態度になってしまう」「試験の結果を業々しく待っている」などの文中で使われている業々は、「あやぶみ恐れるさま」の意味で使われています。
一方、「訪問診療サービスは日ごとに業々となる」「業々たる舞台に拍手喝采が湧き上がりました」「この曲の業々しい歌詞が好きです」などの文中で使われている業々は、「盛んなさま、立派なさま」の意味で使われています。
業々の読み方
業々の読み方は「ぎょうぎょう」です。古語では「げふげふ」と読み、古文での「業々しい」の読み方は「ぎょうぎょうしい」であり、大袈裟であることを意味する「仰々しい」の語源になっています。ただし、現在ではこの読み方も意味でも使われていません。
四字熟語「兢々業々」の意味
業々という言葉を用いた四字熟語には「兢々業々」(読み方:きょうきょうぎょうぎょう)があります。恐れ慎んで物事を行う様子を意味し、「兢兢業業」とも書きます。「兢々」は恐怖や不安などで小刻みに震える様子、「業々」は失敗しないかと心配することを表しています。
業々の類語
業々の類語・類義語としては、あやぶみ恐れるさまを意味する「惕然」(読み方:てきぜん)、あやぶみ恐れることに表現することを意味する「危惧」、すばらしいさまや立派なさまを意味する「見事」、勢いの盛んなさまを意味する「隆々」(読み方:りゅうりゅう)などがあります。
態々の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その事のためにだけ行なうさま、しなくてもいいのに故意にするさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2の文中にある「態々」は、その事のためにだけ行なうさまの意味でプラスイメージで使われています。例文3から例文5の文中にある「態々」は、しなくてもいいのに故意にするさまの意味で使われ、マイナスイメージを伴います。
業々の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あやぶみ恐れるさま、盛んなさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2の文中にある「業々」は、危ないと思って恐れるさまの意味で、例文5にある「業々」は、勢いがあって盛んなさまの意味で使われています。例文4について、「業」は訓読みで「わざ」と読みますが、「業々」を「わざわざ」と読むことは出来ません。
態々と業々という言葉は、似ていても読み方や意味は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、「わざわざ」と読み、意図して行うことを表現したい時は「態々」を、恐れるさまや盛んなさまを表現したい時は「業々」を使うようにしましょう。