似た意味を持つ「主客転倒」(読み方:しゅかくてんとう)と「本末転倒」(読み方:ほんまつてんとう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「主客転倒」と「本末転倒」という言葉は、どちらも物事の重要度を取り違えることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
主客転倒と本末転倒の違い
主客転倒と本末転倒の意味の違い
主客転倒と本末転倒の違いを分かりやすく言うと、主客転倒とは大事にすべき物事だけでなく人に対しても使われ、本末転倒とは大事にすべき物事に対してのみ使うという違いです。
主客転倒と本末転倒の使い方の違い
一つ目の主客転倒を使った分かりやすい例としては、「あなたの話は主客転倒だと思いませんか」「スマホの使い方を孫に習って主客転倒となる」「主客転倒した制度の抜本的改革が必要です」などがあります。
二つ目の本末転倒を使った分かりやすい例としては、「本来の目的を忘れてしまっては本末転倒です」「本質を見極め本末転倒を回避する」「ワクチンで重度の後遺症が出るのは本末転倒ではないか」などがあります。
主客転倒と本末転倒の使い分け方
主客転倒と本末転倒という言葉は、どちらも物事の重要度を取り違えることを意味しますが、使い方には少し違いがあります。
主客転倒とは、大事にすべき人や物事をおろそかにすることを意味します。「主客」とは、主と客の力関係を表し、立場や順序、軽重などをあべこべに取り扱うことをいう言葉です。主に対人関係に使われる言葉です。
本末転倒とは、 根本の大切な事と末端のつまらない事とを取り違えることを意味します。物事に対する考えや、本来の目的を忘れた行動などを表す言葉であり、対人関係について使われることはありません。
主客転倒と本末転倒の英語表記の違い
主客転倒も本末転倒も英語にすると「put the cart before the horse」「misplace one’s priorities」「tail wagging the dog」となり、例えば上記の「あなたの話は主客転倒だと思いませんか」を英語にすると「Don’t you think you’re putting the cart before the horse?」となります。
主客転倒の意味
主客転倒とは
主客転倒とは、順序や立場などが逆転すること、物事の重要度を取り違えることを意味しています。
主客転倒の読み方
主客転倒の読み方は「しゅかくてんとう」です。誤って「しゅきゃくてんとう」と読まないようにしましょう。
主客転倒の使い方
主客転倒を使った分かりやすい例としては、「上司に宴会での主客転倒な振る舞いを詫びる」「自閉症の息子とは主客転倒が生じることがある」「英語の授業で帰国子女と先生が主客転倒となる」などがあります。
その他にも、「まるで主客転倒のような政策である」「しばしば主客転倒な考えに陥ってしまう」「主客転倒すると物の見え方が変わります」「新入社員の主客転倒な態度は目に余る」「後輩と主客転倒した議論となった」などがあります。
主客転倒の由来
主客転倒とは、主人と客を意味する「主客」と、逆さまになることを意味する「転倒」という二つの熟語に由来します。主と客の力関係が逆になることであり、転じて、大事にすべき人や物事を疎かにすること、立場や軽重などをあべこべに取り扱うことをいう四字熟語です。
主客転倒の対義語
主客転倒の対義語・反対語としては、方針や考え方などが始めから終わりまで変わらないで筋が通っていることを意味する「首尾一貫」、主義主張や方針を変えようとしないことを意味する「終始一貫」などがあります。
主客転倒の類語
主客転倒の類語・類義語としては、末節に心を奪われたりこだわったりして物事の根本を忘れることを意味する「釈根灌枝」、物事の根本をおろそかにして末節に心を配ることを意味する「舎本逐末」などがあります。
本末転倒の意味
本末転倒とは
本末転倒とは、物事で大切な部分と瑣末な部分を取り違えることを意味しています。
本末転倒の使い方
本末転倒を使った分かりやすい例としては、「例えば乱れた食生活でサプリメントを飲んでばかりいるのは本末転倒でしょう」「英語の勉強が出来ても話せないなら本末転倒です」「本末転倒な考えを改める」などがあります。
その他にも、「あなたの行いは本末転倒だし、それで体を壊しては元も子もないよ」「仕事で疲れて休日を楽しめないなんて本末転倒のわかりやすい例でしょう」「倒産した後に給付金が支給されるのは本末転倒だ」などがあります。
本末転倒の由来
本末転倒という言葉の由来は、鎌倉時代に仏教の宗派の本山の寺院と末寺の立場が逆転してしまったことにあります。転じて、根本的で重要なことと、ささいでつまらないことを取り違えることを意味で使われるようになりました。
本末転倒のわかりやすい例え
本末転倒の分かりやすい例を挙げると、節約しようと決意し、節約術が書いてある本を何冊か買い込んで出費がかさんでしまうことがあります。節約を意識していますが、その根本である出費を押さえるという行為がないがしろにされているので、本末転倒と言えます。
本末転倒の対義語
本末転倒の対義語・反対語としては、物事が道理にきちんとあてはまっているさまを意味する「理路整然」、頭から尾まで突き通すことを意味する「徹頭徹尾」、自分の考えや態度を絶対に変えようとしないで最後まで押し通すことを意味する「頑固一徹」などがあります。
本末転倒の類語
本末転倒の類語・類義語としては、上下の順序が逆になっていることや順序や秩序が乱れるさまを意味する「冠履転倒」、小さいことに心を奪われて全体を見通さないことを意味する「木を見て森を見ず」などがあります。
主客転倒の例文
この言葉がよく使われる場面としては、第一に尊重すべき客より主人を上として接すること、物事の重要度を取り違えることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「競プロ」とは競技プログラミングの略であり、プログラミングコンテストで行われる競技の一種です。「主客転倒テクニック」とは、例えば、どの順番で木を伐採するとコストが最小になるかを考える時に、各木の高さがコストの総和にどれほど寄与するか発想を転換することです。
本末転倒の例文
この言葉がよく使われる場面としては、根本の大切なことと末端のつまらないこととを取り違えることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「本末転倒」と「元も子もない」の違いは、「本末転倒」は根本的で重要なことと瑣末なことを取り違えることを表し、「元も子もない」は全てを失って何も残らないことを表す点です。
主客転倒と本末転倒という言葉は、物事の重要度を取り違えることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、大事にすべき人や物事を疎かにすることを表現したい時は「主客転倒」を、大切な事とつまらない事を取り違えることを表現したい時は「本末転倒」を使うようにしましょう。