似た意味を持つ「せっかく」と「わざわざ」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「せっかく」と「わざわざ」という言葉は、どちらも何かを行なうことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「せっかく」と「わざわざ」の違い
「せっかく」と「わざわざ」の意味の違い
「せっかく」と「わざわざ」の違いを分かりやすく言うと、「せっかく」とはついでというニュアンスがある、「わざわざ」とはついでというニュアンスがないという違いです。
「せっかく」と「わざわざ」の使い方の違い
一つ目の「せっかく」を使った分かりやすい例としては、「せっかくのお誘いなのに参加することができず申し訳ありません」「せっかくの休みなので一日中家に居ることにしました」「せっかくフランスへ来たのだから美味しい物を食べよう」などがあります。
二つ目の「わざわざ」を使った分かりやすい例としては、「電車の方が早いのにわざわざバスを選んでしまった」「わざわざお越しいただきありがとうございます」「苦手な人にわざわざ話し掛ける必要はありません」などがあります。
「せっかく」と「わざわざ」の使い分け方
「せっかく」と「わざわざ」はどちらも似た意味を持つ言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「せっかく」はあることを行うときに、一緒に他のことにも利用するという「ついで」というニュアンスがあるのに対して、「わざわざ」はついでではなくそのことだけのために動作を行うというニュアンスで使うというのが違いになります。
また、「せっかく」は副詞的用法だけではなく、名詞的用法でも使えるというのも違いの一つです。
「せっかく」と「わざわざ」の英語表記の違い
「せっかく」を直訳した英語はありませんが、「since」「because」「while」などで表現することが可能です。例えば上記の「せっかくフランスへ来たのだから美味しい物を食べよう」を英語にすると「Since you came to France, let’s eat lots of good food」となります。
一方、「わざわざ」を英語にすると「all the way」「go out of the way」「take trouble」となり、例えば上記の「わざわざお越しいただきありがとうございま」を英語にすると「Thank you for coming all the way to see me」となります。
「せっかく」の意味
「せっかく」とは
「せっかく」とは、色々な困難を排して事をすることを意味しています。その他にも、滅多に得られない恵まれた状況を大切に思う気持ちを表すことや、全力を傾けて事をすることの意味も持っています。
表現方法は「せっかくの機会」「せっかくのお誘い」「せっかくですが」
「せっかくの機会なので」「せっかくのお誘い」「せっかくですが」「せっかくなので」などが、「せっかく」を使った一般的な言い回しになります。
「せっかく」の使い方
「せっかく来て下さったのに部長が不在で申し訳ござません」「せっかくのおみやげをバスの中に置き忘れてしまった」などの文中で使われている「せっかく」は、「色々な困難を排して事をすること」の意味で使われています。
一方、「せっかくの休日なので映画を観に行く予定です」「教授のお言葉を忘れずにせっかく勉学に励む覚悟です」などの文中で使われている「せっかく」は、「滅多に得られない恵まれた状況を大切に思う気持ちを表すことや全力を傾けて事をすること」の意味で使われています。
「せっかく」は様々な意味を持つ言葉で、副詞的用法だけではなく、名詞的用法でも使うことができます。また、プラスのイメージだけではなく、マイナスなイメージでも使うことができる言葉です。
「せっかく」はビジネスシーンにおいても使うことができる言葉ですが、注意点があります。それは、相手の行為に対して使うことは可能ですが、自分の行為に対しては使用できないという点です。
分かりやすい例を挙げると、「せっかくお誘いいただいたのにその日は予定があるため遠慮させていただきます」「せっかくお声がけいただいたのに参加できず申し訳ございません」などは、相手の行為に対して使っているので正しい使用方法になります。
一方、「せっかくご用意したの寄っていってください」「せっかく準備したのでお越しください」などは、自分の行為に対して使っているので間違った使用方法です。
「せっかく」の語源
「せっかく」の語源は中国の故事です。朱雲という人物がそれまで誰も言い負かすことができなかった五鹿に住む充宗という人物を言い負かしました。そのことを人々が「よくぞ鹿の骨を折った」と讃えたことが転じて、「せっかく」が生まれたと言われています。
「せっかく」の漢字表記
「せっかく」を漢字にすると「折角」と表記することができますが、あまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、ひらがなの「せっかく」を使うようにしましょう。
「せっかく」の類語
「せっかく」の類語・類義語としては、労力と時間をかけることを意味する「手間暇をかけて」、力を尽くすことを意味する「骨を折る」、やっとのことを意味する「やっとこさ」などがあります。
「わざわざ」の意味
「わざわざ」とは
「わざわざ」とは、他のことのついでではなくそのためだけに行うことを意味しています。その他にも、しなくてもよいことを更にすることの意味も持っています。
表現方法は「わざわざお越しいただき」「わざわざありがとう」「わざわざご丁寧に」
「わざわざお越しいただき」「わざわざありがとう」「わざわざご丁寧に」などが、「わざわざ」を使った一般的な言い回しになります。
「わざわざ」の使い方
「彼にわざわざ電話するのも面倒くさいです」「こんな所までわざわざありがとうございます」などの文中で使われている「わざわざ」は、「他のことのついでではなくそのためだけに行うこと」の意味で使われています。
一方、「授業をサボった人にわざわざノートを貸す必要なんてありません」「ご親切にもわざわざ忠告に来ました」などの文中で使われている「わざわざ」は、「しなくてもよいことを更にすること」の意味で使われています。
「わざわざ」は二つの意味を持つ言葉で、プラスのイメージとマイナスのイメージどちらでも使うことができます。
「わざわざお越しいただき」や「わざわざありがとう」などの相手の厚意に感謝する場合はプラスのイメージになるのに対して、「わざわざしてあげた」「わざわざやらなくてもいい」などのニュアンスで使う場合はマイナスなイメージになります。
「わざわざ」自体は敬語表現ではありませんが、相手の厚意に感謝したり謝罪する場合であれば、ビジネスシーンにおいて目上の人に対しても使うことができます。
「わざわざ」を使う上での注意点
「わざわざ」を使う上で注意しなければならない点は二つあります。一つ目は使い方によっては相手に不愉快な印象を与えるという点です。
二つ目は「雪の中わざわざ来ました」「資料をわざわざ作成しました」などのように自分の行為に対して使えないという点になります。自分の行為対して使うと相手に良い印象を与えないことが多いので、なるべく使わないようにしましょう。
「わざわざ」の漢字表記
「わざわざ」を漢字にすると「態態」や「態々」と表記することができますが、あまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、ひらがなの「わざわざ」を使うようにしましょう。
「わざわざ」の語源
「わざわざ」の語源は、わざとらしいことを意味する「わざわざし」になります。このわざとらしいという意味が転じて、特別に行うことと、しなくてもいいことを行なうという意味で使われるようになったのが「わざわざ」です。
「わざわざ」の類語
「わざわざ」の類語・類義語としては、他との間にはっきりした区別があることを意味する「特別」、 普通とは違う別の扱いがなされることを意味する「格別」、わざとすることを意味する「故意」などがあります。
「せっかく」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、色々な困難を排して事をすることを表現したい時などが挙げられます。その他にも、滅多に得られない恵まれた状況を大切に思う気持ちを表すことや、全力を傾けて事をすることを表現したい時にも使います。
例文1と例文2の「せっかく」は色々な困難を排して事をすること、例文3と例文4の「せっかく」は、滅多に得られない恵まれた状況を大切に思う気持ちを表すこと、例文5の「せっかく」は全力を傾けて事をすることの意味で使っています。
「わざわざ」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他のことのついでではなくそのためだけに行うことを表現したい時などが挙げられます。その他にも、しなくてもよいことを更にすることを表現したい時にも使います。
例文1から例文3の「わざわざ」は他のことのついでではなくそのためだけに行うこと、例文4と例文5の「わざわざ」はなくてもよいことを更にすることの意味で使っています。
「せっかく」と「わざわざ」はどちらも何かを行なうことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、ついでというニュアンスがあるのが「せっかく」、ついでではなくそのことだけのために動作を行うというニュアンスなのが「わざわざ」と覚えておきましょう。