【実証】と【検証】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「実証」(読み方:じっしょう)と「検証」(読み方:けんしょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「実証」と「検証」という言葉は、どちらも「真実を証明すること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




実証と検証の違い

実証と検証の意味の違い

実証と検証の違いを分かりやすく言うと、実証とは事実によって証明することを表し、検証とは調査によって証明することを表すという違いです。

実証と検証の使い方の違い

一つ目の実証を使った分かりやすい例としては、「ワクチン接種証明を活用した実証実験が行われた」「コロナ禍で行動制限を緩和させる実証実験が始まります」「AIによる英語通訳の実証研究が進んでいる」「実証方法や評価項目について検討する」などがあります。

二つ目の検証を使った分かりやすい例としては、「イベントの費用対効果を検証する」「スポーツ観戦におけるマスク着用率を検証する」「ウェブアクセシビリティの検証結果を報告します」「プログラムの検証環境を統一して実施します」などがあります。

実証と検証の使い分け方

実証と検証という言葉は、どちらも「確かな根拠に基づいて真実を明らかにすること」を表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。

実証とは、事実に基づいて証明することを意味します。実際に起こった事柄を確認して示すことであり、「実証実験」とは、新しく開発する技術などを実際の場面で使用し、実用化に向けての問題点を調べることです。

検証とは、調査によって事実を明らかにすることを意味します。物事を実際に調べて証明することであり、「検証環境」とはIT用語で、システムやアプリケーションが仕様通りに動くか調べるための環境のことです。

つまり、実証とは事実に主眼を置いた表現であり、検証とは調査に主眼を置いた表現であるという違いがあります。

実証と検証の英語表記の違い

実証を英語にすると「demonstration」「actual proof」となり、例えば上記の「実証実験」を英語にすると「demonstration experiment」となります。

一方、検証を英語にすると「verification」「inspection」となり、例えば上記の「効果を検証する」を英語にすると「verify the effects」となります。

実証の意味

実証とは

実証とは、確実な証拠、確証を意味しています。

その他にも「確かな証拠をもって証明すること、事実によって明らかにすること」「漢方で邪気の亢進した状態」の意味も持っています。

表現方法は「実証する」「実証済み」「実証を示す」

「実証する」「実証済み」「実証を示す」などが、実証を使った一般的な言い回しです。

実証の使い方

「あくまで実証のない仮説ですが」「実証的根拠に基づいた医療を提供します」「実証主義と解釈主義は対立する考え方です」「最先端技術の実証研究に携わる」「5Gは実証試験を経て認められました」などの文中で使われている実証は、「確実な証拠、確証」の意味で使われています。

一方、「シェアサイクルの実証実験を行う」「プログラムの正確さを実証する」の文中で使われている実証は「事実によって明らかにすること」の意味で、「今の私は東洋医学で実証という状態だそうです」の文中で使われている実証は「漢方で邪気の亢進した状態」の意味で使われています。

実証という言葉は、複数の意味がありますが、一般的には「確実な証拠」「確かな証拠をもって証明すること」の意味で使われています。実証とは、事実を拠り所として証明することであり、主にビジネスシーンで用いられる表現です。また、漢方用語として、邪気が高ぶり進む状態を指します。

「実証主義」の意味

上記の例文にある「実証主義」とは、実験と観察に基づき、実際に確かめられること以外は全て疑うという社会科学上の立場のことです。また、哲学においては、形而上的な思想を排除して、事実を根拠とし実際に検証できる知識だけを認めようとする立場を意味します。

実証の対義語

実証の対義語・反対語としては、理性ではなく感覚に働きかけるさまを意味する「感覚的」、推理などによらず瞬間的あるいは直接的に物事の本質を見てとるさまを意味する「直観的」、体力が衰えている状態を意味する「虚証」などがあります。

実証の類語

実証の類語・類義語としては、判断が真であることを妥当な論拠を挙げて推論することを意味する「論証」、例をあげて証明することや証明する例を意味する「例証」、ある事柄の証明となるように体験した事実を話すことを意味する「証言」などがあります。

検証の意味

検証とは

検証とは、実際に物事に当たって調べ、仮説などを証明することを意味しています。

その他にも、裁判官や捜査機関が、直接現場の状況や人や物を観察して証拠調べをすることの意味も持っています。

表現方法は「検証する」「検証を重ねる」「検証を行う」

「検証する」「検証を重ねる」「検証を行う」などが、検証を使った一般的な言い回しです。

検証の使い方

「留学生に検証環境を英語で伝える」「英語翻訳アプリが正確か検証する」「検証結果報告書は明日までに提出してください」などの文中で使われている検証は、「実際に物事に当たって仮説などを証明すること」の意味で使われています。

一方、「加害者の立会いのもと現場検証が行われた」「警察官が実地検証をしている」「検察官による検証が行われた」「令状なしに検証できる場合があります」などの文中で使われている検証は、「現場の状況や人や物を観察して証拠調べをすること」の意味で使われています。

検証という言葉の「検」は訓読みで「しらべる」「あらためる」と読み、分からないことや不確かなことを様々な方法で確かめるを表します。検証とは、しっかり調べて事実を確認すること、仮説などを証拠を挙げて明らかにすることを意味する言葉です。

法律における検証の意味

法律における検証とは、裁判官あるいは検察官や警察官などの捜査機関が、物や場所などの状態などを見て、自分の感覚で証拠資料を得る証拠調べを指す言葉です。犯罪の発生した現場で行う検証のことを「現場検証」と言います。

検証の対義語

検証の対義語・反対語としては、頭の中だけで考え出した実際には役に立たない理論や考えを意味する「机上の空論」、あることを目にしていながら放っておくことを意味する「看過」などがあります。

検証の類語

検証の類語・類義語としては、そうであることをはっきりたしかめることを意味する「確認」、物事の確実なことを他の面から証明することを意味する「裏付け」、物事の実態や動向などを明確にするために調べることを意味する「調査」などがあります。

実証の例文

1.実証的な歴史研究家は、歴史上の事実をどのように証明するかを常に考えています。
2.地下鉄でローカル5Gを利用する実証実験を実施し、導入が検討されています。
3.新型コロナウイルス感染症対策の一環として、飲食店やイベント会場での技術実証が行われました。
4.介護ロボットは、実証テストと改良を繰り返すことで実用化レベルになりました。
5.漢方の考え方である実証とは、邪気が盛んで生命活動が激しい状態のことです。
6.交通の便が悪く高齢化が進む地域で、自治体による乗合タクシーの実証実験が始まった。
7.あくまで民間療法であり、その有効性は科学的には実証されていないとはいえ、効くと聞いたものに対しては藁をもすがる思いで試してみたいと思うのが、人情ではないでしょうか。
8.先験的な推論や迷信を排除するためには実証主義的なアプローチが必要ではないだろうか。
9.いままでずっと黙っていた彼は「これはあくまで実証のない仮説ですが」と前置きしたうえで持論を展開した。
10.AIによる自動運転技術については実証実験が続いているが、まだまだ実用化には至っていない状況だ。

この言葉がよく使われる場面としては、たしかな証拠のある事柄、事実によって証明すること、 漢方医学の症状を表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「実証的」とは、 思考や推論のみによって証明するのでなく、経験的な事実の観察や実験を重視して論証するさまを表します。例文3の「技術実証」とは、技術の効果を客観的に証明しようとする実験や施策のことです。

検証の例文

1.行き詰まっていた卒業研究の検証方法について、教授からアドバイスを頂きました。
2.今日のセミナーでは、ビジネスにおける有効的な仮説検証とは何かを学ぶことが出来ました。
3.就職氷河期世代の私は安定した職に就きたくて、IT検証技術者認定試験に挑戦しました。
4.ソフトウエア開発における検証と妥当性確認は、似ているようで全くの別物です。
5.遊園地の転落事故について、警察は現場検証を行い、事故の原因を調べています。
6.今回の失敗は、結果の検証もろくにせずに、ここまでやって来たつけが回ったとしか言いようがない。
7.この事故についてはわれわれの報告書で詳細に検証がなされているのでぜひ参照していただけたらと思います。
8.たとえ馬鹿馬鹿しいと思ったとしても、わずかな可能性があるなら検証してみる必要があるはずだ。
9.巷で精度が高いとの評判の翻訳アプリがはたして仕事で使えるのか個人的に検証してみることにした。
10.たとえ馬鹿馬鹿しいと思ったとしても、わずかな可能性があるなら検証してみる必要があるはずだ。

この言葉がよく使われる場面としては、物事を調査して事実を証明すること、現場の状況や物の形態などを実験し心証をとる証拠調べを表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4にある検証は、物事を調査して事実を証明することの意味で用いられています。例文5における検証は、現場の状況などによる証拠調べの意味で用いられています。

実証と検証という言葉は、どちらも真実を証明することを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、事実によって証明することを表現したい時は「実証」を、物事を調査して証明することを表現したい時は「検証」を使うようにしましょう。

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