似た意味を持つ「一石を投じる」(読み方:いっせきをとうじる)と「波紋を呼ぶ」(読み方:はもんをよぶ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」という言葉は、どちらも周囲に影響を及ぼすことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」の違い
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」の意味の違い
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」の違いを分かりやすく言うと、「一石を投じる」とは意識的に行動した結果周囲に影響を及ぼすこと、「波紋を呼ぶ」とは無意識な行動によって周囲に影響を及ぼすことという違いです。
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」の使い方の違い
一つ目の「一石を投じる」を使った分かりやすい例としては、「この状況を変えるためには一石を投じる必要があるだろう」「来週の取締役会で一石を投じる予定です」「医学界に一石を投じる」などがあります。
二つ目の「波紋を呼ぶ」を使った分かりやすい例としては、「ある政治家が発言した言葉が世間で波紋を呼んでいる」「彼が投稿した何気ない動画がSNSで波紋を呼んでいる」「彼女の退職は波紋を呼ぶこととなりました」などがあります。
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」の使い分け方
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」は、どちらも周囲に影響を及ぼすことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いあるので注意が必要です。
「一石を投じる」は反響を呼ぶような問題を投げかけることを意味しており、自分から意識的に行動した結果、周囲に影響を及ぼす場合に使います。
一方、「波紋を呼ぶ」はあることが影響して周囲に動揺を伝えることを意味しており、周囲に影響を与える意図がなくても、大きな影響を与えてしまった場合に使います。つまり、無意識な行動で周囲に影響を及ぼす場合に使うというのが違いです。
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」の英語表記の違い
「一石を投じる」を英語にすると「cause a stir in」となり、例えば上記の「医学界に一石を投じる」を英語にすると「Cause a stir in medical circles」となります。
一方、「波紋を呼ぶ」を英語にすると「cause controversy」「create a ripple」となり、例えば上記の「彼女の退職は波紋を呼ぶこととなりました」を英語にすると「Her sudden resignation cause controversy」となります。
「一石を投じる」の意味
「一石を投じる」とは
「一石を投じる」とは、反響を呼ぶような問題を投げかけることを意味しています。
「一石を投じる」の読み方
「一石を投じる」の読み方は「いっせきをとうじる」です。誤って「いちいしをとうじる」や「ひといしをとうじる」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「社会に一石を投じる」「常識に一石を投じる」
「社会に一石を投じる」「常識に一石を投じる」などが、「一石を投じる」を使った一般的な言い回しになります。
「一石を投じる」の使い方
「一石を投じる」を使った分かりやすい例としては、「あの会社の成功はゲーム業界に一石を投じることとなった」「彼女の作品は映画業界に一石を投じた」「社内の労働環境改善のために一石を投じることにしました」などがあります。
「一石を投じる」は周囲に反響を呼ぶような問題を投げかけることを意味する慣用句です。慣用句とは二語以上の単語が結合して、それ全体である特定の意味を表す言葉のことを指しています。
「一石を投じる」はただ周囲に影響を及ぼすだけではなく、自分から意識的に行動した結果、周囲に影響を及ぼす場合に使う言葉というのが特徴です。そのため、近年ではSNSなどのネットを通じて、「一石を投じる」人たちが増えてきています。
「一石を投じる」は周囲の人たちが影響された場合にのみ使うことができると覚えておきましょう。したがって、「彼女はSNSで一石を投じたものの誰も賛同しませんでした」のように、影響を受けなかった場合は「一石を投じる」を使うことはできません。
「一石を投じる」の由来
「一石を投じる」の由来は石を水に投げた時に広がる波紋です。石を水の上に投げると、静かだった水面に波紋が広がります。つまり、石が投げ込まれたことで波紋が起き周囲に伝わっていくことを表しています。
これが転じて、人に意見や問題を投げかけることで議論が広がることを「一石を投じる」と言うようになりました。
「一石を投じる」の類語
「一石を投じる」の類語・類義語としては、世間の論議を引き起こすことを意味する「物議を醸す」(読み方:ぶつぎをかもす)、世間で問題となり議論になることを意味する「議論を巻き起こす」などがあります。
「波紋を呼ぶ」の意味
「波紋を呼ぶ」とは
「波紋を呼ぶ」とは、あることが影響して周囲に動揺を伝えることを意味しています。
「波紋を呼ぶ」の読み方
「波紋を呼ぶ」の読み方は「はもんをよぶ」です。誤って「なみもんをよぶ」などと読まないようにしましょう。
「波紋を呼ぶ」の使い方
「波紋を呼ぶ」を使った分かりやすい例としては、「生え抜きの人気選手の移籍が波紋を呼んでいる」「彼の何気ない行動が騒動になり波紋を呼ぶこととなった」「とある芸能人の発言が波紋を呼ぶこととなりました」などがあります。
「波紋を呼ぶ」はあることが影響して周囲に動揺を伝えることを意味する慣用句で、周囲に影響を与える意図がなくても、大きな影響を与えてしまった場合に使う言葉です。つまり、無意識な行動で周囲に影響を及ぼすというニュアンスで使うと覚えておきましょう。
「波紋を呼ぶ」は元々は誤用だった
「波紋を呼ぶ」は元々は誤用と言われていた言葉でした。「波紋」は次々と周囲に動揺を伝えていくような影響のことを意味しているので、それを呼ぶのは少し違うのではという認識があったからです。
しかし、現代ではニュースや新聞などでも使われている言葉で、正しい日本語として定着してきたと覚えておきましょう。
また、似た言葉である「波紋を投じる」は誤用という説が多いです。一部の辞書は認めているものの、多くの言語学者は誤用としており新聞や公的文章では使用されていません。そのため、「一石を投じる」と混同してしまっているという説もあります。
「波紋を呼ぶ」の類語
「波紋を呼ぶ」の類語・類義語としては、物事の力や作用が他のものにまで及ばせることを意味する「影響をもたらす」、ある事柄が周囲のものに影響を及ぼすことを意味する「余波が広がる」などがあります。
「一石を投じる」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、反響を呼ぶような問題を投げかけることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「一石を投じる」は意識的に行動するというニュアンスで使うことが多い言葉です。
「波紋を呼ぶ」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あることが影響して周囲に動揺を伝えることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「波紋を呼ぶ」は無意識のうちに広がるというニュアンスで使う言葉です。
「一石を投じる」と「波紋を呼ぶ」はどちらも周囲に影響を及ぼすことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、意識的に行動した結果周囲に影響を及ぼすのが「一石を投じる」、無意識な行動によって周囲に影響を及ぼすのが「波紋を呼ぶ」と覚えておきましょう。