同じ「うかがう」という読み方、似た意味を持つ「伺う」と「窺う」と「覗う」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「伺う」と「窺う」と「覗う」という言葉は、読み方は同じでも意味は異なりますので、ご注意下さい。
「伺う」と「窺う」と「覗う」の違い
「伺う」と「窺う」と「覗う」の意味の違い
伺うと窺う覗うの違いを分かりやすく言うと、伺うとは目上の人に尋ねること、窺うと覗うは穴からのぞき見るように様子を見ようとすることを意味しているという違いです。
「伺う」と「窺う」と「覗う」の使い分け方
一つ目の「伺う」は「目上の人に聞く、質問する、目上の人のもとを訪れる」という意味を持つ謙譲語です。
「お噂はかねがね伺っております」では聞くの意味、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」では質問するの意味、「今から伺います」では尋ねるの意味で、それぞれ伺うという言葉が用いられています。
二つ目の「窺う」と三つ目の「覗う」は「穴や隙間などから隠れて見る」ことを意味する言葉で、ニュアンス的な違いはありません。どちらの字も常用漢字ではないので一般的にはひらがなで「うかがう」と表記されます。
大元の意味は「小さな穴を通じて、相手に見つからないように見る」という意味ですが、壁に耳を当てて隣の部屋の様子を知ろうとすることも「うかがう」と言われます。
壁に耳当てて隣の部屋の様子をうかがうことは、聞こえてきた音から部屋の状況全体を推測することです。このように「うかがう」には「一部から全体を推測する」「表面的な物事からその奥にある物を推し量る」という意味の「うかがう」もあります。
例えば「熱心な練習からは意気込みのほどがうかがわれる」というような使われ方をします。
また「それとなく探りを入れる」という意味でも「うかがう」という言葉は使われることがあります。例えば「顔色をうかがう」と言われれば、相手の反応を見ながら探り探り話をするというような状況を思い浮かべることが出来ます。
「伺う」の意味
「伺う」とは
伺うとは、聞く、質問する、訪ねるなどを意味する謙譲語を意味しています。謙譲語は文法的な役割の一つで、目上の人に対して使い、相手を尊重すると共に自分は謙遜するという意味合いを含む言葉です。
表現方法は「様子を伺う」「話を伺う」「お店に伺う」
「様子を伺う」「話を伺う」「お店に伺う」などが、伺うを使った一般的な言い回しです。
「伺う」の使い方
伺うは謙譲語の中で、相手の話を聞く、相手に質問をする、相手の場所を訪れるなどの意味を持つ言葉です。
例えば「お話を伺いたく存じます」では聞くという意味、「お伺いを立てる」では質問するという意味、「今からお伺いすることは出来ますでしょうか」では訪問するという意味で「伺う」という言葉が使われています。
伺うは、「聞く」や「尋ねる」や「訪ねる」の謙譲語です。知らない人に道を尋ねる時に、「ちょっとお尋ねします」と言うことがありますが、謙譲語を使って表現すると「お伺いしたいのですが」などとなります。
ちなみに、聞くの対義語・反対語の言うには、謙譲語として「申す」がありますが、質問に答えることや、客人を迎えることには特別な謙譲語の表現はありません。「ご返答する」や「お迎えする」などを使います。
時々、「お」「ご」を付けると全て尊敬語になると考えて、「ご返答いたします」や「お電話差し上げます」は自分を敬っているようでおかしいと思う人がいますが、それは間違った考え方です。「お」や「ご」は丁寧さを表す接頭辞なので、謙譲語にもなります。
「伺う」の類語
伺うの類語・類義語としては、貴人のそば仕えをすること、そこから転じて目上の人の機嫌をうかがうことを意味する「伺候」(読み方:しこう)、目上の人の機嫌を伺いながら何かを申し上げることを意味する「奉伺」(読み方:ほうし)などがあります。
「窺う」の意味
「窺う」とは
窺うとは、のぞき穴から見るように、こっそりとさりげなく見ることを意味しています。
表現方法は「顔色を窺う」「タイミングを窺う」「動向を窺う」
「様子を窺う」「タイミングを窺う」「動向を窺う」などが、窺うを使った一般的な言い回しです。
「窺う」の使い方
窺うは覗うと全く同じ意味で、さらにどちらも常用外の漢字なので普通はひらがなで「うかがう」と表記されます。ただし国語辞書では窺うという表記の方が使われ、覗うを載せていないものもあります。
「うかがう」は小さな穴からこっそりと見ることを意味します。窺うという言葉に使われている窺の部首は「穴」(読み方:あなかんむり)であることからイメージしてみて下さい。
小さい穴から見ることが出来る範囲は狭く、得ることが出来る情報はごく僅かなものです。のぞき穴からこっそりと見る人は、僅かな情報から全体像を想像しなくてはいけません。
そのため「うかがう」という言葉は「一部から全体を推測する」という意味を持つようになりました。例えば「様子をうかがう」とは、態度としては控えめに観察することですが、何をしているかと言えば、手がかりを集めて状況全体を想像、推測しているのです。
また「一部から全体を推測する」という意味が独立して、視覚以外の意味を持つようにもなりました。例えば聞き耳を立てることなども「うかがう」と表現することが出来ます。
「窺う」の類語
窺うの類語・類義語としては、物陰や小さな穴などから見ることや、高所から下を見ることを意味する「のぞく」などがあります。のぞくは漢字で窺くと書くこともあります。
窺うの窺の字を使った別の言葉としては、視野狭窄なこと、無知なことをを意味する「管窺」(読み方:かんき)、物事の様子をうかがい知ることを意味する「窺知」などがあります。
繰り返しますが、窺という字は常用外漢字なので、仕様する際は注意するようにして下さい。
「覗う」の意味
「覗う」とは
覗うとは、のぞき穴から見るように、こっそりとさりげなく見ることを意味しています。
表現方法は「様子を覗う」「気配を覗う」「反応を覗う」
「様子を覗う」「気配を覗う」「反応を覗う」などが、覗うを使った一般的な言い回しです。
「覗う」の使い方
覗うは窺うと全く同じ意味で、さらにどちらも常用外の漢字なので普通はひらがなで「うかがう」と表記されます。ただし、国語辞書では「うかがう」を引くと、覗うを載せていないこともあります。
覗うの除の字は、むしろ「のぞく」という言葉を漢字で表記する時に使われます。やや古い文章では、「覗き穴」や「覗き眼鏡」、「覗きからくり」などの言葉が使われたりしています。
「のぞく」も「うかがう」と同様に、小さな穴から見ることを意味します。うかがうの場合にはこっそりと見るというニュアンスがありますが、「のぞく」は望遠鏡や双眼鏡を通して物を見ることに使われる傾向があります。
前述した「覗き眼鏡」は、江戸時代から明治初頭あたりまで親しまれた玩具です。長崎での外国との貿易で凸レンズが輸入されたことをきっかけにして、レンズ越しに拡大された絵をのぞきこんで楽しむ玩具でした。
覗きからくりはそれを祭りの屋台などで楽しめるようにした、大型のもので昭和の40年頃まで一部では使われていたものです。
また「うかがう」にはないものとして、「のぞく」には「高所から下方を見る」という使う方があります。「例えばテトラポットの上から海面をのぞく」などのように使われます。
「伺う」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、目上の人の話を聞く、目上の人に質問する、目上の人の場所を訪れることを表現したい時などが挙げられます。
例文1は「話しを聞く」という意味の伺うです。ただし、窺うや覗うの意味での「うかがう」の場合には、さりげなく様子を見るという視覚的な意味になります。そして例文2は質問するという意味、例文3は訪ねるという意味の伺うになります。
伺うを行くの意味で使う表現としては他に、「御社に伺う」や「見に伺う」などもあります。
「窺う」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、小さな穴から向こう側をこっそりのぞくように、様子や気配などを察することを表現したい時などが挙げられます。
窺うという言葉は常用外の漢字を含んでいるので、普通はひらがなで「うかがう」と表記されます。この言葉は「小さい穴から向こう側を見る」というのが元々の意味で、僅かな情報から全体を推測するという「様子をうかがう」という意味で使われることもあります。
また例文3のように、視覚以外の意味で使われる「うかがう」もあります。
「覗う」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、小さな穴から向こう側をこっそりのぞくように、様子や気配などを察することを表現したい時などが挙げられます。
覗うは窺うとまったく同じ意味です。ただし辞書では窺うと記載されていて、覗うが載っていないことも多いです。逆に、「のぞく」という言葉を漢字で表記する時には覗の字が用いられる傾向があります。
ただし、覗も窺も常用外の漢字なので、普通は「うかがう」「のぞく」とひらがなで表記されます。これらの漢字を用いる時には、送り仮名を振るなどして配慮することが必要になります。