似た意味を持つ「応酬」(読み方:おうしゅう)と「応戦」(読み方:おうせん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「応酬」と「応戦」という言葉は、どちらも「やり返すこと」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
応酬と応戦の違い
応酬と応戦の意味の違い
応酬と応戦の違いを分かりやすく言うと、応酬とは互いにやり取りすることを表し、応戦とは相手からの攻撃にやり返すことを表すという違いです。
応酬と応戦の使い方の違い
一つ目の応酬を使った分かりやすい例としては、「激しい言葉の応酬が繰り広げられた」「ロケット弾や空爆の応酬が続く紛争地帯です」「セールスで使える応酬話法テクニックを教えます」「様々な人と詩歌を応酬しました」などがあります。
二つ目の応戦を使った分かりやすい例としては、「デモ隊に対し警察が催涙弾で応戦する状況が続いた」「こちらも負けじと応戦する」「徹底して応戦する構えを見せた」「相手の攻撃に応戦する」などがあります。
応酬と応戦の使い分け方
応酬と応戦という言葉は、どちらも「相手からの行為や攻撃に対して、こちらもやり返すこと」を表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
応酬とは、相手の行為に報いることであり、互いにやり取りすることや、相手にやり返すことを意味します。互いにやり取りすることの意味合いが強い言葉であり、両者互角の戦いや、終わりのないようなやり取りを表す時に用いられる言葉です。
応戦とは、相手が仕掛けてきた攻撃に対して、こちらからやり返すことを意味します。応戦には、応酬のような「互いにやり取りする」という意味合いはなく、一方的な攻撃に対して同じように返すことのみを意味します。この点が、応酬と応戦という言葉の明確な違いになります。
応酬と応戦の英語表記の違い
応酬を英語にすると「exchange」「reciprocation」「reply」となり、例えば上記の「言葉の応酬」を英語にすると「an exchange of words」となります。
一方、応戦を英語にすると「fight back」「replay to the fire」となり、例えば上記の「応戦は続いた」を英語にすると「continue fighting back」となります。
応酬の意味
応酬とは
応酬とは、互いにやり取りすること。また、先方からしてきたことに対して、こちらからもやり返すことを意味しています。
その他にも、「贈られた書状や詩歌などに返事をすること」の意味も持っています。
表現方法は「応酬が続く」「言葉の応酬」「応酬を繰り返す」
「応酬が続く」「言葉の応酬」「応酬を繰り返す」などが、応酬を使った一般的な言い回しです。
応酬の使い方
「営業トークに役立つ応酬話法を身に付けたい」「英語ジョークの応酬となり理解できなかった」「両国は非難の応酬を繰り返すばかりだ」「コールセンターの研修で応酬話法を学ぶ」などの文中で使われている応酬は、「互いにやり取りすること、こちらからもやり返すこと」の意味で使われています。
一方、「一通一通に次韻の応酬詩を返す」「贈歌と返歌による和歌の応酬があります」「書状による応酬がありました」などの文中で使われている応酬は、「書状や詩歌などに返事をすること」の意味で使われています。
応酬という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「互いにやり取りすること、こちらからもやり返すこと」の意味で用いられています。応酬の「応」は問いや呼びかけに応えること、「酬」は相応のお返しをすることを表します。
「応酬話法」の意味
応酬を用いた日本語には「応酬話法」があります。客の質問や反応に応答するための、基本的なセールストークのことです。お客の質問や反応には一定のパターンがあるため、そのタイプに応じて決まった答え方を準備するものです。
「応酬される」は誤り
応酬の誤った言い回しには「応酬される」があります。正しくは「押収される」であり、自分の所有物などが別の場所に強制的に移されることを意味します。
応酬の対義語
応酬の対義語・反対語としては、あるものを無いがごとくみなすことを意味する「無視」、相手の追及を逃れようとして話の焦点をずらしたりして言いまぎらすことを意味する「はぐらかす」などがあります。
応酬の類語
応酬の類語・類義語としては、相手の論を非難して反対意見を述べることを意味する「駁論」、相手の主張に対して自己の立場を堅持して反論することを意味する「抗弁」、問いかけや呼びかけに答えることを意味する「応答」、質問と応答や議論することを意味する「問答」などがあります。
応戦の意味
応戦とは
応戦とは、敵の攻撃に対して戦うことを意味しています。
応戦の使い方
応戦を使った分かりやすい例としては、「敵からの攻撃に素早く応戦する」「応戦する形で戦闘の火蓋が切られた」「敵が撃ってきたのでこちらも応戦した」「治安部隊の応戦により事態は沈静化した」などがあります。
その他にも、「負けじと左右のパンチで応戦する」「緩急をつけたテニスで応戦する」「アメリカ人にケンカを吹っ掛けられて英語で応戦する」「いつでも応戦できる態勢です」「突然の奇襲攻撃に応戦できなかった」「敵国の動きを察知して応戦体制を敷く」などがあります。
応戦とは、文字通り「応じて戦うこと」であり、相手の攻撃に反応して戦うことを意味します。敵から挑まれて相手になって争うことであり、こちらから攻撃を仕掛ける場合は「応戦」とは表現できません。戦争やケンカだけでなく、スポーツの試合、心理的な攻撃に対しても用いられる言葉です。
応戦の対義語
応戦の対義語・反対語としては、激しい勢いで襲いかかってくることを意味する「襲来」、戦いや試合を挑むことを意味する「挑戦」、試合などを申し入れることを意味する「チャレンジ」などがあります。
応戦の類語
応戦の類語・類義語としては、戦いをまじえることや互いに戦うことを意味する「交戦」、最終的な勝敗を決するために戦うことを意味する「決戦」、抵抗して戦うことを意味する「抗戦」、演習などではない実地の戦いを意味する「実践」などがあります。
応酬の例文
この言葉がよく使われる場面としては、対立する意見などを互いにやり取りすること、相手の攻撃に対してやり返すこと、書状や詩歌などの返しをすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「言葉の応酬」とは、複数の人々で交わされる激しい言葉や議論のやり取りを表します。例文3の「応酬合戦」とは、相手とのやり取りが続いて、激しく争うさまを意味します。
応戦の例文
この言葉がよく使われる場面としては、敵から挑まれて相手になって争うことを表現したい時などが挙げられます。
例文4や例文5では、心理的な攻撃に応じてやり返すことの意味で「応戦」という言葉が使われています。「応戦的」とは、相手の攻撃に対して戦うような傾向がある様子を表します。
応酬と応戦という言葉は、どちらも「やり返すこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、互いにやり取りすることを表現したい時は「応酬」を、相手からの攻撃にやり返すことを表現したい時は「応戦」を使うようにしましょう。