似た意味を持つ「もとい」と「ならぬ」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「もとい」と「ならぬ」という言葉は、類語でも意味は異なりますので、ご注意下さい。
「もとい」と「ならぬ」の違い
「もとい」と「ならぬ」の意味の違い
「もとい」と「ならぬ」の違いを分かりやすく言うと、「もとい」とは言い間違えて訂正するときに発する言葉のこと、「ならぬ」とは〇〇ではないことという違いです。
「もとい」と「ならぬ」の使い方の違い
一つ目の「もとい」を使った分かりやすい例としては、「明日の集合場所は駅の南口もとい東口です」「このラーメンは美味しくないもとい独特の味がします」「彼女は太って、もといぽっちゃりです」「彼はサッカー、もとい野球が上手です」などがあります。
二つ目の「ならぬ」を使った分かりやすい例としては、「ひとかたならぬご指導をいただきありがとうございました」「彼からはただならぬ気配を感じている」「夜中にただならぬ物音がしました」などがあります。
「もとい」と「ならぬ」の使い分け方
「もとい」と「ならぬ」は類語ですが、意味は異なっているので間違えないように注意が必要です。
「もとい」は言い間違えて訂正するときに発する言葉のことを意味しています。「AもといB」とすると、AじゃなくてBという打消しの意味になります。
一方、「ならぬ」は〇〇ではないことを意味しています。「AならぬB」とすると、AではなくBとなり、Bを説明する場合に使う言葉です。
「もとい」と「ならぬ」の英語表記の違い
「もとい」を英語にすると「I mean」「correction」となり、例えば上記の「彼はサッカー、もとい野球が上手です」を英語にすると「He plays the soccer, I mean the baseball, really well」となります。
一方、「ならぬ」を英語にすると「supernatural」「out of the ordinary」「unusual」となり、例えば上記の「夜中にただならぬ物音がしました」を英語にすると「In the middle of the night I heard an unusually loud noise」となります。
「もとい」の意味
「もとい」とは
「もとい」とは、言い間違えて訂正するときに発する言葉のことを意味しています。
「もとい」の使い方
「もとい」を使った分かりやすい例としては、「新人の田中さん、もとい中田さんは優秀な人ですか」「彼は陰キャ、もとい内気な人です」「明日は9時集合、もとい10時集合です」「彼は車オタク、もとい車にとても詳しい人でだ」などがあります。
「もとい」は直前の言った間違えを訂正する場合に使う言葉になります。そのため、話し言葉でしか使いません。書き言葉の場合は単純に文字を消して書き直せばいいからです。
「もとい」は主に二つの使い方があります。
一つ目は「明日は新宿駅西口集合、もとい東口集合です」「本日大谷は欠席しております、もとい出席しております」のように、ただ単純に言い間違えたことを訂正する場合です。
二つ目は「彼は騒がしい、もとい場を盛り上げることに長けています」「彼女は理屈っぽい、もとい論理的思考ができる人です」のように、わざと間違って「もとい」を使うことによって皮肉やジョークとして使うこともできます。
ただし、後者は親しい間柄でのみ使うよう注意が必要です。
「もとい」の語源
「もとい」の語源は諸説ありますが、一番有力なのは軍隊の号令である説です。
軍隊の号令である説は、軍の指揮官や上官などが、号令をかけている最中にうまくいかなかった場合に「元へ戻れ」と号令をかけます。これが転じて、言い間違えて訂正するときに発する言葉のことを「もとい」と言うようになった説です。
もう一つは元結(読み方:もとゆい)説になります。元結とはお相撲さんが髷(読み方:まげ)を結う際に使う紐のことを意味しています。
昔は髷を結い直すとき元結を締め直していましたため、やり直して初めから結うことを「もとい」と言っていました。これが転じて、言い間違えて訂正するときに発する言葉のことを「もとい」と言うようになったのです。
そのため、「もとい」を漢字で表記すると「元い」になります。基としてしまうと意味が違う言葉になってしまうので間違えないように注意しましょう。
「もとい」の類語
「もとい」の類語・類義語としては、改めることを意味する「改め」、前述の事項を否定し後から訂正する内容を述べる場合に用いる言葉のことを意味する「ではなく」、誤りを正しく直すことを意味する「訂正」などがあります。
「ならぬ」の意味
「ならぬ」とは
「ならぬ」とは、〇〇ではないことを意味しています。その他にも、してはいけないことやしなくてはならないことの意味も持っています。
表現方法は「ただならぬ」「ひとかたならぬ」
「ただならぬ」「ひとかたならぬ」などが、「ならぬ」を使った一般的な言い回しになります。
「ならぬ」の使い方
「彼は並々ならぬ努力をしているので世界大会で勝ち続けています」「ただならぬ事態に遭遇しました」「ひとかたならぬお気遣い感謝いたします」などの文中で使われている「ならぬ」は、「そうではないこと」の意味で使われています。
一方、「この場では私語を交わしてはならぬと上司から言われました」「この件は私がどうにかせねばならぬ」などの文中で使われている「ならぬ」は、「してはいけないことやしなくてはならないこと」の意味で使われています。
「ならぬ」は複数の意味を持つ言葉で、意味によって使い方が異なると覚えておきましょう。
一つ目の「〇〇ではないこと」の意味は「ただならぬ気配を感じる」「彼女は並々ならぬ努力している」などのように、普通ではないというニュアンスで使っています。
二つ目の「してはいけないこと」の意味は「それ以上は進んではならぬ」「彼とは話してはならぬ」などのように、禁止のニュアンスで使います。
三つ目の「しなくてはならないこと」の意味は「法律は従わなければならぬ」「この仕事は今日中に終わらせなければならぬ」などのように、する必要があるというニュアンスで使います。
「ならぬ」の類語
「ならぬ」の類語・類義語としては、ある行為を行わないように命令することを意味する「禁止」、けしからぬことを意味する「以ての外」、してはいけないことを意味する「駄目」などがあります。
「もとい」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、言い間違えて訂正するときに発する言葉のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「もとい」は話し言葉として使います。
「ならぬ」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、〇〇ではないことを表現したい時などが挙げられます。その他にも、してはいけないことやしなくてはならないことを表現したい時にも使います。
例文1と例文2の「ならぬ」は〇〇ではないこと、例文3と例文4の「ならぬ」はしてはいけないこと、例文5の「ならぬ」はしなくてはならないことの意味で使っています。
「もとい」と「ならぬ」は類語ですが意味は異なっています。どちらの言葉を使うか迷った場合、、言い間違えて訂正するときに発する言葉のことを表現したい時は「もとい」を、〇〇ではないことを表現したい時は「ならぬ」を使うと覚えておきましょう。