似た意味を持つ「共謀」(読み方:きょうぼう)と「共犯」(読み方:きょうはん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「共謀」と「共犯」という言葉は、どちらも「二人以上の者が犯罪に関わること」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
共謀と共犯の違い
共謀と共犯の意味の違い
共謀と共犯の違いを分かりやすく言うと、共謀とは複数の者が犯罪をたくらむこと、共犯とは複数の者が犯罪を実行することという違いです。
共謀と共犯の使い方の違い
一つ目の共謀を使った分かりやすい例としては、「共謀者と思われる2人を任意で取り調べる」「事件の共謀者として逮捕されました」「被告人を共謀共同正犯とした結論は妥当である」「共謀罪法案に反対するデモ行進がありました」などがあります。
二つ目の共犯を使った分かりやすい例としては、「彼女は共犯者として告発されている」「論証により共犯の錯誤が認められた」「共犯の成立要件を欠く事例です」「逃亡した共犯者の半生を描いた映画です」などがあります。
共謀と共犯の使い分け方
共謀と共犯という言葉は、どちらも刑事事件で使われており、2人以上の者が犯罪に関わっていることを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
共謀とは、2人以上の者が悪事や違法行為をたくらむことを意味します。「共謀罪」とは、ある特定の犯罪を行おうと合意することによって成立する犯罪のことです。実際に犯罪が行われていない時点でも、検挙や逮捕ができます。
共犯とは、2人以上の者が共同して犯罪を実現することです。複数人が犯罪に参加して実行すると共犯になり、計画のみで実行されない場合は共犯とは言えません。また、複数人ではなく単独で犯行を実行する場合は、「単独犯」と言います。
つまり、共謀は犯罪を計画する段階を表し、共犯は犯罪を実行する段階を指す点が、二つの言葉の違いになります。
共謀と共犯の英語表記の違い
共謀を英語にすると「conspiracy」「collusion」となり、例えば上記の「共謀者」を英語にすると「a conspirator」となります。
一方、共犯を英語にすると「complicity」「accomplice」「joint offense」となり、例えば上記の「共犯者として」を英語にすると「as an accomplice」となります。
共謀の意味
共謀とは
共謀とは、二人以上の者が合意して悪事などをたくらむことを意味しています。
表現方法は「共謀する」「共謀者」「共謀罪」
「共謀する」「共謀者」「共謀罪」などが、共謀を使った一般的な言い回しです。
共謀の使い方
共謀を使った分かりやすい例としては、「甲と乙が金を盗もうと共謀した」「生徒二人が共謀して英語教師を拉致した疑いで逮捕された」「共謀共同正犯をめぐる日本の判例を集めています」「共謀の内容となる緊密な意思連絡があった」などがあります。
その他にも、「共謀者全員について共同正犯が成立した」「共謀共同正犯の成立要件は何ですか」「生活に苦しんだ家族が共謀して盗みを働いた」「共謀罪はテロや犯罪組織を規制するための法律です」などがあります。
共謀とは、二人以上の者が共同して好ましくないことをたくらむことや、違法な行為を行おうと合意することを意味します。共謀の「共」は訓読みで「とも」と読み、一緒にあることをするさまを表し、「謀」は「はかりごと」と読み、人知れず悪事をたくらむことを表します。
「共謀共同正犯」の意味
共謀を用いた日本語には「共謀共同正犯」があります。数人が犯罪を共謀し、そのうちの一部の者が犯罪を実行した場合に、実行しなかった者にも共同正犯の責任を問うことです。判例によると、実行に参加しなかった者を含めて全員が「共同正犯者」として処罰されています。
共謀の類語
共謀の類語・類義語としては、法律で二人以上の者が一定の犯罪行為について計画することを意味する「陰謀」、示し合わせて悪事を企てる仲間を意味する「ぐる」、示し合わせてぐるになることを意味する「結託」、犯罪の計画や方法などを相談することを意味する「謀議」などがあります。
共犯の意味
共犯とは
共犯とは、二人以上の者が一つの罪に関与していること、また、その関与者を意味しています。
表現方法は「共犯関係」「共犯者」「共犯である」
「共犯関係」「共犯者」「共犯である」などが、共犯を使った一般的な言い回しです。
共犯の使い方
共犯を使った分かりやすい例としては、「裁判で共犯関係からの離脱が認められました」「幇助犯は狭義の共犯であるとされています」「刑法の身分犯の共犯について教えてください」などがあります。
その他にも、「共犯者は英語の翻訳家であった」「共犯者の裏切りを描いたドラマです」「共犯者たちは口々に自分は主犯ではないと言い出した」「共犯者への証人質問が始まった」「お笑い芸人が共犯者として告発された」などがあります。
共犯とは、2人以上の者が共同して犯罪を実現することを意味します。これに対して、単独で犯罪を実現する場合を単独犯と言います。刑法は共同正犯・教唆犯・従犯の3種類を共犯として規定しています。ただし、狭義では教唆犯と従犯を共犯とし、共同正犯と区別されています。
「必要的共犯」の意味
共犯という言葉を用いた日本語には「必要的共犯」があります。必要的共犯とは、犯罪の成立に必ず二人以上の共同行為を必要とする場合を指す言葉であり、対する言葉には「任意的共犯」があります。
共犯の対義語
共犯の対義語・反対語としては、ある犯罪に該当する行為をただ一人で行なった場合を意味する「単独正犯」、二人以上の者による犯罪行為の中心となった者を意味する「主犯」などがあります。
共犯の類語
共犯の類語・類義語としては、他人をそそのかして犯罪を実行させた者を意味する「教唆犯」、犯罪をみずから直接に行なった者を意味する「正犯」、他人の犯罪の実行を助けその実現を容易にすることを意味する「従犯」、正犯を幇助する罪を意味する「幇助犯」などがあります。
共謀の例文
この言葉がよく使われる場面としては、2人以上の者が一定の犯罪を行おうとする合意を表現したい時などが挙げられます。
例文3や例文5にある「共謀罪」とは、複数の者で特定の犯罪を実行することを協議し、合意することで成立する犯罪のことです。実際に犯罪を行わなくても、何らかの犯罪を共謀した段階で検挙または処罰することができます。
共犯の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一つの犯罪を二人以上の者が共同して行なうことを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「身分犯の共犯」とは、犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加担したときは、身分のない者であっても共犯とする考えを意味します。
共謀と共犯という言葉は、どちらも「複数の者が犯罪に関わること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、二人以上の者が犯罪をたくらむことを表現したい時は「共謀」を、二人以上の者が犯罪を実行することを表現したい時は「共犯」を使うようにしましょう。