似た意味を持つ「従事」(読み方:じゅうじ)と「勤務」(読み方:きんむ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「従事」と「勤務」という言葉は、どちらも「仕事をすること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
従事と勤務の違い
従事と勤務の意味の違い
従事と勤務の違いを分かりやすく言うと、従事とは具体的な職種に対して使われ、勤務とは勤めている会社や場所に対して使われるという違いです。
従事と勤務の使い方の違い
一つ目の従事を使った分かりやすい例としては、「定年退職後は農業に従事したいと考えています」「ワクチン対象を医療従事者に拡大します」「従事する業務の内容を証明する所属機関の文書を提出してください」などがあります。
二つ目の勤務を使った分かりやすい例としては、「フレックスタイム制なので勤務時間が柔軟に選べます」「テレワークという勤務形態が普及している」「エクセルで勤務表を作成しました」などがあります。
従事と勤務の使い分け方
従事と勤務という言葉は、どちらも仕事に就いていることを表し、「医師として仕事に従事しています」「大学病院に勤務しています」などと表現します。二つの言葉は、同じような表現をしますが、意味や使い方には違いがあります。
従事とは、その仕事に携わり、自分の仕事として務めることを意味します。「農業に従事する」「医療従事者」など、どのような仕事をしているか具体的な職種を伴って使用することが多くあります。
勤務とは、会社や役所などに出向いて仕事をすることを意味します。「証券会社に勤務しています」「大手町で勤務しています」のように、所属する会社や会社がある場所を伴って使用することが多い言葉です。
つまり、従事は仕事の内容や職種に対して用いることが多く、勤務は勤めている団体や場所に対して使用します。この点が、従事と勤務という言葉の明確な違いになります。
従事と勤務の英語表記の違い
従事を英語にすると「engagement」「occupation」「practice」となり、例えば上記の「農業に従事する」を英語にすると「engage in agriculture」となります。
一方、勤務を英語にすると「work」「service」「duty」となり、例えば上記の「勤務時間」を英語にすると「hours of duty」となります。
従事の意味
従事とは
従事とは、もっぱらその仕事に携わることを意味しています。
従事の使い方
従事を使った分かりやすい例としては、「卒業後は幼児英語教育に従事する予定です」「夏期期間に従事する保育士を募集します」「建設工事に従事する方々に機械器具の使い方を教えています」などがあります。
その他にも、「医療従事者向けに情報を提供しております」「学長は総務担当の理事を従事者指定書により通知します」「社会福祉事業従事者共済会で働いています」「営業職に従事しながら事務関連の仕事を担う」などがあります。
従事という言葉の「従」は事に携わることや仕事に就くことを表し、「事」は当然果たさなければならない事柄や任務を表します。従事とは、何らかの仕事や任務につくことを意味する言葉です。
「医療従事者」の意味
上記の例文にある「医療従事者」とは、医療関係の業務に従事する専門の技術者のことです。医師・看護師・薬剤師・理学療法士・放射線技師など、広く医療に携わる職業の従事者を表します。
「特定業務従事者健康診断」の意味
従事を用いた日本語には「特定業務従事者健康診断」があります。これは、事業者が労働者に対して行う一般健康診断の一つであり、深夜業や坑内労働など特定の業務に常時従事する労働者に対して、6か月以内ごとに1回実施するものです。
従事の対義語
従事の対義語・反対語としては、何もせずにぶらぶらと遊び暮らすことを意味する「安逸」、束縛を受けず心のおもむくままに伸び伸びと楽しむことを意味する「自適」、怠けてだらしないことを意味する「怠惰」などがあります。
従事の類語
従事の類語・類義語としては、ある仕事に携わることや業務に従事することを意味する「従業」、仕事に従事することを意味する「服務」、業務についていることや事務を取り扱うことを意味する「執務」などがあります。
勤務の意味
勤務する
勤務とは、会社などに勤めて仕事をすることを意味しています。
表現方法は「勤務する」「勤務を行う」「勤務にあたる」
「勤務する」「勤務を行う」「勤務にあたる」などが、勤務を使った一般的な言い回しです。
勤務の使い方
勤務を使った分かりやすい例としては、「勤務時間の計算方法を教えてください」「昔に比べて勤務形態は多様化している」「大学生の賃貸契約書の勤務先とは何を書けばよいだろう」などがあります。
その他にも、「会社で勤務間インターバル制度を利用しています」「保育園の申し込みに勤務証明書が必要です」「勤務医の年収はどれぐらいなのだろうか」「無料の勤務表アプリをダウンロードする」などがあります。
勤務とは、会社や役所などに勤めて何らかの仕事をすることです。また、その仕事を指します。勤務の「勤」と「務」はどちらも訓読みで「つとめる」と読み、「勤」は勤め先で仕事をすること、「務」は力を尽くして当たるべき仕事や役目を表します。
「勤務形態」の意味
上記の例文にある「勤務形態」とは、わかりやすく言うと「働き方」のことです。日勤や夜勤など勤務時間帯であったり、テレワークやリモートワークなど勤務地などの点から、どのような形で勤務しているかを表す言葉です。
勤務の対義語
勤務の対義語・反対語としては、スポーツや趣味など好きなことをして楽しい時間を過ごすことを意味する「遊ぶ」、業務や授業などを休む日を意味する「休日」、欠勤や欠席することを意味する「休み」などがあります。
勤務の類語
勤務の類語・類義語としては、職業としてあるいは生計を維持するために一定の職に就くことを意味する「働く」、官庁や会社などで職員として働くことを意味する「勤める」、収入を得る目的で身体や知能を使って働くことを意味する「労働」などがあります。
従事の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事に関係して、それを仕事として携わることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「携わる」と「従事する」の違いは、関係の深さにあります。関係することを表す「携わる」よりも、仕事として取り組むことを表す「従事する」の方が深く関係することを意味します。
勤務の例文
この言葉がよく使われる場面としては、職務をもって勤めることを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「就業時間」「勤務時間」「労働時間」の違いは、休憩時間を含むか除くかにあります。「就業時間」「勤務時間」は休憩時間を含む業務開始時刻から終了時刻までの時間を表し、「労働時間」は休憩時間を除いた時間を表します。
従事と勤務という言葉は、どちらも「仕事をすること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、特定の仕事に携わることを表現したい時は「従事」を、会社や役所に勤めることを表現したい時は「勤務」を使うようにしましょう。