似た意味を持つ「不埒」(読み方:ふらち)と「不届き」(読み方:ふとどき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不埒」と「不届き」という言葉は、どちらも道徳や法などに背いた行いをすることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「不埒」と「不届き」の違い
「不埒」と「不届き」の意味の違い
「不埒」と「不届き」の違いを分かりやすく言うと、「不埒」とは道徳心に欠けているというニュアンスで使うことが多い、「不届き」とはルールを守らない者というニュアンスで使うことが多いという違いです。
「不埒」と「不届き」の使い方の違い
一つ目の「不埒」を使った分かりやすい例としては、「不埒なことは辞めなさい」「不埒な者と仲良くする自信がありません」「不埒者に対しては厳しく接することにしました」「目上の者に向かってそんなことを言うとは不埒極まる」などがあります。
二つ目の「不届き」を使った分かりやすい例としては、「彼は不届き千万な話をする」「不届きなことをしようとすると彼女はすぐ顔に出るタイプです」「ルールを犯す不届き者を許すことはできません」などがあります。
「不埒」と「不届き」の使い分け方
「不埒」と「不届き」はどちらも道徳や法などに背いた行いをすることを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
江戸時代の奉行所おいて、「不埒につき」と「不届きにつき」という二つの判決があり、両者の罪状には大きな違いがありました。
「不埒につき」と言い渡されれば手鎖以下の軽い刑だったのに対して、「不届きにつき」と言い渡されると追放刑以上の重い刑で観念しければなりませんでした。しかし、現代では「不埒」と「不届き」に罪の重さの違いはないと言われています。
では現代での違いを挙げるならば、「不埒」は道徳心に欠けているというニュアンスで使うことが多く、「不届き」はルールを守らない者というニュアンスで使うことが多いという点です。
「不埒」と「不届き」の英語表記の違い
「不埒」も「不届き」も英語にすると「lawless」「insolent」「rude」「outrageous」「unpardonable」「inexcusable」となり、例えば上記の「目上の者に向かってそんなことを言うとは不埒極まる」を英語にすると「It was extraordinarily rude of him to make such a remark to his superiors」となります。
「不埒」の意味
「不埒」とは
「不埒」とは、道理に外れていてけしからぬことを意味しています。
「不埒」の読み方
「不埒」の読み方は「ふらち」です。誤って「ぶらち」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「不埒な女」「不埒な関係」「不埒な輩」
「不埒な女」「不埒な関係」「不埒な輩」「不埒者」などが、「不埒」を使った一般的な言い回しになります。
「不埒」の使い方
「不埒」を使った分かりやすい例としては、「規則を破る不埒者にはなりたくありません」「人を騙すなんて不埒千万です」「不埒な行為を許すなんてできません」「不埒な人に注意したとしても無駄だろう」などがあります。
「不埒」は道理に外れていてけしからぬことの他に、要領を得ないことの意味も持つ言葉ですが、現代では後者の意味で使うことはほとんどありません。
また、「不埒」は道理や礼儀に反している人に対して使う言葉です。そのため、基本的にマイナスなイメージを伴って使われています。
「不埒」の語源
「不埒」の語源は「埒」です。「埒」とは 物の周囲に仕切りとして設けた柵のことを意味しており、これが転じて、物事の区切りや限界などの意味でも使われるようになりました。
これに打ち消しを表す「不」が合わさり物事の区切りがないという意味になり、さらに転じて、道理に外れていてけしからぬことの意味で使われるようになったのです。
「不埒」の類語
「不埒」の類語・類義語としては、人に迷惑がかかるような不都合な行いをすることを意味する「不始末」、仏道にそむき罪になるような行為をすることを意味する「罪作り」、礼儀作法にはずれていることを意味する「無作法」などがあります。
「不届き」の意味
「不届き」とは
「不届き」とは、配慮や注意の足りないことを意味しています。その他にも、道や法に背いた行為をすることの意味も持っています。
「不届き」の読み方
「不届き」の読み方は「ふとどき」です。誤って「ぶとどき」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「不届き者め」「不届き千万」「不届きな点」
「不届き者め」「不届き千万」「不届きな点」などが、「不届き」を使った一般的な言い回しになります。
「不届き」の使い方
「万事不届きのないように注意しています」「不届きな振る舞いをして申し訳ないです」などの文中で使われている「不届き」は、「配慮や注意の足りないこと」の意味で使われています。
一方、「この不届き者、許さないぞ」「不届きな所行申し訳ございません」などの文中で使われている「不届き」は、「道や法に背いた行為をすること」の意味で使われています。
「不届き」は配慮や注意の足りないことや道や法に背いた行為をすることを意味する名詞です。現代ではどちらの意味でも使われていると覚えておきましょう。
また、「不届き」は江戸時代の奉行所おいても使われており、「不届きにつき」という判決をもらうと、追放刑以上の重い刑が執行されたと言われています。したがって、基本的にマイナスなイメージを伴って使う言葉です。
「不届き」の類語
「不届き」の類語・類義語としては、道理や道義に背くことを意味する「不法」、注意が行き届かないための失策のことを意味する「手抜かり」、手続きや仕事の上で不足や欠点があることを意味する「手落ち」、人としてのあり方や生き方に外れていることを意味する「非道」などがあります。
「不埒」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、道理に外れていてけしからぬことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「不埒」はマイナスなイメージで使われている言葉です。
「不届き」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、配慮や注意の足りないことを表現したい時などが挙げられます。その他にも、道や法に背いた行為をすることを表現したい時にも使います。
例文1と例文2の「不届き」は配慮や注意の足りないこと、例文3から例文5の「不届き」は道や法に背いた行為をすることの意味で使っています。
「不埒」と「不届き」はどちらも道徳や法などに背いた行いをすることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、「不埒」は道徳心に欠けているというニュアンスで使い、「不届き」はルールを守らない者というニュアンスで使うと覚えておきましょう。