似た意味を持つ「情景」(読み方:じょうけい)と「光景」(読み方:こうけい)と「風景」(読み方:ふうけい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「情景」と「光景」と「風景」という言葉は、自然などの景色という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
情景と光景と風景の違い
情景と光景と風景の意味の違い
情景と光景と風景の違いを分かりやすく言うと、情景は心を動かすような景色を表現する時に使い、光景は見たままの具体的な景色を表現する時に使い、風景は一般的な景色を表現する時に使うという違いです。
情景と光景と風景の語源の違い
情景の情は、物事に感じて起こる心の動き、おもむきや心情という意味を持つ漢字です。そのため、情景には心に何かを感じさせるような景色という意味があります。
風景の風は、人々に影響を与えてなびかせること、味わいやおもむきという意味を持つ漢字です。風景という言葉には、情景と違って人の心の動きに関する意味はないため、一般的な目に見える自然などのありさまを意味するのみとなります。
これらが情景と風景の明確な違いですが、情景も風景も、見た人を快い気持ちにするような景色に対して使われる言葉であることがわかります。
一方、光景の光には味わいやおもむきに関する意味はありません。そのため、情景や風景とは違い、目に見えるものの具体的な様子のみを意味する言葉となるため、見た人に不快感を与えるような景色に対しても使われる言葉です。
「親子の微笑ましい情景」「心あたたまる光景」「一家団欒の風景」のような使い方はできますが、「陰惨な光景」の光景を情景や風景に置き換えて使うことはできません。
情景の意味
情景とは
情景とは、心にある感じを起こさせる光景や場面を意味しています。
表現方法は「情景が浮かぶ」「情景を思い浮かべる」「情景が目に浮かぶ」
「情景を感じる」「情景が浮かぶ」「情景を思い浮かべる」「情景が目に浮かぶ」「情景を想像する」などが、情景を使った一般的な表現方法です。
「情景描写」の意味
情景を使った言葉として「情景描写」があります。これは、小説などにおける登場人物や読者が眺めている景色を表現している文章のことを指します。
例えばホラー小説において、ただ幽霊がいたと書くだけでは読者に恐ろしいだとか怖いといった感情を芽生えさせることはできません。その幽霊によって起きた現象がいかに恐ろしいかを読者に伝える表現をする必要があります。これが情景描写です。
「情景の念」と「情景反射」は誤字
また、情景を使った誤った言葉として「情景の念」、「情景反射」がありますが、どちらの言葉にも人の心を動かすような景色という意味はありません。
一つ目の「情景の念」は、本来「憧憬の念」(読み方:しょうけいのねん)と書き、あこがれの気持ちを意味する言葉で、「憧憬の念を抱く」という使い方である物事にあこがれることなどを意味する表現になります。
二つ目の「情景反射」は、本来「条件反射」と書き、一定の訓練や経験によってつくられた反射を意味する言葉です。犬にえさを与える際ベルを鳴らしていたら、ベルの音が鳴るだけで唾液などが出るといった現象を指します。
情景の類語
情景の類語・類義語としては、あるものを思い起こさせる顔つきや様子を意味する「面影」、遠くまで見渡すことを意味する「展望」、風景を文章に書き表すことを意味する「叙景」、その場所から見える全体の景色を意味する「全景」などがあります。
情景の情の字を使った別の言葉としては、変化していく物事のその時々の様子を意味する「情勢」、物事がある状態に至るまでの理由や状態を意味する「事情」、ある物事に向かって気持ちが燃え立つことを意味する「情熱」などがあります。
光景の意味
光景とは
光景とは、目前に広がる景色を意味しています。その他にも、ある場面の具体的なありさまという意味があります。
表現方法は「光景を見る」「光景が目に浮かぶ」「光景を目の当たりにする」
「光景を見る」「光景が目に浮かぶ」「光景を目の当たりにする」「微笑ましい光景」などが、光景を使った一般的な表現方法です。
「光景効果」は誤字
光景を使った誤った言葉として「光景効果」があります。本来「光背効果」(読み方:こうはいこうか)と書き、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象を意味する言葉です。
例えば、髪を染めていてピアスなどの装飾品をたくさん身に着けている強面の男性が、成績優秀で有名大学の研究所でいくつもの功績をあげているという事例があった場合、見た目に引っ張られて評価が下がる場合もあります。この影響が光背効果です。
光背効果はハロー効果とも言い、このハローは「後光が差す」の後光のことを示したものであるため、景色に関する意味はどこにもありません。
光景の類語
光景の類語・類義語としては、遠くを見渡すことを意味する「眺望」、ある場面でのものごとのありさまを意味する「場景」、おもむきやありさまを意味する「景趣」(読み方:けいしゅ)、規模が大きくてすばらしい眺めを意味する「壮観」などがあります。
光景の光の字を使った別の言葉としては、他の国や地方の風景や史跡などを見物することを意味する「観光」、自然の美しい眺めを意味する「風光」、室内に日光などの光を取り入れることを意味する「採光」、瞬間的に発する光を意味する「閃光」などがあります。
風景の意味
風景とは
風景とは、目に映る広い範囲のながめを意味しています。その他にも、ある場面のありさまという意味があります。
風景を使った言葉として、「風景構成法」「重点風景地区」があります。
「風景構成法」の意味
一つ目の「風景構成法」とは、芸術療法の一つで、統合失調症患者の現況を把握するために使われていた方法です。
患者の前で、画用紙の四周をサインペンで枠取りして患者に画用紙とサインペンを渡します。そして11のアイテムを伝えて、画用紙に好きなように描いてもらいます。描き終わったらクレヨンなどで色を付けて完成となります。
完成した絵を見て、画用紙のどこにどのような色が使われているか、アイテムそれぞれがどの位置にあるのか、どのような形をしているのかなどを分析し、患者の考え方や気持ちを分析する方法が風景構成法と呼ばれるやり方です。
「重点風景地区」の意味
二つ目の「重点風景地区」とは、岐阜県の各務原市で設けられている、特に重点的に良好な景観の保全や形成を進めていく地区のことで、建築物の高さや色彩、屋外広告などの基準を定めることで良好な状態を保っています。
日本では今日に至るまでに様々な建築物や構造物、工場、ビルなどが建てられ、街並みや自然景観は大きく変わりました。そのため、2005年に景観法が施行され、国全体で景観問題に向き合っていくこととなりました。その一環が、岐阜県での重点風景地区の指定です。
風景の類語
風景の類語・類義語としては、遠方の景色や遠くに見える景色を意味する「遠景」、主要題材を引き立たせる背後の光景を意味する「背景」、山と水のある自然の景色を意味する「山水」(読み方:さんすい)などがあります。
風景の風の字を使った別の言葉としては、その人の容姿や態度などに現れる品格を意味する「風格」、身分や職業をうかがわせるような外見上の様子を意味する「風体」、上品な趣があることを意味する「風流」などがあります。
情景の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人の心に作用するような景色を意味する時などが挙げられます。
例文2の「情景を想像する」という使い方をすることで、実際に目に見ていないものに対しても使うことが出来ます。情景のみで使う場合は目にした経験が必要であるため気を付けましょう。
光景の例文
この言葉がよく使われる場面としては、目の前に広がる具体的な景色を意味する時などが挙げられます。
例文1の「目を疑う」とは、実際に見ても信じられないほど不思議に思うことを意味する言葉です。光景と共に使うことで、不思議に思う光景という意味になりますが、良い意味でも悪い意味でも使われるため、この表現が使われている場合は文脈で判断しましょう。
風景の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一般的に目に見える景色を意味する時などが挙げられます。
例文3の「風景画」は基本的には絵画やイラストを指す言葉で、写真の場合は風景写真という表現を一般的には使います。
情景と光景と風景どれを使うか迷った場合は、心に作用する景色や場面を表す場合には「情景」を、目に見える具体的な景色や場面を表す場合は「光景」を、目に映る景色を表す場合は「風景」を使うと覚えておけば間違いありません。