似た意味を持つ「威圧」(読み方:いあつ)と「威嚇」(読み方:いかく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「威圧」と「威嚇」という言葉は、どちらも「恐怖心を感じさせる行為」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
威圧と威嚇の違い
威圧と威嚇の意味の違い
威圧と威嚇の違いを分かりやすく言うと、威圧よりも威嚇の方が、攻撃的で恐怖を感じさせる度合いが大きいという違いです。
威圧と威嚇の使い方の違い
一つ目の威圧を使った分かりやすい例としては、「子どもに威圧する態度をとってはいけません」「威圧的な患者への対応を看護学校で習いました」「威圧的な上司への対処法を教えてください」「第三国からの経済的威圧に対抗する」などがあります。
二つ目の威嚇を使った分かりやすい例としては、「平和を威嚇するような行為を許してはいけない」「核兵器使用の威嚇に強く抗議します」「パワハラ上司が部下の椅子を蹴飛ばし威嚇する」「カラスは人間に威嚇行為をすることがあります」などがあります。
威圧と威嚇の使い分け方
威圧と威嚇という言葉は、どちらも相手に恐怖心を与える行為を表すマイナスイメージの言葉ですが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
威圧とは、恐怖心を与えて相手を押さえつけたり、自分に従うように仕向ける行為を意味します。物理的に押さえつけるのではなく、険しい表情をしたり、にらみつけるなど態度で示すことです。また、本人は意識していなくても怖いオーラがあり、無意識に威圧的な雰囲気を持つ人もいます。
威嚇とは、自分は威力があることを相手に見せて、恐怖心を起こさせることを意味します。相手に直接的な暴力をふるうことはありませんが、机を叩いたり大声を出すなど攻撃に似たような行為や、攻撃をするふりをします。
つまり、威圧とは恐怖心を与える態度や雰囲気を表しますが、威嚇とは攻撃に似た行為により相手に恐怖心を与えることを意味します。二つの言葉を比べると、威圧よりも威嚇の方が、攻撃的で恐怖を感じさせる程度が大きいと言えるでしょう。
威圧と威嚇の英語表記の違い
威圧を英語にすると「coercion」「overbearing」「daunting」となり、例えば上記の「威圧する態度をとる」を英語にすると「take an overbearing attitude」となります。
一方、威嚇を英語にすると「threat」「intimidation」「menace」となり、例えば上記の「平和を威嚇する」を英語にすると「menace to the peace」となります。
威圧の意味
威圧とは
威圧とは、威光や威力で、相手を押さえつけることを意味しています。
表現方法は「威圧する」「威圧をかける」「威圧感」
「威圧する」「威圧をかける」「威圧感」などが、威圧を使った一般的な言い回しです。
威圧の使い方
威圧を使った分かりやすい例としては、「英語の先生は威圧的な人です」「威圧的な人といるとストレスが溜まる」「威圧的と高圧的は微妙に違います」「威圧感のある女だと思われていないだろうか」などがあります。
その他にも、「威圧的な態度を取る人の心理や特徴を解説します」「彼はすぐに声を荒げて威圧する」「課長の威圧的な態度はパワハラではないか」「威圧的な人は心の病気なのかもしれません」などがあります。
威圧の「威」は訓読みで「おどす」と読み、力で押さえつけ人を恐れさせることを表し、「圧」は訓読みで「おさえる」と読み、圧力を加えて相手の動きを封ずることを表します。威圧とは、威光や権力などで相手を恐れさせ、押さえつけることを意味する言葉です。
「威圧的」の意味
上記の例文にある「威圧的」とは、威力などで相手を押さえつけようとする様子を意味します。「威圧的な人」「威圧的な態度」などと使用し、ネガティブなイメージを伴います。
「威圧的訴訟」の意味
威圧を用いた日本語には「威圧的訴訟」があります。威圧的訴訟とは、個人や市民団体などによる批判や反対運動を封じ込めるために、政府や自治体あるいは企業が起こす訴訟のことです。「スラップ訴訟」「恫喝訴訟」とも言います。
威圧の対義語
威圧の対義語・反対語としては、うまく扱って自分の思う通りに従わせることを意味する「懐柔」、巧みに言いくるめることを意味する「篭絡」などがあります。
威圧の類語
威圧の類語・類義語としては、無理やり抑えつけることを意味する「抑圧」、支配者が権力を行使して抑圧することを意味する「弾圧」、武力や権力などで押さえつけることを意味する「圧迫」、強い力や権力で抑圧することを意味する「強圧」などがあります。
威嚇の意味
威嚇とは
威嚇とは、威力をもって脅すことを意味しています。
威嚇の読み方
威嚇の読み方は「いかく」です。誤って「いせき」「いしゃく」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「威嚇する」「威嚇をやめさせる」「威嚇行為」
「威嚇する」「威嚇をやめさせる」「威嚇行為」などが、威嚇を使った一般的な言い回しです。
威嚇の使い方
威嚇を使った分かりやすい例としては、「上司が威嚇的な態度で接してきます」「この威嚇行為はパワハラではないか」「警察官が空に向かって威嚇射撃をした」「威嚇飛行したことに対する謝罪を求める」などがあります。
その他にも、「威嚇する人の心理が知りたいです」「アライグマの威嚇らしきポーズがかわいい」「センサーライトで威嚇する使い方もできる防犯カメラです」「チョークを投げるぞと英語の先生が威嚇してきた」などがあります。
威嚇の「嚇」は訓読みで「おどす」と読み、真っ赤になって怒ることや、相手を恐れさせることを表します。人を恐れさせる力を表す「威」と結び付き、威嚇とは、 威力を相手に示して脅すことを意味します。実際の攻撃ではなく、それに似た行為や様子を見せることで脅かすことを表現する言葉です。
「威嚇射撃」の意味
威嚇を用いた日本語には「威嚇射撃」があります。威嚇射撃とは、威力を示し相手を恐れさせるためにする射撃を意味します。標的そのものを狙わず、周囲などを撃って威嚇することです。
威嚇の対義語
威嚇の対義語・反対語としては、慰めいたわることを意味する「慰撫」、巧みに手なずけて自分の思いどおりに操ることを意味する「籠絡」などがあります。
威嚇の類語
威嚇の類語・類義語としては、相手にあることをさせようと脅しつけることを意味する「脅迫」、どなったりして人を脅すことを意味する「威喝」、人をおどして恐れさせることを意味する「恫喝」、相手の弱みなどにつけこみ脅すことを意味する「恐喝」などがあります。
威圧の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 威光や威力で、相手をおさえつけることを表現したい時などが挙げられます。
例文4や例文5にある「威圧感」とは、威圧されるような感覚のことであり、圧倒される感じや雰囲気があることを意味します。
威嚇の例文
この言葉がよく使われる場面としては、威力を相手に示して脅すことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「威嚇音」とは、威嚇をするために発する音や鳴き声を意味します。イノシシであれば、牙と歯を擦り合わせ「カチカチ」「クチャクチャ」と威嚇音を出します。
威圧と威嚇という言葉は、どちらも「恐怖心を感じさせる行為」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、攻撃するふりなど、より強い恐怖心を感じさせる行為を表現したい時は「威嚇」を使うようにしましょう。