似た意味を持つ「勘当」(読み方:かんどう)と「絶縁」(読み方:ぜつえん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「勘当」と「絶縁」という言葉は、どちらも「縁を切ること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
勘当と絶縁の違い
勘当と絶縁の意味の違い
勘当と絶縁の違いを分かりやすく言うと、勘当とは親が子の縁を切ることや師が弟子の縁を切ることを意味し、絶縁とは様々な関係性の付き合いを絶つことを意味するという違いです。
勘当と絶縁の使い方の違い
一つ目の勘当を使った分かりやすい例としては、「ついに彼は道楽息子を勘当することにした」「勘当同然で家を出て英語教師になりました」「勘当したとしても戸籍を抜くことはできません」などがあります。
二つ目の絶縁を使った分かりやすい例としては、「絶縁状態の弟から突然連絡がきた」「兄弟の縁を切りたいので絶縁状を送ります」「絶縁抵抗計の原理を説明します」「端子用絶縁キャップを探しています」「漏れ電流測定に絶縁トランスを使う」などがあります。
勘当と絶縁の使い分け方
勘当と絶縁という言葉は、どちらも関係を断ち切ることや付き合いを絶つことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
勘当とは、親が子に対して親子の縁を切ることや、師が弟子に対して師弟の縁を切ることを意味します。目上の者が目下の者に用いる言葉であり、親子関係や師弟関係など使い方は限定的です。ただし、日本の法律には勘当の制度がなく、親が子供に勘当を言い渡しても法的効力はありません。
絶縁とは、親子関係や師弟関係に限らず、広く交友関係を含む付き合いを絶つことを意味します。「絶縁状」とは、付き合いを絶つことを宣言する書面のことです。また、電気や熱の伝導を絶つことの意味を持ち、上記例文の「絶縁抵抗計」「絶縁トランス」はこの意味で使用されています。
つまり、勘当とは親や師が子や弟子の縁を切ることを意味する限定的な表現であり、絶縁とは関係性や立場に限定されず付き合いを絶つことを意味します。二つの言葉を比べると、勘当よりも絶縁の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
勘当と絶縁の英語表記の違い
勘当を英語にすると「disowning」「disinheritance」となり、例えば上記の「道楽息子を勘当する」を英語にすると「disown spendthrift son」となります。
一方、絶縁を英語にすると「isolation」「insulation」となり、例えば上記の「絶縁状態」を英語にすると「insulated state」となります。
勘当の意味
勘当とは
勘当とは、親が子との縁を切ること、主従関係・師弟関係を断つことを意味しています。
その他にも、「責めて叱ること」の意味も持っています。
勘当の読み方
勘当の読み方は「かんどう」です。誤って「かんとう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「勘当する」「勘当されたら」
「勘当する」「勘当されたら」などが、勘当を使った一般的な言い回しです。
勘当の使い方
「勘当の法的な手続きはありますか」「悪事が親にばれたら勘当されるだろう」「子どもから勘当することはできますか」「勘当された子でも法律上は親子です」などの文中で使われている勘当は、「親が子との縁を切ること」の意味で使われています。
一方、「不正経理を行った者に対する勘当であった」「怠慢な態度を厳しく勘当された」「安全確認を怠った部下を勘当する」などの文中で使われている勘当は、「責めて叱ること」の意味で使われています。
勘当の「勘」は罪を調べ正すことを表し、「当」は当てはめることを表す漢字です。勘当とは、もともと罪を勘 (かんが) えて法に当てることをいい、中世では主君や親などから咎めを受けることの意味に使われました。現在では、主に親が子を家から追放することを指す言葉になっています。
「内証勘当」の意味
勘当を用いた日本語には「内証勘当」(読み方:ないしょかんどう)があります。江戸時代の勘当は、奉行所に届け出て公式に親子関係を断つものでしたが、奉行所に届けず口頭または文書で申し渡しただけの勘当を「内証勘当」と言いました。
勘当の対義語
勘当の対義語・反対語としては、法律上で親子の関係を結ぶことを意味する「養子縁組」などがあります。
勘当の類語
勘当の類語・類義語としては、夫婦や養親子の関係を絶つことを意味する「離縁」、親子や兄弟など肉親との関係を絶つことを意味する「義絶」、いとまごいをして別れることを意味する「決別」、行動を共にした人と別れることや離別することを意味する「袂を分かつ」などがあります。
絶縁の意味
絶縁とは
絶縁とは、関係を絶つこと、縁を絶ち切ることを意味しています。
その他にも、「導体の間に絶縁体を入れて、電気や熱の伝導を絶つこと」の意味も持っています。
絶縁の読み方
絶縁の読み方は「ぜつえん」です。同じ読み方をする熟語に「絶遠」や「舌炎」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「絶縁状態」「絶縁家族」
「絶縁状態」「絶縁家族」などが、絶縁を使った一般的な言い回しです。
絶縁の使い方
「あの親子は今でも絶縁状態にある」「親の介護で兄弟姉妹が絶縁する」「絶縁状態の親の遺産は相続できますか」「法律的に親と絶縁する方法はありません」などの文中で使われている絶縁は、「関係を絶つこと」の意味で使われています。
一方、「絶縁体にはゴムやプラスチックがあります」「絶縁抵抗測定の使い方を教えてください」「ビニールテープは絶縁テープにもなります」「絶縁手袋をネットで買いました」などの文中で使われている絶縁は、「電気や熱の伝導を絶つこと」の意味で使われています。
絶縁の「絶」は訓読みで「たつ」と読み、途中でたち切ることや関係が切れることを表します。関係や繋がりを表す「縁」と組み合わさり、絶縁とは、関係を断ち切ることを意味します。また、電流が伝わるのを断ち切ることも意味する言葉です。
「絶縁テープ」の意味
絶縁を用いた日本語には「絶縁テープ」があります。絶縁テープとは、ゴムやビニールなどでできた電気絶縁用の粘着テープのことです。導線の接合部分に巻いたり、電気器具にはりつけたりして使用します。
絶縁の対義語
絶縁の対義語・反対語としては、関係ができることや親類になることを意味する「結縁」、電流が身体に流れて衝撃を受けることを意味する「感電」などがあります。
絶縁の類語
絶縁の類語・類義語としては、交際を絶つことを意味する「絶交」、交際をやめることや国家間の交流を絶つことを意味する「断交」、会談や交渉などで意見が一致せず物別れになることを意味する「決裂」、悪い関係や男女関係を断ち切ることを意味する「手を切る」などがあります。
勘当の例文
この言葉がよく使われる場面としては、親族・主従・師弟などの間柄を上位者側から断絶する行為、きびしく責めることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、勘当という言葉は、きびしく責めることの意味で使用されることは少なく、親族や師弟などの間柄を上位者側から断絶する行為の意味で用いられています。
絶縁の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 関係を断ち切ることや縁を切ること、 導体の間に電気または熱の絶縁体を入れて、電荷の流れまたは熱の伝導を遮断することを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある絶縁は、 関係を断ち切ることや縁を切ることの意味で用いられています。例文5の絶縁は、電荷の流れを遮断することの意味で用いられています。
勘当と絶縁という言葉は、どちらも「縁を切ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、親が子の縁を切ることや師が弟子の縁を切ることを表現したい時は「勘当」を、広く付き合いを絶つことを表現したい時は「絶縁」を使うようにしましょう。