似た意味を持つ「ゼロサム」と「トレードオフ」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「ゼロサム」と「トレードオフ」という言葉は、「一方が利益を得て他方が犠牲になること」という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
ゼロサムとトレードオフの違い
ゼロサムとトレードオフの意味の違い
ゼロサムとトレードオフの違いを分かりやすく言うと、ゼロサムは合計がプラスマイナスゼロになることを表現する時に使い、トレードオフは必ずしもプラスマイナスゼロではないことを表現する時に使うという違いです。
ゼロサムとトレードオフの使い方の違い
一つ目のゼロサムを使った分かりやすい例としては、「ゼロサムゲーム理論を応用すれば経営方法の一助となる」「ゼロサム状態では経営難に陥りかねない」「ゼロサム思考は他者を排除する言動に繋がる可能性がある」などがあります。
二つ目のトレードオフを使った分かりやすい例としては、「トレードオフの関係とはいえいずれどちらの目標も達成されるべきだ」「トレードオフは常に抱えており、時間と金銭は代表的なものと言える」などがあります。
ゼロサムとトレードオフの使い分け方
ゼロサムとトレードオフはどちらも、一方の利益のために他方を犠牲にすることやその関係性を指す言葉ですが、結果が若干異なります。
ゼロサムは、利益を得た人と損をした人がいても全体としてはプラスマイナスがゼロになることを意味する言葉で、上記例文の「ゼロサムゲーム」「ゼロサム思考」などのように使われています。
一方のトレードオフは、二つの目標を掲げた時に、他方の目標を諦めなければ達成が難しいという関係性を表す言葉で、政治や経済だけでなく日常生活においてもこの考え方が用いられています。
つまり、ゼロサムは全体で見ればプラスマイナスゼロの結果となり、トレードオフは必ずしもプラスマイナスがゼロになるとは限らない関係性を表すという違いがあります。
ゼロサムとトレードオフの英語表記の違い
ゼロサムを英語にすると「zero-sum」となり、例えば上記の「ゼロサムゲーム」を英語にすると「a zero-sum game」となります。
一方、トレードオフを英語にすると「trade-off」となり、例えば上記の「トレードオフの関係」を英語にすると「trade-off relation」となります。
ゼロサムの意味
ゼロサムとは
ゼロサムとは、損得が発生したとしても全体としてマイナスゼロの状態になることを意味しています。
表現方法は「ゼロサム状態」「ゼロサム理論」
「ゼロサム状態」「ゼロサム理論」などが、ゼロサムを使った一般的な言い回しです。
ゼロサムの使い方
ゼロサムを使った分かりやすい例としては、「ゼロサムゲームの理論で言えば自社は損をしていないことになる」「ゼロサム状態が続けばいつか綻びが生まれる」「ゼロサム経済になりかねない場合の政策に期待が高まる」などがあります。
その他にも、「どうしてもゼロサム思考をしてしまい他者への優しさを忘れてしまうことがある」「ゼロサム社会では利益を得続ける人と搾取され続ける側に分かれる」「いつかはゼロサムを脱却しなければならない」などがあります。
ゼロサムは英語で「zero-sum」と表記され、「零和」を意味する言葉として使われています。日本語でも同じように使われており、一方が利益を得た場合、他方は同じだけの損をしているため、全体としてプラスマイナスがゼロになることを表します。
「ゼロサムゲーム」の意味
上記例文の「ゼロサムゲーム」とは、複数人が相互に影響を与え合う状況で、全員の損得を合計した時にゼロになるゲームを指す言葉で、「ゼロ和ゲーム」とも呼ばれています。勝者のポイントは敗者のポイントであるのが特徴で、競馬などの賭博もこれに該当します。
「ゼロサム思考」の意味
また、上記例文の「ゼロサム思考」は、物事を二極化して考えて一方は勝者、他方は敗者と考える思考を指し、ゼロサムから派生した言葉です。ゼロサムゲームとは規模が異なり、個人の状況に当てはめて考えられるのが特徴です。
ゼロサムの対義語
ゼロサムの対義語・反対語としては、両者にとって都合がいいことを意味する「ウィンウィン」があります。
ゼロサムの類語
ゼロサムの類語・類義語としては、参加者の利得の合計がプラスになることを意味する「プラスサム」、参加者の利得の合計がマイナスになることを意味する「マイナスサム」などがあります。
トレードオフの意味
トレードオフとは
トレードオフとは、一方の達成のために他方を犠牲にしなければならないことを意味しています。
表現方法は「トレードオフを行なう」「トレードオフを解消」「トレードオフになる」
「トレードオフを行なう」「トレードオフを解消」「トレードオフになる」などが、トレードオフを使った一般的な言い回しです。
トレードオフの使い方
トレードオフを使った分かりやすい例としては、「探してみればトレードオフの関係にあるものは身近にいくつもある」「トレードオフ状態である政治では民衆はなかなか納得しないだろう」「トレードオフ理論を用いることで企業価値を高められる」などがあります。
その他にも、「飲食店におけるトレードオフは難しいところだ」「効率を重視するトレードオフであれば品質が落ちる可能性もある」「トレードオフの状態を打開する方法が思いつかない」などがあります。
トレードオフは英語で「trade-off」と表記され、「取引」「交換」を意味する言葉として使われています。日本語でも同じように使われていますが、取引や交換を経た結果を重視して使われることがほとんどです。
経済学で多く使われる言葉ですが、日常生活でもトレードオフの考え方が使われており、安さと品質は両立しない要素であり、高い金額で高品質のものを得るか、低い金額で低品質のものを得るか、といったこれら選択肢の関係性がトレードオフに該当します。
どちらを優先するかではなく、妥協点を見つけるなどで条件を緩和させることで両立させていると言える状態にすることも可能です。
このように、新しい価値や選択肢を見出すことで複数の目標を達成することを意味する「トレードオン」が挙げられますが、トレードオフの対となる表現をするために生み出された造語です。
トレードオフの対義語
その他のトレードオフの対義語・反対語として、一つの事柄によって二つの利益を収めることを意味する「一挙両得」、ある程度のところで満足して双方が譲り合うことを意味する「妥協」があります。
トレードオフの類語
トレードオフの類語・類義語としては、得もある一方で損もあることを意味する「一得一失」、二つのことを同時に成し遂げられず失敗に終わることを意味する「二兎を追う者は一兎をも得ず」などがあります。
ゼロサムの例文
この言葉がよく使われる場面としては、損得が発生したとしても全体としてマイナスゼロの状態になることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「ノンゼロサム」とは、利益と損失の総和がゼロにならない状態を意味する言葉で、「非ゼロサム」とも呼ばれています。
トレードオフの例文
この言葉がよく使われる場面としては、一方の達成のために他方を犠牲にしなければならないことを意味する時などが挙げられます。
政治や経済学だけでなく、例文5のように生物学においても使われています。
ゼロサムとトレードオフは、どちらも「一方が利益を得て他方が犠牲になること」を表します。
どちらを使うか迷った場合は、合計がプラスマイナスゼロになることを表す場合は「ゼロサム」を、必ずしもプラスマイナスゼロではないことを表す場合は「トレードオフ」を使うと覚えておけば間違いありません。