似た意味を持つ「弛緩」(読み方:しかん)と「収縮」(読み方:しゅうしゅく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「弛緩」と「収縮」という言葉は、どちらも「心臓や筋肉の動き」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
弛緩と収縮の違い
弛緩と収縮の意味の違い
弛緩と収縮の違いを分かりやすく言うと、弛緩とはゆるむことを表し、収縮とは縮まることを表すという違いです。
弛緩と収縮の使い方の違い
一つ目の弛緩を使った分かりやすい例としては、「筋肉が弛緩した状態でリラックスさせる」「緊張と弛緩を交互に行う体操です」「後遺症で左半身が弛緩している」「呼吸法や筋弛緩法などを実演する」などがあります。
二つ目の収縮を使った分かりやすい例としては、「乾燥による収縮でひび割れが起きる」「心臓の収縮で血液を送り出す」「プラスチックの収縮率の計算方法を教えてください」「収縮目地の適切な間隔はどれぐらいですか」などがあります。
弛緩と収縮の使い分け方
弛緩と収縮という言葉は、どちらも心臓や筋肉の動きを表現し、医療用語でも使用される言葉ですが、意味や使い方には大きな違いがあります。
弛緩とは、ゆるむことを意味します。「弛緩出血」や「弛緩性便秘」のように医療用語として多く使用される言葉です。「弛緩出血」とは、出産の際に赤ちゃんと胎盤がお腹から出た後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血がだらだらと続いてしまう状態のことです。
収縮とは、縮まることや縮小することを意味します。収縮という言葉も、医療に関して使われている言葉です。血液を心臓から全身に送り出す収縮期に、心臓内で発生する雑音を「収縮期雑音」と言います。
つまり、弛緩と収縮という言葉は、たるんでゆるむことか引き締まって縮まるかの違いがあり、相反する意味を持つ言葉なのです。
弛緩と収縮の英語表記の違い
弛緩を英語にすると「slackness」「relaxation」「chalasia」となり、例えば上記の「弛緩した状態で」を英語にすると「in a relaxed state」となります。
一方、収縮を英語にすると「contraction」「deflation」「shrink」となり、例えば上記の「収縮の影響」を英語にすると「shrinkage effect」となります。
弛緩の意味
弛緩とは
弛緩とは、ゆるむこと、たるむことを意味しています。
弛緩の読み方
弛緩は正しくは「しかん」と読みますが、慣用読みで「ちかん」とも読まれることもあります。
表現方法は「弛緩する」「弛緩性」「弛緩させる」
「弛緩する」「弛緩性」「弛緩させる」などが、弛緩を使った一般的な言い回しです。
弛緩の使い方
弛緩を使った分かりやすい例としては、「全身の筋肉を弛緩させる」「声帯が適度に弛緩した状態で英語を発音する」「簡単にできる筋弛緩法があります」「教室内は弛緩した空気に包まれていた」などがあります。
その他にも、「大腸の機能が低下して弛緩性便秘になってしまった」「子宮の収縮が進まずに弛緩出血が続いている」「弛緩性麻痺に対するリハビリを受けている」「手術で筋弛緩剤が使用します」などがあります。
弛緩とは、たるんだようになってゆるむことや、緊張していたものの緊張がゆるむこと意味します。弛緩の「弛」と「緩」は、どちらも訓読みで「ゆるむ」と読み、ピンと張ったものがたるむことや、緊張がほぐれることを表す漢字であり、弛緩は同じ意味を重ねて強調した表現です。
「弛緩性便秘」の意味
弛緩を用いた日本語には、「弛緩性便秘」があります。弛緩性便秘とは、排便で息む時に使う腹筋が弱くなることで大腸が弛緩し、大腸内に便が長くとどまって水分が過剰に吸収されて硬くなることを言います。
弛緩の対義語
弛緩の対義語・反対語としては、心や体が引き締まることを意味する「緊張」などがあります。
弛緩の類語
弛緩の類語・類義語としては、気持ちなどがゆるんで締りがなくなるを意味する「だれる」、動きがゆったりしてのろいことを意味する「緩慢」、力が抜けてぐったりしてしまうことを意味する「脱力」などがあります。
収縮の意味
収縮とは
収縮とは、ひきしまって小さくなること、縮むこと、縮めることを意味しています。
表現方法は「収縮する」「収縮させる」「収縮菅」
「収縮する」「収縮させる」「収縮菅」などが、収縮を使った一般的な言い回しです。
収縮の使い方
収縮を使った分かりやすい例としては、「ぼうこうが異常に収縮する」「金属は冷やすと収縮するものです」「子どもの心音から収縮期雑音が確認された」「収縮期血圧と拡張期血圧ではどちらが重要ですか」などがあります。
その他にも、「収縮期血圧はどれぐらいですか」「熱収縮チューブをネットで注文しました」「収縮型ダイアゴナルについて解説します」「ゾウリムシの収縮胞を観察する」「父は収縮性心膜炎の治療を受けています」などがあります。
収縮の「収」は、落ち着いて穏やかな状態になることや、争いや動揺がしずまることを表します。「縮」は訓読みで「ちぢむ」と読み、長さや面積あるいは容積などが短くなったり小さくなったりすることを表します。収縮とは、ひきしまって縮まること、ひきしめて縮めることを意味する言葉です。
「収縮期血圧」の意味
上記の例文にある「収縮期血圧」とは、心臓が収縮したときの血圧であり、俗に「最高血圧」と言います。反対に、心臓が拡張した時の血圧は「拡張期血圧」であり、「最低血圧」とも言います。
収縮の対義語
収縮の対義語・反対語としては、ふくれあがることを意味する「膨脹」、広がって大きくなることを意味する「拡大」などがあります。
収縮の類語
収縮の類語・類義語としては、しぼんで縮むことを意味する「萎縮」、縮まって小さくなることを意味する「縮小」、こり固まって縮まることを意味する「凝縮」、時間や距離などの長さを縮めて短くすることを意味する「短縮」などがあります。
弛緩の例文
この言葉がよく使われる場面としては、たるんだようになって緩むことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文4にある「筋弛緩剤」とは、「筋弛緩薬」とも言い、神経や細胞膜などに作用して筋肉の動きを弱める医薬品です。例文3の「漸進性筋弛緩法」とは、アメリカの精神科医エドモンド・ジェイコブソンが考案したリラックス法の一つです。
収縮の例文
この言葉がよく使われる場面としては、縮まること、縮むこと、縮めることを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある収縮と萎縮の違いは、収縮は物体だけでなく事態が小さくなることを表し、萎縮は物体が小さくなることのみを表す点にあります。例文3の収縮と伸縮の違いは、収縮は全体的に縮むことを表し、伸縮は縦方向の伸び縮みを意味する点にあります。
弛緩と収縮という言葉は、どちらも「心臓や筋肉の動き」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、ゆるむことを表現したい時は「弛緩」を、縮むことを表現したい時は「収縮」を使うようにしましょう。