似た意味を持つ「不穏当」(読み方:ふおんとう)と「不穏」(読み方:ふおん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不穏当」と「不穏」という言葉は、どちらも「穏やかでないこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
不穏当と不穏の違い
不穏当と不穏の意味の違い
不穏当と不穏の違いを分かりやすく言うと、不穏当とは言動などが不適切であることを表し、不穏とは状況や状態が穏やかでないことを表すという違いです。
不穏当と不穏の使い方の違い
一つ目の不穏当を使った分かりやすい例としては、「不穏当な処置であると非難が相次いだ」「不穏当な言動をした者を退場させる」「議会で市議による不穏当発言がありました」「議員の不穏当な言辞の取消しを命じる」などがあります。
二つ目の不穏を使った分かりやすい例としては、「どんよりと灰色の雲が広がる不穏な空模様である」「市場の不穏な動きを察知する」「患者は不穏状態にあるようだ」「不穏分子の活動は治安当局に監視されている」などがあります。
不穏当と不穏の使い分け方
不穏当と不穏という言葉は、どちらも穏やかでないことを表すマイナスイメージの言葉ですが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
不穏当とは、穏やかでないこと、差し障りがあって不適切であることを意味します。上記の例文にある「不穏当な言辞」とは、その場や状況ににふさわしくない言葉や言葉遣いのことです。不穏当という言葉は、問題があるような発言や行動に対して用いられることが多くあります。
不穏とは、穏やかでないこと、状況が不安定であること、治安を乱すおそれのあることを意味します。日常会話からビジネスシーンまで幅広く用いられており、「患者は不穏状態にある」のように医療や介護の分野でも用いられる言葉です。
つまり、不穏当とは言動などが不適切であることを表現し、不穏とは状況や状態が穏やかでないことを表す言葉です。二つの言葉はよく似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
不穏当と不穏の英語表記の違い
不穏当を英語にすると「impropriety」「unjust」「inappropriate」となり、例えば上記の「不穏当な処置」を英語にすると「unjust measure」となります。
一方、不穏を英語にすると「threatening」「disquieting」「turbulent」となり、例えば上記の「不穏な空模様」を英語にすると「threatening sky」となります。
不穏当の意味
不穏当とは
不穏当とは、差し障りがあって適当でないこと、穏やかでないことを意味しています。
不穏当の読み方
不穏当の読み方は「ふおんとう」です。誤って「ふいんとう」「ぶおんとう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「不穏当な発言」「不穏当な言辞」
「不穏当な発言」「不穏当な言辞」などが、不穏当を使った一般的な言い回しです。
不穏当の使い方
不穏当を使った分かりやすい例としては、「党首が不穏当な発言を繰り返した」「不穏当な言辞を弄し停職処分を受けた」「今さら話を蒸し返すのは不穏当だ」「英語教師は不穏当な発言があったと謝罪しました」などがあります。
その他にも、「品位を欠く不穏当発言はおやめください」「公述人に不穏当な言動があった時は退場を命ずる」「不穏当な言辞を用いて侮辱したことが問題です」「発言は不穏当で不適切だったと謝罪した」などがあります。
不穏当とは、「不」と「穏当」から成る熟語です。「穏当」とは、物事に無理がなく道理にかなっているさまを表します。打ち消しの助字「不」と結びつき、不穏当とは、物事に差し支えがあるさま、穏やかでないことを意味します。
「不穏当発言」の意味
上記の例文にある「不穏当発言」とは、その場の状況や、話題となっている事柄に対する配慮を欠いた発言のことです。「不適切発言」と言い換えることもできます。国会や議会などにおける失言や暴言を指していうことが多くあります。
不穏当の対義語
不穏当の対義語・反対語としては、穏やかで無理がないことを意味する「穏当」などがあります。
不穏当の類語
不穏当の類語・類義語としては、慎みのないことや不真面目なことを意味する「不謹慎」、わきまえのないことや心がけの悪いことを意味する「不心得」、常識を欠いていることを意味する「非常識」、思慮がなく軽率なことを意味する「無分別」などがあります。
不穏の意味
不穏とは
不穏とは、穏やかでないこと、状況が不安定で危機や危険をはらんでいることを意味しています。
表現方法は「不穏状態」「不穏行動」「不穏な空気」
「不穏状態」「不穏行動」「不穏な空気」などが、不穏を使った一般的な言い回しです。
不穏の使い方
不穏を使った分かりやすい例としては、「教室に入ると不穏な空気が漂っていた」「不穏な時代をどのように生きるべきか」「金融市場に不穏な動きが現れ始めた」「組織の中には必ず不穏分子がいます」などがあります。
その他にも、「不穏症状がある入所者を介助する」「不穏状態時の看護計画を立てました」「夜間の不穏は介護者の負担になります」「不穏時用として薬が処方されました」「不穏とせん妄の違いをご存知でしょうか」などがあります。
不穏とは、文字通り「穏やかでないこと」を意味し、物事や世の中の状態が安定していないことを表します。日常会話で使用されるだけでなく、医療の現場でも使用され、患者が落ち着きなく興奮している状態を指します。特に、介護用語の「不穏」は、認知症の人が不安で落ち着かない様子を言います。
「不穏分子」の意味
不穏を用いた日本語には「不穏分子」(読み方:ふおんぶんし)があります。「不穏分子」とは、ある社会や集団内で、治安や秩序を乱す行動を企てる人のことです。類義語には「危険分子」があります。
不穏の対義語
不穏の対義語・反対語としては、変わったこともなく穏やかなことを意味する「平穏」などがあります。
不穏の類語
不穏の類語・類義語としては、表情や性質がとげとげしくなることを意味する「険悪」、よくない事が起きたりしそうな危険な感じがすることを意味する「物騒」、危険な感じがするさまや不安を覚えるさまを意味する「剣呑」などがあります。
不穏当の例文
この言葉がよく使われる場面としては、穏やかでないこと、不適当で差し障りがあることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、不穏当の慣用的な言い回しには「不穏当な言動」「不穏当発言」「不穏当な表現」などがあります。不穏当という言葉は、ビジネスシーンや改まった場面で使用されることが多い表現です。
不穏の例文
この言葉がよく使われる場面としては、穏やかでないこと、物事や世の中の状態が安定していないこと、治安を乱すおそれのあることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、不穏という言葉は医療用語や介護用語としても用いられています。例文2の「不穏行動」とは、落ち着かなくなっており、叫んだり暴れたりするなど普通ではない行動を意味します。例文3の「不穏状態」とは、周囲への警戒心が強く、興奮状態が抑えられない状態のことです。
不穏当と不穏という言葉は、どちらも「穏やかでないこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、言動などが不適切であることを表現したい時は「不穏当」を、状況や状態が穏やかでないことを表現したい時は「不穏」を使うようにしましょう。