似た意味を持つ「殊勝」(読み方:しゅしょう)と「健気」(読み方:けなげ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「殊勝」と「健気」という言葉は、どちらもを「心がけが立派な様子」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
殊勝と健気の違い
殊勝と健気の意味の違い
殊勝と健気の違いを分かりやすく言うと、殊勝とは心掛けが立派であるさまを表し、健気とは弱い者が困難に立ち向かうさまを表すという違いです。
殊勝と健気の使い方の違い
一つ目の殊勝を使った分かりやすい例としては、「小学生とは思えない殊勝な心がけに感心した」「使える英語を身に付けたいなんて殊勝な心掛けだ」「インタビューで殊勝な態度を見せた」「先生の説教を殊勝顔で聞く」などがあります。
二つ目の健気を使った分かりやすい例としては、「健気な少年はバイト代を家に入れている」「病と闘いながらも健気に日々を生きる」「わんちゃんの健気な姿に笑みがこぼれる」「厳しい冬に咲く椿の健気さに感動する」を表などがあります。
殊勝と健気の使い分け方
殊勝と健気という言葉は、どちらも心の持ちようが立派なさまや、感心するほど優れているさまを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
殊勝とは、心の持ちようが立派で、褒めるべきさまであることを意味します。目下の者を評価する表現であり、目下の人が目上の人に用いることは失礼とされる言葉です。また、神妙な顔つきを「殊勝顔」と言い、その様子を揶揄して皮肉めいた表現に用いられることがあります。
健気とは、子どもや女性など力の弱い者が、困難や苦難などに立ち向かって、くじけずに立派に振るまっている様子を意味します。健気は、気丈にふるまうさまを表す誉め言葉ですが、殊勝と同様に目上の人に使用することはできません。
つまり、健気という言葉には、困難や苦難などに立ち向かうという意味合いがあることが、二つの言葉の明確な違いになります。
殊勝と健気の英語表記の違い
殊勝を英語にすると「admirable」「commendable」「creditable」となり、例えば上記の「殊勝な心がけ」を英語にすると「a commendable purpose」となります。
一方、健気を英語にすると「courageous」「brave」となり、例えば上記の「健気な少年」を英語にすると「a brave boy」となります。
殊勝の意味
殊勝とは
殊勝とは、とりわけ優れているさまを意味しています。
その他にも、「心がけや行動などが感心なさま、健気であるさま」「神々しいさま、心打たれるさま」の意味も持っています。
殊勝の読み方
殊勝の読み方は「しゅしょう」です。同じ読み方をする熟語に「首相」や「主将」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「殊勝な態度」「殊勝な面持ち」「殊勝な人」
「殊勝な態度」「殊勝な面持ち」「殊勝な人」などが、殊勝を使った一般的な言い回しです。
殊勝の使い方
「殊勝な人は常に向上心を持っています」「殊勝なことを言うようになった」「成し遂げるには殊勝な努力が必要だ」などの文中で使われている殊勝は、「とりわけ優れているさま」の意味で使われています。
一方、「ゴミ拾いとは殊勝な心がけだな」「殊勝な態度で反省をみせる」「やけに殊勝なことを言う」の文中で使われている殊勝は「健気であるさま」の意味で、「神社では殊勝な気分になる」「監督は殊勝な顔で話し始めた」の文中で使われている殊勝は「神々しいさま」の意味で使われています。
殊勝とは、複数の意味を持つ言葉ですが、一般的には「心がけや行動などが感心なさま、健気であるさま」の意味で用いられています。「とりわけ優れているさま」「神々しいさま、心打たれるさま」の意味は古語的な用法で、あまり使用されることはありません。
殊勝の語源
殊勝という言葉の語源は、仏教に由来します。仏教用語である殊勝は、文字通りに「殊に勝れていること」を意味し、仏のすぐれた智慧を「殊勝智」と呼びました。仏教においては、とくに日々の行いが謙虚であり心がけがよいことを「殊勝」と表現しています。
殊勝は目下の人に使う言葉
殊勝という言葉は、基本的に目上の人が目下の人に対して褒める場合に使用されます。目下の者が目上の人に「殊勝な心がけですね」などと用いることは、失礼に捉えられる可能性があるので使い方に注意しましょう。
殊勝の対義語
殊勝の対義語・反対語としては、威張って人を無視した態度をとることを意味する「横柄」、おごり高ぶって威張っていることを意味する「傲岸」などがあります。
殊勝の類語
殊勝の類語・類義語としては、 普通の場合とは程度や事柄が違っていることを意味する「格別」、心がけや行いが立派ですぐれていることを意味する「神妙」、言行や心がけなどがすぐれていて褒めるに値するさまを意味する「奇特」などがあります。
健気の意味
健気とは
健気とは、殊勝なさま、心がけがしっかりしているさま、特に年少者や力の弱い者が困難なことに立ち向かっていくさまを意味しています。
その他にも、「勇ましく気丈なさま」「健康であるさま」の意味も持っています。
健気の読み方
健気の読み方は「けなげ」です。誤って「けんき」「けんけ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「健気な女性」「健気すぎる」「健気に待つ」
「健気な女性」「健気すぎる」「健気に待つ」などが、健気を使った一般的な言い回しです。
健気の使い方
「いつも笑顔を絶やさない健気な女性が好きです」「彼女は不平不満を言わない健気な人です」「BL漫画の健気受けに惹かれる」「苦手な英語を健気に頑張っている」などの文中で使われている健気は、「心がけがしっかりしているさま」の意味で使われています。
一方、「彼はタフで健気な性格だ」「ショックを隠して健気に振る舞っている」などの文中で使われている健気は「勇ましく気丈なさま」の意味で、「早寝早起きは人を健気にする」「食生活に注意して健気に過ごす」などの文中で使われている健気は「健康であるさま」の意味で使われています。
健気とは、上記の例文にあるように、複数の意味を持つ言葉ですが、一般的には「心がけがしっかりしているさま」の意味で用いられています。特に、子どもや女性など力の弱い者の甲斐甲斐しさが、褒めてやりたいほどであることを表す時に使用される言葉です。
健気の語源
健気の語源は、「他とは違っていること」を意味する古語である「異(け)なりげ」に由来します。この言葉は、他より勝っている意味でも使用され、心がけなどがしっかりしていることも表しました。健気は「けなりげ」が音変化した言葉であり、普通とは異なって格別であるさまが原義となっています。
「健気立て」の意味
健気を用いた日本語には「健気立て」があります。「健気立て」とは、勇ましさ、殊勝さ、甲斐甲斐しさを装うことを意味します。
健気の対義語
健気の対義語・反対語としては、情けないほど意気地がないことを意味する「不甲斐ない」、意気地がなく臆病なことを意味する「腰抜け」などがあります。
健気の類語
健気の類語・類義語としては、すばらしいさまや立派なさまを意味する「見事」、骨身を惜しまずに仕事に打ち込むさまを意味する「甲斐甲斐しい」、勇気があり危険や困難を恐れないことを意味する「勇敢」、からだが丈夫で健康なさまを意味する「達者」などがあります。
殊勝の例文
この言葉がよく使われる場面としては、非常に立派なこと、感心なさま、心うたれることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、殊勝の慣用的な言い回し、慣用的な表現には「殊勝な心がけ」「殊勝な人」「殊勝な面持ち」「殊勝な態度」などがあります。「殊勝な人」とは、非常に立派な人、心がけや行いの優れている人を意味します。
例文1や例文2のように、殊勝という言葉は誉め言葉として使用されることがほとんどですが、例文3から例文5にあるように、殊勝は皮肉めいた表現として用いられることもあります。
健気の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心がけがしっかりしているさま、勇ましいさま、健康であるさまを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、健気という言葉は、女性や子供あるいはペットや動物に対して使用されることが多くなっています。
殊勝と健気という言葉は、どちらも「心がけが立派なさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、心掛けが立派で褒めるべきさまを表現したい時は「殊勝」を、弱い者が困難なことに立ち向かうさまを表現したい時は「健気」を使うようにしましょう。