似た意味を持つ「依頼」(読み方:いらい)と「指示」(読み方:しじ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「依頼」と「指示」という言葉は、どちらも「人に頼むこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
依頼と指示の違い
依頼と指示の意味の違い
依頼と指示の違いを分かりやすく言うと、依頼とは対等な立場で人に頼むこと、指示とは目上の者が目下の者に頼むことという違いです。
依頼と指示の使い方の違い
一つ目の依頼を使った分かりやすい例としては、「メールでも見積もり依頼を受け付けております」「依頼書のテンプレートをダウンロードする」「依頼文の書き方を教えてください」「依頼心が強い人は苦手です」などがあります。
二つ目の指示を使った分かりやすい例としては、「部下が指示通りに仕事をしてくれません」「警戒レベル4の避難指示が発令されました」「モラハラ夫が細かく指示してくる」「外国人観光客に道順を英語で指示する」などがあります。
依頼と指示の使い分け方
依頼と指示という言葉は、どちらも主にビジネスシーンで使用され、他の人に何かを頼むことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
依頼とは、用件などを人にたのむことを意味し、同じような立場の人に使用されることが多い言葉です。上記例文にある「依頼書」とは、社内外の相手に業務をお願いするための書類であり、強制力はありません。また、依頼という言葉は「依頼心」の使い方で、他人を当てにすることも意味します。
指示とは、あれこれと指図することを意味し、基本的には目上の人から目下の人に用いられる言葉です。ビジネス用語の「指示書」とは、業務の内容や手順を言い付ける書類のことで、強制力を含むものです。また、指示という言葉は「指示語」「指示薬」の使い方で、物事を指し示すことも意味します。
つまり、依頼とは対等な立場の間で使われる言葉であり、強制力は伴いません。一方の指示とは上下関係の間で使用され、強制力のある言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
依頼と指示の英語表記の違い
依頼を英語にすると「request」「commission」「reliance」となり、例えば上記の「見積もり依頼」を英語にすると「request for estimate」となります。
一方、指示を英語にすると「indication」「instruction」「direction」となり、例えば上記の「指示通りに」を英語にすると「as per the instructions」となります。
依頼の意味
依頼とは
依頼とは、人に用件を頼むことを意味しています。
その他にも、「他人を当てにすること、頼み」の意味も持っています。
表現方法は「依頼する」「依頼メール」
「依頼する」「依頼メール」などが、依頼を使った一般的な言い回しです。
依頼の使い方
「依頼内容をメールで伝える」「見積依頼書を作成しました」「スペルチェックを英語の先生に依頼する」「依頼文のテンプレートをネットで探す」などの文中で使われている依頼は、「人に用件を頼むこと」の意味で使われています。
一方、「彼は意外と依頼心が強いタイプだ」「依頼心の強い母に悩まされています」「自分のなかの依頼心を捨てる」などの文中で使われている依頼は、「他人を当てにすること」の意味で使われています。
依頼とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているので文脈により意味をとらえる必要あります。依頼の「依」は訓読みで「よる」と読み、頼りにすることやよりどころとすることを表し、「頼」は当てにすることを表す漢字です。
「依頼心」の意味
依頼を用いた日本語には「依頼心」があります。依頼心とは、他人を頼りにする気持ちのことであり、自分で何とかしようとせずに他人を当てにする心を意味します。その度合いが大きいことを「依頼心が強い」と言います。
依頼の対義語
依頼の対義語・反対語としては、報酬を取り決めた上で仕事を引き受けることを意味する「請負」などがあります。
依頼の類語
依頼の類語・類義語としては、当然なこととして相手に強く求めることを意味する「要求」、必要だとして強く願い求めることを意味する「要請」、物事の実現を強く求めることを意味する「要望」、物品の製造や購入などを依頼することを意味する「注文」などがあります。
指示の意味
指示とは
指示とは、物事をそれと指し示すことを意味しています。
その他にも、「指図すること、命令」の意味も持っています。
指示の読み方
指示の読み方は「しじ」です。同じ読み方をする熟語に「支持」や「私事」などがありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
指示の使い方
「指示代名詞の用法を解説します」「指示語が指し示す内容を正しく捉える」「指示薬としてBTB溶液を用意する」「使いやすい指示棒を100均で買いました」などの文中で使われている指示は、「物事をそれと指し示すこと」の意味で使われています。
一方、「上司の指示で不適切な経理処理を行う」「指示待ち人間が向いている仕事は何ですか」「もう少しやわらかい表現で指示して欲しい」「イギリス人のボスに英語で指示を仰ぐ」などの文中で使われている指示は、「指図すること、命令」の意味で使われています。
指示とは、上記の例文にあるように二つの意味を持つ言葉です。それぞれの意味で使用されているので、文脈により意味を判断するようにしましょう。指示の「指」は訓読みで「さす」と読み、指を向けて示すこと、「示」は訓読みで「しめす」と読み、物を実際に出して見せることを表します。
「指示厨」の意味
上記の例文にある「指示厨」とは、ネットスラングで、ゲームの生配信中にプレイヤーに対して過度に指示や命令を出すリスナーを意味します。命令口調でない場合には、「ヒント厨」と呼ばれることもあります。
「指示語」の意味
指示を用いた日本語には「指示語」があります。指示語とは、「これ」「それ」「あれ」「どれ」のこそあど言葉のことで、文章中で一度述べた事柄を指す働きを持つ語句です。英語や他の言語にも同様の指示語があります。
「指示文字」は誤用
指示という言葉の誤った使い方には「指示文字」があります。正しくは「指事文字」であり、象形文字や会意文字と並び漢字の成立を表す六書の一つです。
指示の対義語
指示の対義語・反対語としては、師として尊敬し教えを受けることを意味する「師事」などがあります。
指示の類語
指示の類語・類義語としては、はっきりと表し示すことを意味する「表示」、目印になるもので人にあらわし示すことを意味する「標示」、目下の者に対する命令や指示を意味する「言い付け」、指揮や命令をすることを意味する「指令」などがあります。
依頼の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事を頼むこと、人をあてにすること表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある依頼は、物事を頼むことの意味で用いられています。例文5の依頼は、人をあてにすることの意味です。
例文3にある「依頼」と「お願い」の違いは、「依頼」よりも「お願い」の方が柔らかいニュアンスを持つ点にあります。
指示の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事をそれと指して示すこと、人に知らせたり人を指図したりすることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、指示の慣用的な言い回しには「指示を仰ぐ」「指示を出す」「指示する」などがあります。
例文5にある「指示」と「命令」の違いは、指示よりも命令の方が働きかけのニュアンスが強い点にあります。
依頼と指示という言葉は、どちらも「他者に頼むこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、強制力がなく対応な立場で頼むことを表現したい時は「依頼」を、強制力を含んで目下の者に頼むことを表現したい時は「指示」を使うようにしましょう。