似た意味を持つ「慎重」(読み方:しんちょう)と「丁寧」(読み方:ていねい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「慎重」と「丁寧」という言葉は、どちらも「注意深いさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
慎重と丁寧の違い
慎重と丁寧の意味の違い
慎重と丁寧の違いを分かりやすく言うと、慎重とは言動が軽々しくないさまを表し、丁寧とは言動に配慮が行き届いているさまを表すという違いです。
慎重と丁寧の使い方の違い
一つ目の慎重を使った分かりやすい例としては、「君はもっと慎重に行動するべきだ」「私は慎重で怖がりな子どもでした」「自己PRで慎重な性格をポジティブに言い換える」「生成AIへの投資に慎重な姿勢を崩さない」などがあります。
二つ目の丁寧を使った分かりやすい例としては、「丁寧な接客を心掛けています」「丁寧な暮らしに憧れています」「お客様の前では丁寧な言葉遣いをしてください」「丁寧に教えて頂きありがとうございます」「丁寧語は敬語の一つです」などがあります。
慎重と丁寧の使い分け方
慎重と丁寧という言葉は、どちらも物事に対して注意深い様子を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
慎重とは、注意深くことを運び、軽々しく行動しないさまを意味します。「慎重な性格」「慎重な姿勢」のような使い方で、あらゆるリスクを考慮して用心深く油断しない性質や言動を表現する言葉です。
丁寧とは、「丁寧な暮らし」のような使い方で、注意深く配慮が行き届いている様子を表し、「丁寧な言葉遣い」のような使い方で、言動が礼儀正しく配慮が行き届いているさまを表現します。また、文法用語として敬意を表す言い方を意味する言葉です。
つまり、慎重とは注意深く軽々しくない様子であり、丁寧とは注意深く配慮が行き届いている様子です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
慎重と丁寧の英語表記の違い
慎重を英語にすると「cautious」「careful」「deliberate」となり、例えば上記の「慎重に行動する」を英語にすると「take deliberate action」となります。
一方、丁寧を英語にすると「polite」「careful」「courteous」となり、例えば上記の「丁寧な接客」を英語にすると「polite service for the customers」となります。
慎重の意味
慎重とは
慎重とは、注意深くて、軽々しく行動しないことを意味しています。
慎重の読み方
慎重の読み方は「しんちょう」です。誤って「しんじゅう」などと読まないようにしましょう。また、同じ読み方をする熟語に「身長」や「深長」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意してください。
慎重の使い方
慎重を使った分かりやすい例としては、「賛成派と慎重派の駆け引きが激化している」「高スペックな勇者が異常なほど慎重だった」「ビジネス英語は慎重に使うようにしています」「リスクを慎重に検討してから結論を出します」などがあります。
その他にも、「慎重な性格は長所にも短所にもなります」「慎重さに欠ける人はミスが多い」「中国語のテキストは慎重に選んでください」「取扱いには慎重を期す必要がある」「早期利下げの慎重論が相次いでいます」などがあります。
慎重の「慎」は訓読みで「つつしむ」と読み、手落ちのないように気を配ることを表します。軽々しくしないことを表す「重」と組み合わさり、慎重とは、大事をとって軽々しく行動しないことを意味します。
「慎重論」の意味
慎重という言葉を用いた日本語には「慎重論」があります。慎重論とは、物事に対して消極的な立場からの意見や、物事を注意深く論じていこうとする考え方を意味します。
慎重の対義語
慎重の対義語・反対語としては、物事を深く考えずに軽々しく行うことを意味する「軽率」、深い考えもなしに言ったりしたりすることを意味する「軽はずみ」などがあります。
慎重の類語
慎重の類語・類義語としては、よく注意して十分に心をくばっているさまを意味する「用心深い」、やり方が堅実であぶなげがないことを意味する「手堅い」、堅固に見える石橋でも安全を確かめてから渡ることを意味する「石橋を叩いて渡る」などがあります。
丁寧の意味
丁寧とは
丁寧とは、細かいところまで気を配ること、注意深く入念にすることを意味しています。
その他にも、「言動が礼儀正しく配慮が行き届いていること、丁重」「文法で、話し手が聞き手に対して敬意を表す言い方」の意味も持っています。
丁寧の漢字表記
丁寧は「叮嚀」とも書きますが、「丁寧」と表記する方が一般的です。
丁寧の読み方
丁寧の読み方は「ていねい」です。誤って「ちょうねい」「ていでい」などと読まないようにしましょう。
丁寧の使い方
「丁寧にしわを伸ばす」「英語の勉強法を丁寧に教えます」「丁寧じゃない暮らしをYouTubeで発信しています」「丁寧にイラストを描いてみよう」「人の名刺は丁寧に扱うべきです」などの文中で使われている丁寧は、「細かいところまで気を配ること」の意味で使われています。
一方、「ご丁寧にありがとうございます」「丁寧なもてなしに感動です」の文中で使われている丁寧は「礼儀正しく配慮が行き届いていること」の意味で、「入力した文章を丁寧語に変換します」「丁寧語を一覧にまとめる」の文中で使われている丁寧は「敬意を表す言い方」の意味で使われています。
丁寧とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。丁寧の「丁」は心がこもっているさまを表し、「寧」は親切でねんごろであるさまを表す漢字です。
「丁寧語」の意味
丁寧を用いた日本語には「丁寧語」があります。丁寧語とは、尊敬語,謙譲語と並ぶ敬語の一つです。話者が話し相手に対して直接に敬意を表する表現であり、「ます・です・であります・でございます」などの敬辞が叙述に用いられます。
丁寧の対義語
丁寧の対義語・反対語としては、いいかげんに物事をするさまを意味する「ぞんざい」、大まかでいい加減なさまを意味する「雑」などがあります。
丁寧の類語
丁寧の類語・類義語としては、並みはずれて丁寧なことを意味する「ばか丁寧」、真心がこもっていて礼儀正しいことを意味する「慇懃」、細かいところにまで注意を払うことを意味する「丹念」、扱い方やもてなし方が親切で丁寧であることを意味する「手厚い」などがあります。
慎重の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、慎み深いさま、注意深くて軽々しくふるまわないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、慎重の慣用的な表現には「慎重な性格」「慎重派」「慎重を期す」などがあります。
例文3にある「慎重派」とは、ある政策や計画などの採否を決める際に十分な議論を尽くした上で結論を下すべきだと考える人々です。例文5の「慎重を期す」とは、非常に慎重になることを意味する言い回しです。
丁寧の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、細かいところまで注意が行き届いていること、ねんごろで礼儀正しいこと、敬意を表して丁寧にいう言い方を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2の丁寧は、注意が行き届いていることの意味で用いられています。例文3や例文4の丁寧は礼儀正しいことの意味で、例文5にある丁寧は敬意を表して丁寧にいう言い方の意味で使用されています。
慎重と丁寧という言葉は、どちらも「注意深いさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、軽々しくないさまを表現したい時は「慎重」を、配慮が行き届いているさまを表現したい時は「丁寧」を使うようにしましょう。