似た意味を持つ「適切」(読み方:てきせつ)と「適正」(読み方:てきせい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「適切」と「適正」という言葉は、どちらも「よく当てはまるさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
適切と適正の違い
適切と適正の意味の違い
適切と適正の違いを分かりやすく言うと、適切とは状況や常識に当てはまることを表し、適正とは基準やルールに当てはまることを表すという違いです。
適切と適正の使い方の違い
一つ目の適切を使った分かりやすい例としては、「入門者向けに適切な問題を出す」「カスハラへの適切な対策を講じる」「相手の反応をみながら適切な距離感をつかむ」「認可保育園が不適切保育の疑いで行政指導を受けました」などがあります。
二つ目の適正を使った分かりやすい例としては、「市は救急車の適正利用を呼びかけています」「60代男性の適正血圧をご存知でしょうか」「身長ごとの適正体重と美容体重の一覧表を作成する」などがあります。
適切と適正の使い分け方
適切と適正という言葉は、どちらも適した状態であるさまや当てはまるさまを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
適切とは、その状況や物事によく当てはまって、ふさわしいことを意味します。明確な基準はないものの、一般的な常識や考え方などに適合していることを表現する言葉です。「不適切発言」とは、話題となっている事柄に対する配慮が足りないような発言です。
適正とは、適当で正しいことや適当で正しい様子を意味します。適正は、客観的なルールや基準に照らし合わせて、正しいとされる事柄に使用される言葉です。「適正価格」とは、原価を正しく計算し定めた値段のことです。
つまり、適切とは状況や常識に当てはまることを表現し、適正とは基準やルールに正しく当てはまることを表現する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
適切と適正の英語表記の違い
適切も適正も英語にすると「appropriate」「suitable」「fitting」となり、例えば上記の「適切な問題」を英語にすると「a suitable topic」となります。
適切の意味
適切とは
適切とは、状況や目的などにぴったり当てはまること、その場や物事にふさわしいことを意味しています。
適切の使い方
適切を使った分かりやすい例としては、「熱中症は適切な応急処置が肝心です」「適切なケアマネジメント手法を策定する」「適切な睡眠時間は人それぞれです」「適切な英語の学習時間はどれぐらいですか」などがあります。
その他にも、「同僚から適切なアドバイスをもらった」「部下に適切な指導を行う」「オフィスの湿度は適切に保たれている」「不適切にもほどがあるだろう」「SNSにおける不適切発言についてお詫び申し上げます」などがあります。
適切の「適」は訓読みで「かなう」と読み、条件や基準などによく当てはまることを表す漢字です。ぴったり合うことを表す「切」と組み合わさり、適切とは、状況や場面などによく当てはまってふさわしいことを意味します。
「適切なケアマネジメント手法」の意味
上記例文にある「適切なケアマネジメント手法」とは、要介護高齢者と家族の生活の継続を支えるために、介護支援専門員が実践している支援を体系化したものです。「ケアマネジメント」は、要援護者やその家族のニーズに合わせてケアプランを作成し、効果的なサービスを提供することを指します。
適切の対義語
適切の対義語・反対語としては、その場の状況に対する配慮を欠いていることを意味する「不適切」などがあります。
適切の類語
適切の類語・類義語としては、ある条件や要求などに上手くあてはまることを意味する「適当」、ちょうどよく適していることを意味する「適宜」、的まとをはずさないで間違いがないことを意味する「的確」などがあります。
適正の意味
適正とは
適正とは、適当で正しいことを意味しています。
表現方法は「適正な」「適正に行う」「適正がある」
「適正な」「適正に行う」「適正がある」などが、適正を使った一般的な言い回しです。
適正の使い方
適正を使った分かりやすい例としては、「身長から自分の適正体重を計算する」「30代女性の適正体重は何キロですか」「日本の適正湿度は40~60%程度です」「全社をあげて業務適正化に取り組んでおります」などがあります。
その他にも、「経理業務を適正に行う」「補助金適正化法のポイントを教えてください」「適正管理計画認定証が発行されました」「事業者間取引適正化法が施行されました」「高所得者層の低い税負担率を適正化する」などがあります。
適正とは、適当で正しいことを意味し、客観的な基準やルールと比較して正しいと判断されることに使用される言葉です。適正の「適」はぴったり当てはまること、「正」は間違いないことや嘘でないことを表します。
適正を用いた日本語には「適正体重」があります。適正体重とは、身長に合った体重のことであり、もっとも病気になりにくい体重とされています。適正体重の計算方法は、最も病気になりにくい肥満度を表すBMI22を用いて、身長(m)×身長(m)×22で求められます。
適正を用いた誤った表現には「適正職業診断」があります。正しくは「適性職業診断」であり、性格や性質がどの職業に向いているかを診断することを意味します。
適正の対義語
適正の対義語・反対語としては、ふさわしくないことや適していないことを意味する「不適格」などがあります。
適正の類語
適正の類語・類義語としては、資格にかなっていることを意味する「適格」、行いや心の持ち方の正しいことを意味する「方正」、かたよらずに公正であるこを意味する「中正」、真実で正しいことや偽りでないことを意味する「真正」、純粋で正しいことを意味する「純正」などがあります。
適切の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ぴったりと当てはまること、うまく適合することを表現したい時などが挙げられます。
例文5の「不適切」とは、その場面や状況あるいは常識などにそぐわないことを意味します。
適正の例文
この言葉がよく使われる場面としては、適当で正当なこと、適当で正しいさまを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある適正価格と適性価格の違いは、適正価格は客観的な基準で算出された妥当な価格を表し、適性価格は主観的な判断で買い手が支払ってもよいと感じる価格を表す点にあります。
適切と適正という言葉は、どちらも「ぴったりと当てはまるさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、状況や常識に当てはまるさまを表現したい時は「適切」を、基準やルールに正しく当てはまるさまを表現したい時は「適正」を使うようにしましょう。