似た意味を持つ「遺体」(読み方:いたい)と「死体」(読み方:したい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「遺体」と「死体」という言葉は、どちらも「死んだ人や動物の体」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
遺体と死体の違い
遺体と死体の違いを分かりやすく言うと、遺体とは主観的な表現、死体とは客観的な表現という違いです。
一つ目の遺体を使った分かりやすい例としては、「自宅マンションに遺体を安置する」「住宅から白骨化した遺体が見つかった」「県外への遺体搬送をお願いできますか」「空輸で遺体を長時間移動させる」などがあります。
二つ目の死体を使った分かりやすい例としては、「発見された死体は未だ身元確認中です」「死体損壊事件として調べている」「腐敗した死体にウジ虫が発生しています」「私は死体解剖資格を取得するのに5年かかりました」などがあります。
遺体と死体という言葉は、どちらも亡くなった人の体や死んだ動物の体を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
遺体とは、人や動物の生命活動を停止している体を意味します。「ご遺体」のような使い方で、死んだ体を敬って丁寧にいう言葉です。哀悼の意をこめた主観的な表現であり、近親者やペットなどに対して使われることが多くあります。
死体とは、生命の絶えた人間あるいは動物の体を意味します。「死体解剖」「死体袋」のような使い方で、即物的を与える客観的な表現です。「死体袋」とは、死亡した人間の遺体を輸送するために使用される特殊な容器のことです。
つまり、遺体とは死んだ体を主観的に表現する時に使い、死体とは死んだ体を客観的に表現する時に使われる言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
遺体を英語にすると「remain」「body」となり、例えば上記の「遺体を安置する」を英語にすると「lay out the remains」となります。
一方、死体を英語にすると「dead body」「corpse」「carcass」となり、例えば上記の「死体の身元確認」を英語にすると「identification of the dead body」となります。
遺体の意味
遺体とは、死んだ人のからだ、なきがら、遺骸 を意味しています。
その他にも、「自分のからだ、わが身」の意味も持っています。
「葬儀屋の遺体安置室を利用する」「遺体が腐敗により黒く変色している」「姉は遺体衛生保全士として働いています」などの文中で使われている遺体は、「死んだ人のからだ、なきがら」の意味で使われています。
一方、「私の身体は両親から受け継いだ遺体です」「遺体を大事にすることが親孝行である」「不幸な出来事がいつ遺体にふりかかってくるか分からない」などの文中で使われている遺体は、「自分のからだ、わが身」の意味で使われています。
遺体の「遺」は訓読みで「のこる」と読み、なくならないであることを表す漢字です。遺体とは、魂が去って遺 (のこ)された体のことであり、死んだ人のからだを意味します。上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、「自分のからだ、わが身」の意味で使われることはほとんどありません。
遺体を用いた日本語には「遺体衛生保全士」があります。遺体衛生保全士とは、遺体を衛生的に保全し、個人を生前の安らかなお姿に近づける専門家のことです。別名「エンバーマー」とも呼ばれ、葬儀会社に就職するのが一般的です。
遺体の対義語・反対語としては、現に生きているからだを意味する「生身」(読み方:なまみ)などがあります。
遺体の類語・類義語としては、死んで魂の抜けてしまったからだを意味する「亡骸」、なきがらや遺体を意味する「遺骸」、戦場や災害地などにそのまま残された死体を意味する「残骸」、すでに死んだ人を意味する「故人」などがあります。
死体の意味
死体とは、死んだ人間や動物のからだ、生命の絶えた肉体、しかばねを意味しています。
死体を使った分かりやすい例としては、「有名イラストレーターが死体で発見されました」「死体遺棄罪は刑法で定められています」「死体にメスを入れる行為は死体損壊罪にあたるだろう」などがあります。
その他にも、「異状死体には死体検案書が交付されます」「生活のため死体洗いのアルバイトをしています」「死体の夢にはどんな意味がありますか」「死体解剖保存法第8条による解剖が行われた」などがあります。
死体は「屍体」とも書きますが、一般的には常用漢字を用いた「死体」と表記されています。
死体とは、生命の絶えた肉体のことであり、人や動物の死んだ体を意味します。死体という言葉は、肉体を物として捉えているニュアンスがあり、死という事実に基づいた客観的な表現です。「死体遺棄」「死体損壊」など法律用語にも用いられています。
死体を用いた日本語には「死体検案書」があります。死体検案書とは、医師が自分の診療中でない人の死体について、その死因や死亡日時等に関する医学的判断を証明するために作成する文書です。診療中の患者の死亡を証明する「死亡診断書」と区別されるものです。
死体の対義語・反対語としては、生きているからだを意味する「生体」などがあります。
死体の類語・類義語としては、人または動物の死んだ体を意味する「死骸」、しかばねや死体を意味する「死屍」(読み方:しし)、首のない胴体だけの死体を意味する「むくろ」、死んだ人を意味する「死者」などがあります。
遺体の例文
この言葉がよく使われる場面としては、死んだ人のからだを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「遺体搬送」とは、人が亡くなった後、その遺体を自宅や葬儀会場など特定の場所に移動させることを意味します。
死体の例文
この言葉がよく使われる場面としては、死んだ人や動物のからだを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「変死体」とは、死因不明の死体のなかでも犯罪に関係があるかどうか判明しないものを言います。
遺体と死体という言葉は、どちらも「人や動物の死んだ体」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、死んだ体を主観的に表現したい時は「遺体」を、死んだ体を客観的に表現したい時は「死体」を使うようにしましょう。