似た意味を持つ「明示」(読み方:めいじ)と「明記」(読み方:めいき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「明示」と「明記」という言葉は、どちらも「はっきりと示すこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
明示と明記の違い
明示と明記の意味の違い
明示と明記の違いを分かりやすく言うと、明示とは方法を問わず明確に示すこと、明記とは書いて明確に示すことという違いです。
明示と明記の使い方の違い
一つ目の明示を使った分かりやすい例としては、「事前に必要な金額を明示してもらう」「個人情報の利用目的を明示する」「価格交渉を明示的に協議する」「取引条件を書面にて明示してもらう」などがあります。
二つ目の明記を使った分かりやすい例としては、「がんとの関連性をラベルに明記する」「就業規則に勤務時間を明記しておく」「火災保険の明記物件について説明を受ける」「あらかじめ申込書へ明記してください」などがあります。
明示と明記の使い分け方
明示と明記という言葉は、どちらも相手にはっきりとわかるようにすることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
明示とは、明らかに、はっきりと示すことを意味します。示す方法は限定されておらず、書面にしても、口頭であっても、態度でも構いません。どんな方法であるかは問題にしておらず、相手にはっきりとわからせることに重きをおく表現です。
明記とは、明瞭にはっきりと書き記すことを意味し、「書く」という方法に限定した表現です。申込書や契約書などの書面に、はっきりと書き入れる場合に使用される言葉です。そのため、口頭で相手に伝えたり、態度で相手にわからせたりすることには使えません。
つまり、明示とは方法を問わず相手に明確にわからせることを表し、明記とは書面にして相手に明確にわからせることを意味します。二つの言葉を比べると、明示の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
明示と明記の英語表記の違い
明示も明記も英語にすると「specification」となり、例えば上記の「金額を明示する」を英語にすると「specify the amount of money」となります。
明示の意味
明示とは
明示とは、はっきり示すことを意味しています。
明示の使い方
明示を使った分かりやすい例としては、「出典を明示することで無料でご利用できます」「取引先に機密保持事項を明示する」「希望価格や導入時期を明示しなかった」「明示的意味と副次的意味の違いを説明してください」などがあります。
その他にも、「労働条件の明示方法は二つあります」「行先表示板と回路明示板をネットで購入しました」「より分かりやすい明示化の方法を見つける」「明示的学習にも暗示的学習にもデメリットがあります」などがあります。
明示の読み方
明示の読み方は「めいじ」です。同じ読み方をする熟語に「明治」や「名辞」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
明示の「明」は訓読みで「あきらか」と読み、物事や道理がはっきりとしているさまを表す漢字です。わかるようにはっきりと見せることを表す「示」と結び付き、明示とは、曖昧さがなく、はっきりと示すことを意味します。
表現方法は「労働条件の明示」
上記の例文にある「労働条件の明示」とは、労働基準法第15条に定められている使用者の義務です。使用者が新たに労働者を雇う場合、労働契約の期間、従事する業務、賃金の決定や支払いの方法、退職に関する事項などを労働者に明示しなければいけません。
明示の対義語
明示の対義語・反対語としては、明確には示さず手がかりを与えてそれとなく知らせることを意味する「暗示」、はっきり言わないで間接的に意志を示すことを意味する「黙示」などがあります。
明示の類語
明示の類語・類義語としては、差し出して見せることを意味する「提示」、はっきりと表し示すことを意味する「表示」、説き示すことや明らかに示すことを意味する「開示」、目印になるもので人にあらわし示すことを意味する「標示」などがあります。
明記の意味
明記とは
明記とは、はっきりと書き記すことを意味しています。
明記の使い方
明記を使った分かりやすい例としては、「出欠表に名前を明記するようお願いします」「食品成分表に明記するよう義務づける」「在留資格は書類に明記されています」「明記物件が漏れていないか確認する」などがあります。
その他にも、「引用元はきちんと明記しています」「作業手順を業務マニュアルに明記しておく」「契約書に支払き金額が明記されている」「出席者の名前をを明記してください」「憲法9条に自衛隊を明記することが議論されています」などがあります。
明記の読み方
明記の読み方は「めいき」です。同じ読み方をする熟語に「銘記」や「名器」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
明記の「記」は訓読みで「しるす」と読み、事柄を書き留めることや、事柄をしるした文書を表します。きわめて明瞭であるさまを表す「明」と組み合わさり、明記とは、はっきりと書き記すこと、詳しく明確に書き表すことを意味します。
表現方法は「明記物件」
明記を用いた日本語には「明記物件」があります。明記物件とは、火災保険などにおいて、家財を保険目的とする場合に、価額が30万円を超える貴金属・骨董品・宝石・絵画などを指す言葉です。これらについては明記しないと、保険金は支払われません。
明記の対義語
明記の対義語・反対語としては、ある物事を別のことに見立てなぞらえる表現を意味する「比喩」などがあります。
明記の類語
明記の類語・類義語としては、重要な事柄として特別に書き記すことを意味する「特記」、特にとりたてて書くことを意味する「特筆」、文字などを大きく書くことを意味する「大書」(読み方:たいしょ)などがあります。
明示の例文
この言葉がよく使われる場面としては、明確に示すことを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「明示的学習」とは、言語の文法ルールや語彙など学習者が意識的に学習するスタイルを指します。反対に、学習者の意識せずに母語のように自然に知識を習得していく学習スタイルを「暗示的学習」と言います。
明記の例文
この言葉がよく使われる場面としては、はっきり記すことを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある記載と明記の違いは、記載は単に文書に書き入れることを意味しますが、明記は具体的かつ明確に書き記すことを意味する点です。記載よりも明記の方が、曖昧さがありません。
明示と明記という言葉は、どちらも「はっきりと示すこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、方法に関係なくはっきりと示すこと全般を表現したい時は「明示」を、はっきりと書面に記すことを表現したい時は「明記」を使うようにしましょう。